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えっとね、隠してたけど......

 楽しんでいただけたら幸いです。最後まで読んでみてください。


 空兎を部屋まで運ぶと、そこでは明兎がベッドで横になりながら本を読んでいた。


「え、空兎寝てる?それ。」


 顔を上げて、俺の背中にいる空兎を見て怪訝そうな表情で明兎は言う。


 そんなに嫌なものなのか?と疑問が沸いたが、まあ寝てるのは確かなので相槌をうっておく。


「......はぁ、相変わらずうちのお兄ちゃんは人に迷惑かけるね。」


 俺が空兎をベッドに寝かせたあと、少しの間空兎の様子を観察していた明兎は呆れたように言い放った。


 別に迷惑なんて思っちゃいないが、まあそこの基準は割と人それぞれだろう。


「迷惑なんて思わないけど......?」


「蒼汰くんは優しいし、そりゃそうなるよねぇ......」


 呆れたように言われ、今のが少し皮肉を放っていたと気づく。


「......あのさ蒼汰くん、言っておきたいことがあるんだけどいい?」


 一拍置いて。少し神妙な面持ちでそう言ってきたので、思わず俺も顔を引き締めてしまう。そして頷くと、安心したかのように息を吐いて。


「お兄ちゃんってさ、一度寝ると相当なことしない限り起きないから言うんだけどね......」


 前に明兎も中々起きないとか言ってたなぁ......と話を聞きつつ漠然と思い出す。兄妹ってやっぱり似るところあるんだね。


「単刀直入にいうと、彼女が欲しいらしいの。」


「............え?」


 いかん、思わず聞き返してしまった。ただまあ、神妙な顔して言う内容と離れてるような気がして、思わずって感じなんだけど。


「だから、お兄ちゃんは彼女がいない歴=年齢じゃん?んでもう少しで20歳になるわけね?そろそろ彼女の一人ぐらい欲しいって嘆いてたから、お兄ちゃんに紹介できる人がいたら協力してほしい!」


 いやまあ俺もそうなんだけど......という差し水はやめといて、明兎が空兎に対して協力的というか、空兎を思っての行動するって珍しいな。今までもあったのかもしれないが、今までを思い返すと、ほとんど見てないぞ。


 まあいつもいがみ合っている空兎が寝てるから本音を言いやすいみたいなところかもしれんが。


 とはいえ、紹介できる人って言ってもな......近くにいる女性はロサやレサくらいだし、リアンに関してはほとんど何も分かってないから紹介のしようもないし......あれ?なんも協力できなくね?


『おい、妾は周りにいる「女性」のうちには入らぬのか?』


 モルは......うん、どちらかというと全体的にこどm......周りにいるっていうか一心同体状態だし、まあギリ含まれないかもな~。


『......お主今子どもっぽいとでも言おうとしてたのではあるまいな?』


 いや、してないですハイ......もしも俺の中にいないなら周りの女性のうちには入ると思いますよ?


『最近ソータの妾を見たり評価したりする目が腐ってきてるやもしれぬの......いっそ取り換えるか?』


 なんか怖いこと呟いてる脳内ドラゴンさんは無視してね、他に誰かいないか考えてみる。


 食堂のおばちゃんやジャスミンさんなど浮かんだが、こちらも素性を知らないし、こういっては失礼だが、空兎の恋愛対象では.....ん?そういやこいつのストライクゾーンって......


「明兎、残念ながら俺が空兎に紹介できる人はいないね。そこはもう空兎に頑張ってもらって自分で見つけるしかないかも。」


 うむ、レサを紹介しようものなら絶好の実験台になるしな、空兎自身もあぶねぇ。


 直接的な協力は難しいことを伝えると、明兎は分かりやすく肩を落としたがすぐに元の様子に戻った。


「え、でもそもそもの問題として空兎が慣れてない人と話したり、自分から勇気を出して話しかけにいくのが難しいってのがあるよ?蒼汰くんはこれどうにかできる?」


 そうだ、そもそもこいつ自身のメンタルの問題もあるんだったわ。彼女欲しいとか言うなら、慣れてなくても人と話すことぐらいはできようぜ。まずスタートラインがねぇんだわ、それじゃ。


 スタートもできないのに段階飛ばしても途中で倒れるだけだしな......まずこれを何とかせねば。


 例えばそうだな......モルかセクのどちらかを空兎の体内に移して話す練習してもらうとか?


