おっ!これは.....
楽しんでいただけたら幸いです。最後まで読んでみてください。
俺が料理を待っていると、それは来た。否。「それ」ではなくその人というべきだったな。おそらく、メルカさんの言っていた「若いもん常連」だろう。とりあえず、俺と14,15ぐらいの女の子だった。
腰ぐらいまで髪があるロングヘアーなのだが、髪の毛の色は登頂から毛先にかけて藍色から水色という感じでグラデーションがかかっている。顔立ちは、顔が丸みを帯びていて、少し幼い印象がある。また、目がまん丸で赤い瞳であった。それは自ら光っているのかと思うぐらいであった。つまりは美人であった。
そして、背丈的には俺と結構差がある。大体145~150と言ったところかな?
しかし、これだけではなんで俺が14,15ぐらいだと予想したのかがわからないだろう。俺がこの年齢ぐらいだと思った理由は、その身にまとう雰囲気である。その幼い印象の顔から、明るい雰囲気や周りを和ませる、温かい雰囲気を身にまとっていた。しかし、その一方で、まるで本当の自分を見せないために無意識に本来の自分を隠しているようなところが、ミステリアスに感じた。俺もそういう風に本来の自分の性格を隠して、ふるまっていた時期があったから、わかる。とてもわかる。それのせいでストレスがたまりやすくはあったけど。
.....えっ?なんでそんなに分かるのかって?嫌だな~。別に人のことをジロジロ見たりするなんてしないよ。ただ、少し気になったから見てただけだよ?少し、見とれていただけというか気になったというか...まあ、そんな感じだよ。ロリコンちゃうからな?いや、ガチよ?
....うん?......今なんか、寒気とともに何かをぶつけたような鈍い音が聞こえたのは気のせいだろうか?
しかしなあ、正直、向こうから話しかけても来ない限り、話したりはしないと思うよ。俺は基本的には初対面の人と話すときは自分からではなく、相手から来ることがほとんどだったからな。だから、わざわざ話しかけに行くのはめんどくさいから(あ. . 本音が出てしまった。)、相手から来ない限りは話さないよ。
俺がそんないかにも興味ないどころか存在にすら気が付いていませんよ~。という、態度をとっていると(冒険者証明書を色々、何ができるかを試しながら、料理を待つ。)、その子は俺に気が付き、近づいてきた。ほらな?確実に話しかけられると思ったよ。メルカさんの話ではここで若い人がいるのは珍しいらしいからね。俺もこういう店の常連客でそこで少ない年齢層の人を見かけたら、気にはなるかな?さっきと言っていたことは違うけど、話しかけにはいくかな?
と思っていたのだが、その子は厨房の方に行き、ただただ、料理を注文し、サルサを渡していた。
ふう。ただの自意識過剰だったようだ。....くっそ恥ずいやんけ。あんなに自信満々に言っていたのにね。....変なこと考えずに、料理が来るまで待って置くか。
と、俺が机に突っ伏して冒険者証明書....もうこれから、略して言おう。. . .「プレート」ね。そっちの方が言いやすいし、見た目も「プレート」が一番しっくりくるからこれにしよう。
プレートを眺めていると、さっきの子が俺に近づいてきた。なんやろな...ひとまず、
「えーと、君、なんで俺の向かいに座っているんだい?他にも空いている席があるでしょう?」
そう、なぜかその子は他の空いている席ではなく、俺の目の前に座ったのだ!えっ?なんで?ホントに。俺がそう疑問に思い、その子を見ていると、その子は俺にやっと気が付いたという様子でようやく口を開き、
「えっ!?なんでここ座ってるの!?変態なの?それともストーカー?どっちにしてもあたしに勝負はしかけない方がいいですよ!あたし、こう見えてかな~り強いので。」
と、何でそうなるのかが全く分からないことを言い始めた。
OK分かった。確実にこいつは俺のことを勘違いしているか、初対面の奴に対するこいつの正常な反応だろう。....そう思わないと、いきなり、初対面の奴に変質者扱いした挙句、煽ってきたことに俺でもものすごく腹が立つんだが。
「いや、変態でもないし、ストーカーでもないし、俺は君より強いと思うよ。そもそも、初対面の人にそう言うのは失礼すぎやしないか?」
「失礼?それはあなたがあたしの席に座ってるからでしょ!あたしの席に座ってたら、それは変態かストーカーしかありえないじゃない!しかも今日初めて見た顔だし....」
「ここって、座る場所が客によって決まってんの?」
「そうよ!だからここはあたしの.....」
と、そこまでその子が言ったところで後ろから料理を持った注文を取ってくれたおじいさんが来て、その子の頭をはたいた。
