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結構不穏だねそれは......

 楽しんでいただけたら幸いです。最後まで読んでみてください。


「すまん!寝ようとしてるタイミングで!」


 手を合わせて謝るディガは、言葉通りに少しバツの悪そうな顔をしつつも、何かつっかえたものが落ちた時のように表情が生き生きとしていた。


「大丈夫だよ。まだ寝てたわけじゃないし、昼間寝すぎて中々眠れなかったところだったし。」


「そうか、それならいいんだけどな。それよりも、想定より帰るのが遅くなってすまなかった。」


 別に気にしてはいないが......何をしてきたのだろうか。


「どこで何をしてたのかとか聞いてもいい?」


 俺が訊くと、ディガはもちろんとばかりに大きくうなずいた。というかむしろ語る気満々のようで、ノリノリだった。


 長くなりそうな気がしたので、とりあえずお茶を作って食卓に置き、対面で椅子に座る。


「この二日、材料集めと親父の工房に行ってたんだ。」


 なるほど、確かに大荷物がテーブルの陰に置いてあるな。ってか......


「ディガのお父さんって、どんな人なの?」


 前にチラッと聞いた気がするが、あまり語らなかったから分からないのよな。


「ああ、そういえばちゃんと言ってなかったな。俺は一応修行って名目でこっちに来たんだが......それをさせたのは親父だ。俺の親父.....『タイガ・ウェズナー』が、俺に後継者としてふさわしい技量を身につけさせるために、こっちに連れてきたんだ。」


 タイガさんってのがディガのお父さんの名前ね。覚えとこ。


『ほう......「ウェズナー」とな。こやつ、そんなところの出身だったんじゃな。』


 うん?どうしたモル。何か知ってるのか?


『そうじゃな。ウェズナーのといえば、この世界において屈指の実力を誇るドワーフの鍛冶師じゃ。無論、ウェズナーの工房から生まれる武器は、性能やその価値故にどこの種族でも重宝されておっての、妾の集落にも二、三度仰々しい商人が来ておったわ。』


 え......?え、ディガって、そんな有名どころの出身だったの!?というかドワーフって......


『ドワーフといえば一に鍛冶、二にパワー、三に何とやらとよく謳われる種族よ。』


 その三はなんなんだ?


『知らぬ。三に何とやらというのが妾の聞いたものなんじゃ!おそらくセクに訊いても同じこと言うと思うぞ。』


 おい、絶対誰かが噂かなんか流すときに、考えるのめんどくさくなっただろ。


 にしても、ドワーフねぇ......ディガがもしそうなら大分違和感があるんだけど......


 そう考えていると、ディガは何かを思い出したかのように声を上げた。


「ああ、そういや言ってなかったな。俺は確かにウェズナー家に名を連ねるが、ドワーフの血だけが流れてるってわけじゃねぇ。半分ドワーフ、半分人間のハーフだ。おそらく伝承のドワーフと違って驚いただろうが、実際の純ドワーフは伝承通り、ちっこい髭もじゃだから安心しろ。」


 なるほど。それでディガは想像のドワーフよりも大分でかいんだな。というか、ディガの言う伝承は知らないんだが......


『おそらく、人間の間で知れ渡っている種族の特徴のことじゃろ。半分合ってて半分間違っているといった、真実性を疑うものが多いがの。』


 そうするのは、他の種族の保護もしくは、他の種族との接触が上手くできてないんじゃないか?吸血鬼族とか特に聞いた話と違ったし。


『それもそうじゃな。一々気にしてたらキリがないよの。噂など一ミリも信用に値せんわ。』


 そう言うことじゃない気がするけど......まあいいか。


「ドワーフって、やっぱり職人気質の人が多かったりする?」


 なんか、自分の作るものとか質とかに厳しいイメージがあるけど。


「あ~、たしかに多いが、まあ人それぞれってところだな。うちの親父はバカみてぇに頑固で意地っ張りでプライドが高いが、叔父がいるんだが.......叔父は優しくて、バリバリの職人気質みたいなのはなかったな。そうだ、叔父で思い出したが、昨日家に行ってもいなくてな、行方不明になってるらしい。」


 親父さん、ボロクソに言われてますね......そして、ディガの叔父さんが行方不明......レサとロサの親父さんと同じ匂いがする気がするけど......さすがに安直に考えすぎか。見つかるといいけど......


「おっと、話が逸れまくってたな。材料の方は大部分は順調に集まって、あとは蒼汰にお願いする部分があるが、いいか?」


「もちろん、できることならやるよ。」


「ありがとう。それはそれとして、親父の工房に4...いや5年ぶりに行ってみたんだ。こっちに来てからずっと顔を合わせてなかったからな。母さんとはたまに会ってたけどな。」


 嬉しそうに語るディガは、無邪気にはしゃぐ子供のようだった。


「それでな、親父も久しぶりに帰ってきた俺には笑顔で出迎えてくれたんだ。ちょうど仕事が終わったところだったらしくて、タイミングが良かったんだ。仕事中なら鬱陶しそうに門前払いされるしな。」


 ここまで嬉しそうに語っていると、こっちまで顔がほころんでくるな。


「そして親父の目の前で武器を作って、その出来を認めたもらえたんだ。よく頑張ったなってな。ついでに工房を持つ許可ももらえた。ウェズナーの名を継がせるには早いから、独自の工房にはなるんだけどな。」


 目を輝かせて語っているのを見るに、相当うれしかったのだろう。


 その後も故郷での旧友と会った話や、兄貴分との再会など、このたった二日で何が起こったかを話してくれていた。


 しかし、話を聞いているとどこか違和感が......