『ふざけるでない、ソータの中におるのが一番心地いいんじゃ!』


 お、おう、嬉しい......でいいのか......?まあだけどあくまで一例だから!というかあいつの中に入れば多分俺が見てないアニメとかも見れるとは思うけど......


『何!?新作が見れるのか!?』


 うん、観てばっかで話とかしなさそうだからどの道無理だね。


 この食いつきはもはや餌を垂らされた魚だしな、やる前から想像できることをやる必要もない。


 じゃあ、ディガ、ロサ、レサ辺りに話し相手でもしてもらう?いや、さすがに本人たちの時間を削るのは良くないか。


 ライアがカウンセラー的なことをするとか?俺でもいいんだけど、逆に俺と話すことに慣れすぎて効果なさそうだしな......


 あいつぁ最初の一歩踏み出せればいいんだけどね、明確に自分と話が合うとかそういう確信を持たないと踏み出せないだろうしなぁ......話しかけても続かないし......みたいになって内心怖がってそう。


「どうにかはできないけど、まあアドバイスぐらいはできるかもしれないな。初めて話す人とはどういう話題を持ってくればいいのかみたいなね?俺もそれに関して正しいことは分からないけど、結局そういうきっかけで前に進むことはできるかもしれないし。」


 なるほど、という感じで明兎が頷く。あの感じだと目から鱗といったような様子だが、明兎は他に何か考えでもあったのだろうか。


「明兎はどういう策を考えてた?」


「え、もうめんどくさいからスキルで矯正しようかなって......」


 ええと......うん、最悪もうそれでもいいや......(諦め)


 突き放すような言い方になるが、これに関しては本人の意思やメンタルの問題であるため、第三者が過剰にどうにかしようとしすぎるのもよくはない、本人が自らどうにかするまで見守るのが一番正しいかもしれないな。


 外部からの影響で形が変わったなら、元の形に戻ることはあるし、無駄足どころか精神的にダメージを与える可能性もあるし。


 何が言いたいかというと、人の心って思ってるよりも繊細だよねって話だね。一旦お手上げでいいや。


 ここで考えたところでどうにかできる問題ではないと気づいたため、話題の転換を図る。


「......そういえば思ったんだけど、明兎ってなんで今空兎をお兄ちゃん呼びしてるの?いや、それが悪いとか言ってるわけじゃなくてね?純粋な疑問として。」


 俺の質問をきいた明兎は首を傾げる。


「え、空兎をお兄ちゃん呼びしてた?」


「してたしてた。普段と違う呼び方だからなんか気になって......」


 すると明兎は途端に顔を真っ赤にして、顔を隠しながらうつむいた。


「最悪......よりによって蒼汰くんに空兎へのこの呼び方がバレるなんて......」


 なんか落ち込んでる?別に呼び方ぐらいなんでもいいと思うけど......


 突然明兎が顔をバッとあげ、キッと若干俺を睨み気味に、


「絶っっっ対に空兎には言わないでね!?」


と叫んだ。どうやら明兎的にはこの呼び方をしてるのが余程恥ずかしいらしい。


 なんでこんなにも嫌がっているのか、聞こうとしたが、聞いたら明兎が嫌がりそうなので黙ってうなずいておく。


 すると、俺の疑問が顔に出てたのか明兎は語り始めた。


「......元々小さいときは私も空兎をお兄ちゃんって呼びたかった。でも頼りないし、情けないし、すぐ張り合ってくるしで、どうしても空兎を兄と呼び慕うのが嫌でもあったの。」


