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あの、そういうのやめてくれません?

 楽しんでいただけたら幸いです。最後まで読んでみてください。


「なんで、自己紹介なんてするんですか?」


 蒼汰の言ったことが理解できないという様子で、眉をひそめながらリアンさんは言う。


「信用してもらうためには嘘偽りなくってのもあるけど、なるべく自分のことを話すってことの方が大事だからね。さっきまでのリアンの様子を見てて、昨日の自己紹介はもしかしたら嘘ついてたんじゃなかって思ってさ。」


 なるほど、シンプルに蒼汰が知りたいだけってことね。なるほど納得したわ。にしても突飛な提案なもんだが。


「はぁ......その理論はあまり理解をしがたいですが、とりあえず乗っときましょう。」


 一つため息をついて、先ほどとは一変、気だるげに咳ばらいをして自己紹介を始めた。よく見たら、ロサさんとルーナちゃんもリアンさんに注目してる。


「こほん、え~と、私はリアンと申します。好きな言葉は森羅万象です。響きがかっこいいから......みたいな理由です。スキルのことは詳しくは言えないんですけど、まあ色々とややこしくするって感じの性能です。二択問題を出されたら逆張りか三択目を作るのが癖です。よろしくお願いします。」


 ......どういう自己紹介?クラス替えした後の自己紹介みたいなテンションじゃねえか。


 まあでも、一概に自己紹介と言われても何言えばいいか分からないか。というか、三択目を作る割には俺らに二択問題出してきてるんだが。


 あれが、不安と警戒故の行動だとすれば......いや、それでもあの言動の動機にはならないかもな。


 おかしい。リアンさんが改めて自己紹介してくれてるはずなのに、余計に分からなくなったぞ?


「うん、ありがとうリアン。まあ他にも分からないところがあったら、これから知っていけばいいだけだしね。」


 蒼汰は至って真面目な顔で言う。おい蒼汰よ。これでいいなら、改めて自己紹介させる必要もなかっただろ。だめだ、こいつのことも少し分かんなくなってきたかも。


「さて、もうそろそろ昼時だし、何か食べないとね。何食べたい?」


 そう言われて、確かに日が高いことに気が付いた。腹時計は今日は設定してなかったみたいだ。


 腹が減っては戦はできぬって言うしな、戦いじゃないけど、午後からを元気よく過ごすために、活力を付けねば。あの石どもにまぎれてた扉も気になるし。


 蒼汰はキッチンに向かっていき、何かを作り始めた。手伝おうとしたが、それよりも早く、ロサさんが手伝うよ、と蒼汰の隣に立った。


 蒼汰が指示を出し、ロサさんが蒼汰と比べると若干拙いながらも、包丁を扱ったり、野菜の皮を剥いたりしている。それを優しく見守る蒼汰。


 うん、ここもうデキてるか兄弟だねっ!しかもしっかりお兄ちゃんやってる系の。というか、こういってるけど、ロサさんよりも料理できねえわ。まずあの操作がうまくいかねぇ。


 しかもさ、しっかりお兄ちゃんやってるみたいと言ったが、俺が明兎にマウントとれるの生きてる長さぐらいだぜ?情けないにもほどがあるだろ。いやもうちょいあるかもしれんが、今考えても必死に絞り出したみたいになるからやめとこ。


 というか、しっかりした兄貴なら大人げなくマウント取ろうとしねぇか。


 二人が昼食を作ってる間、明兎にさっき何をしてたのか聞いた。


「明兎、お前はさっき何をしてたんだ?ずっと手元を見ながら何かしてたけど。」


 すると、明兎が待ってましたとばかりに少し顔をニヤニヤさせながら言った。


「よくぞ聞いたね。あんな風に話がまとまったのは私のスキルのおかげなんだよ~。」


 どういうことだ?と聞くより早く。


「実はね、二人が敵対せず、とりあえず友好関係になるっていうことをスキルに書いたらその通りになったんだ。しかも、会話の内容も私の書いたキーワードが多かったし。」


 なるほど、これに関しては明兎の勘違いの可能性もあるが、あのバッチバチの一色触発っぽい状態から、話をいい感じに収めてるから、影響がないとは言い切れないな。


「よくやったな。ありがとう。これからも、有効的に使うんだぞ~。」


「うん!......じゃなくて、言われなくても分かってる。」


 少し照れくさそうにそっぽを向いて、明兎は元気に頷いた後いつものように、可愛げのない態度をとった。


 それを見て、俺は気づいた。そういえば、こいつが何かしても褒めるってことしてねえな、と。


 明兎みたいな年だと自分が何かいいことをしたって思った時、褒めてほしいものだろうしな。しかも、褒めてもらえる相手がここじゃ少ないしな。こういうところも年頃っていう部分なのかな?


 こういう面が見えると可愛げがあるんだけど、普段はそんな様子一切ないからなぁ......


