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よっしゃ、やっていきましょう

 楽しんでいただけたら幸いです。最後まで読んでみてください。


 しばらくして、蒼汰の体からの着信は鳴りを潜めたので、妙に赤い目をなるべく見ないようにしながら言う。


 でないと、なぜだか俺ももらい涙しそうになったからだ。


「蒼汰、この後どうする?このまま戻るでもいいが、そうでないなら、どこか気が済むまで出かけるか?」


 その提案を聞いた蒼汰は、首を横に振る。


「さすがに戻る。ロサにああいうこと言っちまったんだ、そのまま逃げるのは俺が嫌なんだよ。」


 先ほどよりも、口調は柔らかくなったが、どこかまだ、夢を見ているかのような、そんな表情をしている。


 少なくとも、ここでの俺は信用しているが、まだ完全には信用できないといった感じだろう。


 しかし、戻ろうとする意思は確かなようで、いくらか目に光は戻っていた。


 スキルを使って俺と蒼汰を家の中に戻すと、蒼汰は真っ直ぐにロサさんの所へと向かっていった。


「ロサ、さっきはごめん。あんな酷い言い方をして。心から拒絶するみたいなことをして。」


 蒼汰は申し訳なさそうな顔でロサさんに言う。当のロサさんはというと……


「ううん、別に僕は気にしてないよ。でも、それよりも……」


 そういって、ロサさんは自分の後ろを指差す。


 後ろには明兎とルーナちゃんと……


 え〜と、どうしよこれ。見守っておくほうがいいのかな?


 ちょっと、頭ピキらせてるレサさんがいた。何でだろうね!うん。俺は知らん。何も関係ないぞ!いやホントに。


「ソータ、テメェいくら寝起きだからといって、うちの妹が心配してんのに、それを拒否するってのはどういう了見だ?」


 どうやら、あのときの様子を見て、気に食わなかったようだ。この人あれだな。多分…というか十中八九シスコンだな。


 そうそう、十中八九といえば、オッズが高い方に賭けたいよね。残りの一、ニに賭けるって感じね。


 まあつまり、このあとに蒼汰がレサさんに何かされる確率は、その確率の高い方なわけで、無事を祈る俺は確率の低い方に賭けるんだけど……


 レサさんは蒼汰に近づき、耳元で何かを囁いた。


 え、俺は何を見せられたん?いや、望んでたとかじゃないんだけど、そのまま平手打ちコースかな〜とか思って見てたら、耳元で囁く…だと…?


 俺の賭けは外れた挙句、こんな当人からしたらご褒美であるはずのものを見せられて……ヤベェ。俺がさっきの蒼汰みたいなるかも。


 ま、仮にそうなったところで心配してくれるのは蒼汰ぐらいしかいないんだろうけどっ!


 だがしかし、ここで朗報だ。蒼汰は囁かれた後、バレない程度に顔をしかめているので、確実に何か都合の良くないことを言われたのは確かだろう。


 そしてもう一つ。レサさんが俺へと近づいてくる。しかも、割と笑顔で。


 何だ何だと待っていたら、ただこの部屋から出ていっただけだった。


 なんだよ!無駄に期待だけさせやがって!俺なら何いっても喜ぶぞ!