「あほなことは言うな。ここはお前の席ではなく、みんなの席だ。そんなんだからお前は仲間ができないんだぞ。」
「いっっったい!!急にはたかないでよ!キルおじさん!痛いじゃん!それに今は仲間ができないことは関係ないでしょ!?いいじゃない。別に。」
「はあ。まあいい。」
なんだ?キルおじさんって呼ばれているのか...名前が物騒だな。しかもこの子と大分長い付き合いみたいだし。まあ、そりゃここの常連って話だしね。にしても結局お前の席じゃないんかい!ならええわ。
俺がそんな感じで大して面白くもなんともない突っ込みをしていると、
「すまんな。この子は独占欲が強くてな...食器すらも自分専用にしてと言ってくるぐらいだからな。そこは勘弁しといてやってくれ?」
「何だとー。キルおじさん嘘つかないデー」
思いっきり棒読みなんだが。確実にこの子は嘘こいてるな。なんでなんにゃろうな?
「それと....これが焼肉炒め定食だ。残さず食えよ。少しだけ増やしてもらったぜ。食べ盛りだろうからな。めいっぱい食え。」
「ありがとうござます!それじゃあいただきますね。」
嬉しいわ。本来の量より増やしてくれるのは。それじゃあ、
「いただきます。」
そういって俺は箸を取る。
とりあえず、定食はみそ汁っぽいスープと、ニンニク(こっちではガニックと呼んだはずだ。)としょうゆっぽいにおい香る焼肉炒めとキャジャの千切り、モリンジの飾り切り、そして何より一番気になる白米らしきものがあった。せめて白米だけは向こうの世界と同じ味であってくれ。
俺は初めに白米から手を付ける。一口口に入れ、しばらく噛み続けると、甘みが出てきた。要は普通に白米だった。だが、よく見ると、米の形が違うような...気のせいだと思う。
次に野菜。特にドレッシングなどかかっていなかったが、そのままでも十分にうまかった。そもそもの素材がよかったのだろう。とはいっても、ただのみずみずしいレタスかキャベツかよくわからない味のホウレンソウだけど。
メインは最後に食べてみるってことで。言うても本当の最後はモリンジだけどな。
てなわけで、みそ汁っぽいスープを少し飲んだ。そして、驚いた。ちょっと塩辛いがみそ汁の味だったのだ。しかも、きちんとダシまで入っている。具もモテトと....何だろこれ?いや、見た目は完全にきゅうりなんだけど、みそ汁に入れるか?まあどっかの郷土料理で入れるとこもあるけど、あれは冷えてるしな....熱いみそ汁には入れんね。まあ、食べればわかるでしょう。
そう思って口に入れた。食感ではなく、舌触りはまんまキュウリ。だけど、食感と味はジャガイモである。ややこしいわ!しかも、舌触りだけキュウリだからなんか気持ち悪く感じるし。
これ、もしもカレーとかつくる日にはとんでもない見た目になってそうだな。......想像してみたが、普通に違和感が半端ない。しかもジャガイモの食感の食材が2つあるってことだしな。
こんな風に言ってるけど、味はダシのおかげもあるのか、少し甘く感じて少し塩っ辛い以外には非の打ちどころがなかった。あとで、聞いてみようかな?みそ、あればしょうゆみたいなものがあるかを。
んじゃ、メインを食べようかね。俺は焼肉炒めに手を付ける。まずは「ダカウ」らしき肉とその他の野菜(キャジャや、キャジンなどだ。)と一緒に口に入れる。ちなみに「らしき肉」といったのはホルモンの見た目のものがあったからだ。
話を戻そう。食べると、野菜たちはいつも通りだが、ダカウらしき肉は(確実にダカウだろう)なんて例えればいいんだろう.....いや、味はね牛肉なのよ。だけど、食感が噛むたびに変わるんだよ。弾力があって噛み切れないようなときや、シャキシャキするときもあるし、鶏肉を食べた時のようなふっくらとした食感の時もあったりなど、さまざまに変わっていっているのだ。
これはもはや面白いな。どこかで仕入れて今度家で使ってみよう。
この料理自体の味もニンニクが効いた焼肉のたれというよりはステーキソースの方が近いガーリック醤油の味がした。ちょうど肉も牛肉の味だから、ちょうどマッチするわ。うまいでこれは。
俺がそんな風に料理を堪能していると、突然机が「バアンッ!!」と音を立て揺れた。何事かと思い、前を見ると、若干涙目になったいるさっきの子がいた。あ~、そういや、忘れてたわ。料理が旨そう過ぎてそっちにすぐに関心が言ったしな。
「ちょっと!いい加減にしてよ!なにあたしを無視してご飯に夢中になってんのよ!さっきからあたしが話しかけても全然聞こえてない感じだし。ここまで無視されたのは久しぶりよ!」
確かになんか聞こえてたような....