「へぇ......あなたがしてたんですね。」


 頭上から声が降ってきて、俺と明兎は同時に体を跳ね上げる。


「あ、っと......リアンさん?その言葉の意味って?」


 どこか威圧感のようなものを感じた言葉に、若干ビビりながら顔を上に傾けてリアンさんに問いかける。


「うん?そのまんまですよ。明兎ちゃんがやってくれたことみたいで。」


 どこか冷たく感じてしまう言葉に、警戒しつつ、一応スキルを開いておく。


「そんなに警戒した顔しないでも。大丈夫です。別に害したりするわけではないですから。途中でスキルの妨害をされて......それが気になってたんですよ。でもそれだけなので。本当ですよ?」


 じゃあ急に上から声かけないでほしい。めちゃくちゃビックリした。


「少なくとも協力関係であるうちには、何もしませんよ。というか、あなたたち二人が私に何かしてこない限りは友好的な関係を紡ごうと思っているので。」


 それが言葉通りならいいんだけどねぇ......まあ今はそれを信用しておくか。さすがに、こんなこと言ってるから、気を抜いた瞬間危険になるかもしれんし。


 蒼汰はお人よしとか言うレベルじゃないほど、基本的に相手の言うこと信用するしなぁ......俺が気を引き締めとかねば。


 まあ、危険とかには敏感ではあるから、それがいいのか悪いのか分かんねぇが。


「また訊きたいことがあったらいつでも訊きに来てください。いつでも待ってますので。応えられる範囲内でなら、ですけどね。」


 リアンさんは顔に微笑みを浮かべて去っていった。その微笑みが、含みのあるもののようなものな気がして......何か不気味なものを感じた。


 というか、どこかに行ったといってもどうせすぐに昼食を食べに戻るんだろうが。


 というか、あいつ一応同胞だよな?全然そんな感じがしないのに、そんな感じしかしないという、矛盾した考えになってるんだが。


 明兎を見ると、少しだけ目が潤んでいた。どうやら、あの声音と目が怖かったようだ。母さんに叱られた時みたいになっている。


「明兎、リアンさんはさっきああ言ってたが、半分脅し、半分安心させる目的みたいな感じだ。少なくとも、リアンさんが狙うなら、俺が先だろうから、そんなに不安にならなくてもいいぞ。」


 まあ、弱い方から狙うとかいう考えがなかったらだが。


「別に、怖かったとか、不安になったとかじゃないから!私がそんな風になるわけないじゃん!」


 はいはい。そういうことにしといてやるよ。俺もちょっと怖かったしな。(主に)俺の面目のためにもそういうことにしないとな。


「空兎~、そろそろ飯ができるから、みんなを呼びに行ってくれ。他に誰もいないみたいだし。」


 もうできたのか!?早いな。手際がいいというよりは、何かしらのスキルを使って作ったんだろうな。

 匂い的に多分、冷しゃぶっぽいな。豚肉の茹でられた匂いがする。


 さて、ついでに明兎も連れていくか。


「明兎ぉ、一緒に他のみんなを呼びに行くぞ。俺だけじゃちょっと不安だ。」


 主にリアンさんとレサさんがね。どっちも何されるか分からない怖さ?みたいなのがある。


「わかった。行こ。」


 そう言って、明兎はスクッとすぐに立ち上がり、リビングから出ていった。


 俺も後を追いかける。


「明兎はリアンさんとレサさんのどっちを呼びに行きたい?」


「レサさん。」


 即答だな。まあ、さっきのが怖かったらしいし、仕方ないかな。俺はどっちにしても怖いんだけど。


 レサさんの部屋の隣......本来はロサさんの部屋のドアをノックする。


「どうぞ~。」


 返事があったので入った。


 リアンさんは、机に向かっていて、何かを書いていたようだった。


「どうしましたか?」


 しばらくリアンさんの様子を見ていると、リアンさんは不思議そうに首を傾げた。先ほどのような妙に鋭いというか、直感的に怖いという感じはしない。


「いや、その机のやつ......何書いてるのかなって。」


「ああ、これですか。これはただの日記とでも思っておいてください。」


 思っておいてって......じゃあ日記じゃないんだな。なんだろう?今日の出来事を書いてたとか?それが日記じゃねぇか、馬鹿ヤロウ。


「それはいいんだけど、蒼汰が昼食できたってことで呼んでたから、呼びに来た...よ?うん。まあ早く来た方がいいと思う。」


「なんで疑問形なんですか......」


 さぁ?なぜだろう。俺にも分からん。たまになる。リアンさんと話すのに緊張してるのかもしれない。


「はぁ。それは置いておきましょう。とりあえずわかりました。すぐに向かいますね。」


 よし、ミッション達成。んじゃあ俺は退散退散っと......


 部屋から出ようとしたとき、リアンさんに呼び止められた。


「あの、少しいいですか?」


「うん?」


「聞いておきたいことがあるんですけど......」


 ああ、質問されるパターンね。意味深なことでも言われるのかと思ったぞ。


「いいけど......何が聞きたいの?」


 すると、リアンさんはどう言っていいか分からない、というより、口にするのをためらっているように見えた。


「いえ、やっぱり今はやめておきましょう。また今度改めて聞きたいと思います。」


と、首を横に振ってから俺にそう言った。


 オケ。意味深なことを言われる(・・・・)んじゃなくて、意味深な言動を見せられる(・・・・・)だったのね。完全に理解したわ。



 いかがでしたでしょうか?今回は、空兎と明兎がリアンに得体のしれない何かを抱いてましたね。十中八九ゾワリとするような恐怖かもしれませんが。


 とはいえ、リアンさんももしかしたら悪気なく、たまたま言葉遣いやら、言動やら何やらでそう見えてるだけかもしれませんがね。


 次回の投稿も来週の金曜日の予定です※都合上、遅れてしまう可能性があります。


 面白いと感じたら、ブックマークや評価をぜひ、よろしく願いします!モチベーションや、物語の流れにもにつながるので!


 それでは、また次回お会いしましょう。


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