 まあ、誰かに何かあれば自分にも何かあるとかいう、悲しい勘違いしてる俺氏。


 そんな悲しい勘違いやら何やらは置いといて、ふと蒼汰を見ると、どこか鋭い視線をしていた。


 その視線の先を辿ると、リアンさんがいた。


 視線の質に対して不思議に思っていると、蒼汰が口を開いた。


「やっぱ、リアンのスキルだったんだな。なんであんなことした?」


 えと、ごめん。話の流れが掴めない。一つ言うと、まずなんでそうなった?今もほら、蒼汰とリアンさん以外困惑してるみたいだし。


「何でと言われましても……好奇心から?とでも言った方がいいのでしょうか?」


 待って待って。誰かこの会話の意味を解説してくれ。俺にゃわからん。


「極端な話、別に何かしてくるのはいいんだけど、苦しめるのはやめてくれ。あとせめて、もっと具体的な目的を教えてくれ。」


 おけ。とりあえず蒼汰はああいう風にしたリアンさんを許そうとしてるってのはわかる。


 というか……ってもう俺は黙ってそのまま聞いとこ。


「具体的な目的ですか……その様子じゃ、私をそのまま許すと言っているように聞こえるのですが……」


 うん、俺もそう聞こえた。


「まあ、程度は違えど、何度か似たようなことされてるしなぁ……」


 ロサさんが目を逸らした。一体何したんだよ!


「流石に今回のは精神的に持たなかったけど、空兎やロサたちのおかげで何とか回復したし。まあ、まだ若干信じられてない節もあるけど……それはシンプルに疑う俺が悪いだけだからねぇ…だから、別に許さないつもりはないよ。」


 蒼汰の心の広さは流石だな。お人好しとかいうレベルじゃねぇぞ。ちなみに俺だったら許さん。一生かけても、いや、死後までも呪うと思う。


 その決意は多分1週間ぐらいで忘れそうだけど。短期記憶しかできない、残念な頭ということですね。私。


 それは置いときましょ。


「さすがにその言葉は私がしんじられませんよ!あなたも口だけでそう言って、そのうち私を貶めるようなことするんでしょう!?」


 リアンさんが突然叫ぶ。思わずビビって、体が跳ねちまったじゃねえか。側から見たら、ただただ一見愉快な不愉快な奴に見えるんだろうな……


 とまあ、自己評価の低さを露見させた後、一度周囲を見る。


 何となく空気感がヒリついているので、一応全員を逃がせるように、2人の衝突に備えてスキルをいつでも発動可能の状態にする。


 ロサさんも、何かを感じたようで、ルーナを守るようにして、背中に隠している。


 とりあえず、俺も明兎の盾になれるように、明兎に手招きしたが、明兎は俺の行動を認識した。認識はしたが、無視しやがった。


 そして、なにかを見るために、手元に視線を落とした。


 なので、スキルで俺の後ろに呼び寄せる。


 何が起こったか、頭に疑問符を浮かべると思っていたが、手元に集中していたからか、その様子はなかった。


 何をしているのか見ると、何か書いている。


 それを見ている場合ではないので、視線を交錯させている2人に視線を向ける。


 リアンさんの周りで何か光が渦巻いていた。


「ソータさん、光って影と表裏一体ですよね?」


「そりゃそうだけど、急にどうして?」


「私はいつも影でした。いつまでもいつまでも、光にはなれない、そんなところで過ごしていました。」


 それは比喩なのか、はたまたそのまんまの言葉なのか。明らかに比喩だな。考えるまでもなかったわ。


「私はこっちにきて光を手にした。でも、その代わり命を狙われて隠れるしかなかったんです。これじゃ、元の世界にいた時と何も変わらないじゃないですか!結局、影は影でしかないってことなんです。」


「つまりはどういうこと?煽るつもりとかじゃないんだけど、何が言いたいのか教えてくれ。夢の中でもリアンはずっとそのスタンスだったから。」


 あ、待って、その言葉は不味いんちゃうん?


「つまりは、私はいつまでもハッキリせず、自分がわからない、何のために何をするのかそれも分からない、無価値な存在なんです。そんな相手のしたことが許せるわけがないじゃないですか。ハッキリとした、何かを持っている人が。」