「しかもなぁ、みんなニコニコの笑顔で俺を送り出してくれてな......久々の故郷だったが、聞こえてくる鉄槌の音......あれ?そういやこっちに来る前より減ってた気がするな......」


 話しててふとディガが首をひねるのだ。記憶にあるものとは違うが、それを含めてもディガ自身が感じる違和感。旧友との話でも、ディガには弱い姿は見せないと誓ったらしいのに、涙ぐみながら抱き着いて来た。


 という部分でも、兄貴分との再会に関しても、ディガがしゃがんでやっと、その兄貴分が頭をポンポンできるようになったという話だったが、その手は思っていたよりも薄かったことなど、気にしなければ気にならないが、離しているうちにディガは首をひねって疑問に思ったようだ。


 もちろん、再会によって感極まったということはあり得るだろう。しかし、それだけではぬぐい切れない違和感......その正体にディガは気づく。


「まさかとは思うが......今俺の故郷は危ない状態なんじゃないか......?」


 ふむ、さっきとは雰囲気は一転して不穏になったな。


「危ない状態って言うと?」


「わからねぇ。わからねぇけどよぉ、さっき話してて気になったんだ。ルゼス兄貴の武器を長らく打ってないような手、メラルの涙ぐみ方、叔父の失踪......どうしてだ、おかしいところはいくつもあったのに何も気づかず......!」


 突然悔しそうに歯噛みしだしたディガをなだめる。


「待って待って、まだそうと決まったわけじゃないんだから......」


「そんなことねぇ!メラルは.......あいつは俺の前で泣かねぇって誓った!ルゼス兄貴もあそこで住んでおきながら何も打たないなんてありえねぇ......浮かれてて盲目になってたがよ、そもそも親父がこんな一日そこらで免許皆伝なんてするわけがねぇ。何より、そこら中に鳴り響いていた金属音、あれがほとんど聞こえなかったんだ。絶対に何かがおかしい。」


 頭を抱えて歯噛みする様子を見るに、ディガなりの何かしらの確信があったのだろう。


 こうなってくると、ホントは何もないだなんて平和ボケもいいところだ。何もないのならそれに越したことはないが、こっちに来てからの経験上、そういうケースだと必ず何かしら良くないことが起こっている。


 つまりは、ディガの故郷にも何かしら、良くない変化が起こっている可能性がある。


 もしもそうなら、あの王国の地下室で接触したあいつらの団体......その可能性は無きにしも非ずってところだな。


 ディガのこの不安が杞憂に終わる可能性もなくはないが、さすがにここは向かうしかないだろう。


「なあ、ディガの故郷ってどこら辺にあるんだ?」


 俺は以前ロサが描いてくれた軽い地図を取り出し、ディガに指さしてもらう。


「この火山の近くにあるが......」


 火山の近くか......たしか火山のどこか洞穴に均衡守護者(バランスガーディアン)がいるんだったんよねモル?


『そうじゃの。まだ気配は消えておらぬからそこにいるのは確かじゃ。そして、蒼汰の想定する相手が敵の場合......』


 その均衡守護者(バランスガーディアン)も危険になる可能性があるってわけね。


『今はあやつらの中におる二人を助けられないのが歯がゆいが、今は先に向かってこちらに引き込むしかないでの。ちょう目的地が被るのならちょうどよいわ。』


 うん。んじゃそういうことで......


「ディガ、帰ってきたところ早速で悪いが、日が昇ったら俺をディガの故郷に連れて行ってくれないか?」


 俺の提案にディガは目をしばたいたが、もちろんだというように、力強くうなずいた。


「じゃあ明日に向けて体力の回復ってことで、今はしっかり休みな。不安かもしれないけど、その不安は何とかして見せるから。」


 それを言うと、ディガはホッと入りすぎていた肩の力を抜き、


「あぁ、ありがとう。それと蒼汰、一ついいか?」


と聞いてくる。


「うん?」


「お前は何があっても俺の味方か?」


 何か不穏な質問だけど......俺の答えは多分誰に対してもこうだ。


「この家にいる誰かを傷つけることがないなら味方だね。そりゃ、絶対に味方するって言って、身内が苦しむのは嫌だし。」


「ははっ、そうか!そりゃ信用できる言葉だな!」


 どこかディガの様子に不安を覚えつつも、ディガが部屋に戻るのを確認の後、ソファーに寝ころぶ。

 さて、ディガのためにやってやりますかぁ!



 いかがでしたでしょうか?今回は、ディガが帰ってきて土産話的なのをしてくれましたね。それはそうと、ディガが感じている故郷への違和感は一体何なのでしょうね?そして、そもそもそんな重要な点を見落としていたディガくん......どこか怖いですねぇ......


 次回の投稿も来週の金曜日の予定です※都合上、遅れてしまう可能性があります。


 面白いと感じたら、ブックマークや評価をぜひ、よろしく願いします!モチベーションや、物語の流れにもにつながるので!


 それでは、また次回お会いしましょう。


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