「ごめんな。君の質問とか話より、飯に目が言っちゃってね。全く気付かんかったよ。むしろ、存在が頭から消えてたし。」
「煽ってる?ねえ、それ煽ってんの?煽ってるよね?なに?あんた食い坊キャラなの?あたしみたいな見た目の人なんていないのに....でも、あんたみたいな、髪も目も黒な人はここら辺では珍しいけど....それはいいの!人の話を聞かないなら、こうしましょう!戦って、負けた方が勝った方の話を無視できないという風に勝負しましょう!それなら文句ないわね!」
「文句しかないわ!なんで今さっき会ったばっかの奴と勝負しないといけないんだよ!そもそもそっちが無視されて腹立ててんだったら、別の人と話して来いよ。そうすれば無視されることはないんじゃね?自分でも言っていたけど、その見た目は珍しいんだろ?なら、それでいいだろ?別に俺じゃないと駄目な理由もあるわけではないだろ?なおさら....」
そこまで行ったところでその子は、
「うっ....ひっく...だってぇ、わたしがぁ...外に出ると...いやな顔されるもん....だから...ひっく....ここにいるのに....同じぐらいの年の人が....あなた以外に来ないんだもん....」
ええ...何で俺が泣かせたみたいになっているのだろう?ある意味では泣かしてるかもしれんが...おそらく俺だけが原因ではないだろう。だからさぁ、みなさん、こちらを「泣かすなよ。最低だな。」みたいな顔で見てくるのはやめてくれません?正直、居心地が悪いったらありゃあしないんだが。
はあ。流石に無視するわけにもいかんか。しかも、この子の状態は過去のことが原因で外に出れなくなってるんだもんな。この場合はどう言えば正解なのだろうか?
いや、正解なんてないんだけども....考えろ。こいつの言動を聞いていると、見た目以上には幼いのだろう。精神面がかもしれないが。...それはいいとして、泣き止ませる方法を考えんとな。こいつの性格をこれまでの言動からちょっと振り返ってみよう。
ええと、まず、我がままだな。うん。で、無意識に人を煽ってしまう。あれは狙ってるというよりは自信からきている感じに見えたからな。あと、最初に感じた、本来の自分を隠そうとする感じ?あれは確実に予感通りだろう。なぜなら、直感という所もあるんだけど、今の泣いてるところを見ているのを見る感じ、普段は自分の思う己の弱さを自分で覆い隠してわざとああいう風な態度で接してきたのだろう。
要は、大分無理していたということだろう。まあ、さっきも言ったが俺もそのうちの一人であると思っているからな。だから、分かるんだよ。
とはいってもタイプは違う感じで本来の自分を隠しているだろうけど。正直、そんな風に本来の自分を隠して過ごしていると、自分でも本来の自分はどんな感じか分からなくなる時もあるからね。そこらへんは見失わないように注意しないと。...まあ、俺は手遅れの可能性もあるが。
って、今はそんな場合ではないな。何とかして泣き止ませないと。
そう思い、俺はその子の方を見て驚いた。なんと、その子の髪に隠れていたが、耳が長く、尖っていたのだ。
しかも、額も見てみると、小さな角が生えている。よく見ると、その角はうっすらと光を放っていて、何か危険なものを感じる。
これをみて、俺は直感的に早く泣き止ませないと取り返しのつかないことになると感じた。俺がじゃなくてこの子が。
「ええと、君?」
「ううん...『アリサ』」
「分かった。アリサ、お前は人と接することが苦手だろ?自分の意思とは関係なく、な。」
「...何でわかったの?」
「俺もそういう経験があるからさ。数年前、俺も色々限界で嫌になってギャン泣きしたことがあるからさ。あれは今となっては黒歴史だな...それはともかく、俺は人を励ますなんてたいそうなことには向いていない。だから、単刀直入、あ~、もう提案を言うぞ。もしも限られた人と動物たちと一緒に暮らせるってなったら、お前....アリサはどうする?」
とりあえず、こっちに耳を傾けてくれたおかげで泣き止みはしたな。切り替えが早すぎる気もするが...