 お~い空兎、言われてるぞ~。お前が聞いたら相当ショック受けそうだが、幸い寝てるのでダメージはない。


「でもね私が中学生のころ、ガラの悪い高校生に絡まれたとき、お兄ちゃんは間に入って真っ直ぐ相手を睨んで一発殴られても微動だにしないで、私を守ってくれた。そこでちゃんと空兎を兄として見るようになったのかも。でもそのあとはいつもと変わりなくて、それがちょっと悔しいから見えないところで、ちょっとだけ甘えるみたいにお兄ちゃんって呼ぶようになったのかも。」


 あれ、その話聞いたことあるけど、空兎から聞いたのと違うな。間違えて足引っ掛けて転ばせちゃって殴られたとか言ってたぞ。よくわからんところで自分のやった行いを隠そうとするな、空兎。本人的には笑い話にしたかったのかもしれないけど。


 とはいえ、甘えるようにか......普段の喧嘩を見てても甘えてるようにしか見えないが、そこはまた意識的なものの問題で違うのだろう。


 とりあえず今の呼び方の経緯は分かった。明兎にとって安心できて、近くにいて背中を預けられる存在であるからってことか......その背中を明兎に見せることができてる時点で尊敬だ。


 俺は弟にそんな姿勢を、背中を一切見せることができなかったしな。兄としての行動が雲泥の差だ。


「空兎、よく分かんないところで隠し事するよな......主に自分が関わって誰かを助けた時。」


 言葉にして気づいた。そうだ、空兎が自分を卑下するのって、そういったことを自ら隠して意識してないからじゃないか?


「うん、私はお兄ちゃんのそういうところが嫌い。でもそれを鼻高々に語るお兄ちゃんは想像したくないかも......」


 このスタンスだからこそ、目に見えないところであるとはいえ、尊敬の意味を込めて、明兎にこう呼ばれてるんだろうな。


 嫌がってた原因はそれを聞いた空兎が明兎をいじり始めるのと、甘えてる様子を見られて恥ずかしいという部分が大きいだろうね。ニヤニヤとした笑みを浮かべて明兎を突く空兎を想像するとなんかイラっとしたので、どの道言いはしない。


「この話絶対に、お兄ちゃんにしないでね!?」


「わかった。」


 明兎の念押しが入り、それに頷く。一応空兎の様子を見たが、ちゃんと眠っているようなので、聞かれてるとか言うことはないだろうな。


「そうそう、話それちゃったけど、空兎の後ろ向きな姿勢をどうするか、一緒に考えよっ。さすがにスキル使ってちゃ意味ないだろうし。」


 あ、ちゃんとわかってはいたんだ。てっきり本気で言ってるのかと少し思った。少しだけね!


 とはいえ、なにか解決策はないものか......空兎があれこれ考えすぎずに気軽に話せるようになる方法......難しいな。


 悩んでいると、部屋のドアがコンコンと鳴った。


「は~い、どぞ~」


 返事をすると、ドアが開き、ロサが入ってきた。


「ソータ、ちょっとお話いいかな?」


 ちょっと怖い笑みを添えてきた。なぜだろう、悪寒がする。明兎を見るともはや知らんぷりをしていた。


 謎のロサの笑顔の圧に心臓を掴まれつつも、ロサに連れられるままついていった。



 いかがでしたでしょうか?今回は、明兎が空兎に関することを蒼汰に言ってましたね。みんなの相談者的な立ち位置となる蒼汰くん、中々大変そうです。途中若干適当に流してましたが、互いの信頼あってこそでしょう。


 そして、最後の謎のロサの笑顔の圧.....あれは一体何なんでしょうね?


 次回の投稿は再来週の金曜日の予定です※都合上、遅れてしまう可能性があります。


 面白いと感じたら、ブックマークや評価をぜひ、よろしく願いします!モチベーションや、物語の流れにもにつながるので!


 それでは、また次回お会いしましょう。

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