 不味くはなかったけど、まあつまりは許すつもりの蒼汰を信じられず、逆に許せない、と。どないせぇっちゅうねん。


「うん、まあその気持ちは俺にもわかるよ?どちらかといえば俺もそっち側だし。」


 蒼汰が何でもない感じでそんなことを言う。


「どういうことでしょうか?」


「さっきリアンは、『自分がわからない、何のために何をするのか、それも分からない』って言ったよね?俺も同じだよ。


 行き当たりばったりな行動ばっかして、何かしたいと強く望むでもなく、流れるまま、身を任せるままに過ごしてる。」


 え〜、絶対そんなことない。少なくとも、身を任せるままなんだったら、こんなに蒼汰の周りに人集まらんやろ。


「そんなわけないじゃないですか!」


 ほら、リアンさんもおんなじ気持ちじゃん。


「そんなことあるって。目の前のことしか見えず、その場その場で何とかしようと、そのときを想定して何かしようとするけど、結局何の役にも立たない、そんなことしかないからね。」


 あ〜テス勉してて間違えた範囲勉強してたみたいな?いや若干違うか。


「ただ目の前の手の届くところで、誰かを助けられるんだったら助けたいってなるだけだよ。昔、といっても数年前だけど、塞ぎ込んだとき、絶対そんな奴らみたいにはならないっていう、深層的な俺の決意なのかもな。」


 蒼汰はフッと自嘲するように笑い、続ける。


「まあだから、俺自身に何かハッキリとした目的があるわけじゃないよ。リアンがいう、影で生きているというのと同じだ。」


 いや、目の前のものを助けたいっていう目的というか、ハッキリとしたものあるやろがい!と突っ込みたいが、それは野暮というものだろう。


「それでも、たとえあなたが同じだとしても、私が無価値ということには変わらないんですよ?」


「無価値?そんなわけないだろ。必ず何かの価値はある。一見何も役割がないように見えるだろうけど、何かの影は日差しが強い時に、涼しめる、休めるところなんだ。たとえ無価値だと思っても、誰かにとっては価値のある存在になるんだよ。」


 捉え方の問題的なやつね。割とこれには賛成だわ。


「じゃあ私は誰にとっての価値のある存在になればいいんですか!?」


 そう叫ぶリアンさん。纏う光が少しだけ強くなった。


「え、わからん。だってそれは、価値を見出す人によるし。」


 リアンさんが絶句した。何と無責任な……


 というか、この会話に飽きたのか、ロサさんはルーナと遊び始めた。こんな感じの状況に慣れてるのか?嘘だろ?


「まあ少なくとも、俺にとっては価値ある存在だと思うけどね。」


「どういうことです?」


 警戒するように目を細めるリアン。


「さっきさ、繰り返す悪夢を見せられたじゃん?あれのおかげで、今あるものは必ずずっとあるわけではないってことを改めて認識させられたんだよね。それがなきゃ、いつか後悔することになってたかもしれない。」


 うん、まあこれは捉え方の問題ってよりは……


「そんなの、屁理屈じゃないですか!無理やり理由をこじつけてるだけです!」


 おお、俺の心の声を全て代弁してくれた。意外とリアンさんと気が合うかもしれん。


「屁理屈でも理屈でも、思ってることには変わらないよ。だって実際、俺がそう思ってんだから。」


 ……たしかにこいつ、基本的に嘘つくの苦手だわ。いや、すぐには気づかないんだけどね?こいつの嘘つくときの癖は知ってるからなぁ…今言ったことが本心なのは間違いない。


 あまりにもまっすぐな眼差しでリアンさんを見ているので、リアンさんも戸惑い、少し纏っていた光の強さが弱くなった。


「それじゃ、リアンの質問にも答えたし、本来聞きたかった、あんな悪夢を見せた目的を教えてほしいな?」


 ……こいつ、この状況でそれが言えるって、やっぱメンタル強いな。



 いかがでしたでしょうか?今回は、蒼汰に悪夢を見せた犯人が判明しましたね。まあちょっと、目的が分からないですが、それは多分次回わかると思います。


 それと、あと数話は空兎くん視点が続きます。


 次回の投稿も来週の金曜日の予定です※都合上、遅れてしまう可能性があります。


 面白いと感じたら、ブックマークや評価をぜひ、よろしく願いします!モチベーションや、物語の流れにもにつながるので!


 それでは、また次回お会いしましょう。


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