「それは...私も確かに人と接するのは苦手だよ?だから本当にそんな場所があるなら行きたい。だけど、私は家族にも捨てられて、ここで引き取ってもらったんだよ?その恩を捨てるなんてことはしないよ....返そうとしても返しきれないし...。
それでいつもいるから常連ってことにしてもらってるの。もしもあなたみたいに普段来ないお客さんが来てもそうやって、まかり通すためにね。
本当は私はあなたと話すのも怖いよ。でもね、もうこんな自分は嫌なんだ。だから、少しでもうまく人と話せるように特定の人でもいいから、練習したい。だけど、いつもあんな風に平気なふりをして私自身もだましているの。こんな素性もわからないのを信用してもいいの?」
そういい、その子は俺をなるほど、確かに若干おびえているかのように見てくる。だが、これは言っておきたい。
「いーや、はなからお前のことは信用していない。」
「やっぱりそうだよね...。」
「だが、それが当たり前だ。」
「えっ....?」
「当然だろ?そもそもお前も俺のことを信用してるわけではないだろうし、俺もお前を信用していない。最初から相手を信用する奴は相手が誰から見ても信用できる奴か、自分が無条件に人を信じようとするのが悪い。だから、信用してるか、してないか、じゃなくて、相手のことをよく見て、自分から踏み出さなければだめだ。
まず、相手の本質を、1つ、いや、2つは見抜いた方がいい。そこまで見抜けて、そいつのことを信じるに値すると判断すれば信用すればいい。
「信用が欲しいなら、まずは自分から人を信用しなさい。」なんて言われたこともあったけどな、俺はそうは思わない。だって、別に自分が相手に信用されるような行動をすれば相手は信用する。それでもそんな俺の表面上しか見れていなさそうな人は俺は逆に信用できない。
何が言いたいかというと、見極めろってこと。たとえ相手が本来の姿を見せていなかったとしても...あ、性格でって意味だからな?それを見極める力が身についていったら、相手に恐怖したり、警戒しすぎなくてもよくなる。つまりそれは、人と接するときの恐怖感が薄れる...と思う。
最初は少しずつでもいい。むしろ、少しずつがいい。少しずつ、少しずつ、これを積み重ねればいずれは必ず大きなことに変わる。
だから、アリサ、俺がお前の人を見極める練習相手になってやるよ。お前も俺のことを、もちろん、俺もお前の本来の性格もまだわからない。だからこそ、いい練習相手は務まるだろ。何なら、人間以外の動物の性格を見極めてからでもいいぞ。
もちろん、この話自体も疑ってくれてもいいぞ。」
俺がそう茶化すように言うと、アリサは笑った.....訳ではなく、頭に少し疑問符を浮かべながら、俺が言ったことをよくかみ砕いているようだった。まあ、俺も正直、ちゃんと言いたいことを言えたか分からんかったしな。言っちゃことは変えられんし、いいか。
そして、しばらくした後、アリスは少し戸惑いながら、あるいは迷いながら、
「それはちょうど料理も来たようなので....あたしの答えはご飯食べてからね!」
そう元気そうに笑顔で答えた。よし、調子も戻ったようだし、俺も飯を全部食べ切るか!
いかがでしたでしょうか?今回はなにやら、結構なわけがありそうな女の子アリサが来ましたね。それにしても一体アリサにはどんな過去があるのでしょうね?はい、僕はまだ知りません。
それとは別に本文を読んでもらえばわかると思うんですけど、今回、初めて「ルビ」を振るということをしました。これからも使っていこうと思いますので、これからもぜひ読んでくださると幸いです。
さて、次回の投稿も来週の金曜日の予定です。
それでは、また次回お会いしましょう。