困惑の連続だねっ。うん(諦め)
楽しんでいただけたら幸いです。最後まで読んでみてください。
「なんでそんな慌ててるの?」
マズイ。全然マズくはないが、マズイ。俺の動揺を感じ取られているだと......?そんな馬鹿な。
「別に、慌ててててるとか、そんなわけ、じゃないけど、どどど、どうしたの?」
ふぅ。これなら隠せただろ。隠すものはないが。むしろすべてをさらけ出す時が来るなら、すべてをさらけ出すぞ俺は。知識でも全裸でも!
「......よくわかんないけど、とりあえずお姉ちゃんとリアンちゃんを起こしてきたよ~。」
後ろから昨日見た人と昨日見たけど、見覚えがうっすらとしかない人が現れた。
「あ、一応言っておくけど、髪色と目の色に関してのさっきの説明は僕と同じ感じの解釈でよろしく。」
オッケ。完全に理解したわ。となると、俺ぁパターンでも見つけりゃいいってわけね。
「お姉ちゃん、こういう目覚めない場合の対処法とか知らない?」
ロサさんが少し困ったような表情でレサさんに問う。ふへへへへ。可愛い人の困り顔は実に美味ですのぉ......
おっと、明兎がゴミを見るような目で......しかも燃やそうとしてる目で見てきてるんだが。
「対処法っつってもな......単に目覚めないだけならまだしも、外傷もなく、疑わしいものもまるでねぇからな......むしろ私がどうすりゃいいか聞きてぇよ。」
「確かにねぇ......」
すると、ロサさんが何かを思いついたかのように顔にパッと花を咲かせると、レサさんに耳打ちする。
ルーナちゃんも気になってるのか、二人のそばでそわそわしている。
それに気づいたロサさんがルーナちゃんを内緒話にまぜた。
少し違うところを見ると、リアンさんと明兎が笑顔で何かを話している。
家の外を見ると、心配そう......に見えなくもない表情で動物たちが家の中を覗いていた。視線をたどるとそこにあるのは蒼汰である。
ってことはつまり、この場で何もしていないのは俺であり、話に割って入っていける度胸もなく、動物たちにも信頼なぞされていないので、近づけば逃げられるか引っかかれるってのは目に見えてますね。はい。あんなん引っ掻かれたら人生詰みだろ。一発でゲームオーバーだわ。
この状況でハブられてるのは俺だけということなので、とりあえずは蒼汰が寝ているところの周りを見てみる。
パッと見は何もなかったが、ソファーの下付近に何かが落ちていた。
黄色いビー玉のようなものだった。俺がそれを眺めていると、
「はい、ドーン!!」
という掛け声とともに後ろから大きな衝撃を受け、手に持ったものを手放しながら倒れてしまう。
すると、部屋全体に眩いなんて言う言葉では足らないほどの、網膜を焼く光が生まれた。
っばい。チカチカする。何も見えねぇ。めちゃくちゃ目がいてぇ。
客観的にみると、目を押さえてめちゃくちゃ転げまわっているという、なんとも滑稽な画だが、ふと冷静になり、転がるのをやめる。転がったところで無駄にエネルギー使うだけだ。せめてうずくまろう。
座って目が回復するのを待っていると、急に首筋にチクッとしたものが突き刺さる感覚があった。
するとなぜだろうか、意識が遠のいていくのがわかる。
そのまま俺は重力に身を任せ.....真っ暗な視界のまま意識を失った。
......目覚めると、夢のようだった。現実離れした髪色に容姿、声も透き通っているように感じられ、すべてにおいて好印象だった。
しかも顔を覗き込まれ、目を完全に開けると、ニコッと微笑まれる。
その微笑みにどう返せばいいのかわからず、あいまいな笑みを浮かべていると、
「ちょっとチクッとするよ~。」
と言われ、その顔がこちらへと近づいてきた。
え、何?もしかしてキスイベ?
俺は目を閉じ、それが降ってくるのを待っていると、首筋に何か針のようなものが刺さった感覚を得た。
夢って、意外とすぐに終わるものなんだな......若干悔しく歯噛みしながら、その夢が終わるのを待った。
......目覚めると、俺は自分自身をぶん殴ろうと決意した。あの間隔夢じゃねえじゃん。二回も受けたぞ。どないなっとんねん。
危うく勘違いしていた自分を恥じ、その醜態をロサさんに見せてしまったことも悔やまれる。
って、俺の下らん感情に対しての下らん話はええねん。それよりも今の一瞬で何が起こった?記憶が少し......いや、かなり曖昧なんだが。
起き上がって周囲を確認すると、明兎とリアンさんが倒れこむようにして寝ていた。それを頬っぺたぺちぺちして起こそうとしているルーナちゃんもいた。
そして少し顔の角度を変えると、驚いた様子のロサさんとレサさんも。
「......驚いたな。一日に二回もくらって回復も早く、こんなにピンピンしてるなんてな。」
「確かに。ソータより頑丈かもね。」
「なら......面白いことができそうだな。」
レサさんが俺の方を向いてそう呟く。しかし目が怖かった。あれは俺という個人を見る目じゃない。なんというか、こう、物として見るみたいな目だった。
たしかに俺にもさ、きれいな女性の道具となりたいっていう願望はあるけどさ、思春期の男が想像しそうなスケベな感じであって、あの目は違う。何が違うと言われても分からないけど、身の危険......いや命の危険を感じる。
まぁでも、死ぬとしても最後に見る顔が美人な人だったら悔いないよな。蒼汰みたいな、野郎の顔を見ても後悔しかない......んなことねぇか。看取ってもらえるだけで十分か。
......いやなんで俺はナチュラルに俺が死ぬ前提の話してんだよ。看取ってもらえるだけで......とか、今考えることとしては大分ふざけてんじゃねぇか。
えっと、まあつまり、レサさんのあの獲物を見つけた狩人の目はそれほど怖かったということです。多分、鉈もって背後に立つ女の子とか、手作りの料理に針仕掛ける女の子と同じくらい怖いと思う。
まあ、それ以降は見向きもされなかったんだけどな!なんという理不尽。この世界は実に理不尽だ。俺みたいにバカみたいに頭を回してても周りは理解を示さない。俺がその思考を自己完結で終わらせる故だ。自業自得じゃねぇか。
......忘れてたけど、俺が起きた瞬間のあの意味深な発言はなんなんだ?気になって夜しか眠れなくなっちゃうよ。
気づくと明兎が目覚めていたので、近づくと明兎は予想外の反応をした。
「なになになになに!?怖い!やめて!近づくなこの不審者!!」
......いっぺん比喩抜きに沈めたろかこいつ。こちとら心配で駆け寄ろうとしてるのによぉ。
額に青筋の分裂をさせていると、ロサさんが申し訳なさそうに俺に言ったきた。
「ごめんね?ちょっと困惑するかもだけど、すぐに元通りになるから。」
え~と、この事情を知っている感じ、ちょっと犯人がロサさんなんじゃないかと思えてきたんだが......
ロサさんを見ていると、突然視界が暗くなった。
なんだ?と思い、目元を覆ったそれを外してみてみると、サングラスだった。
後ろを振り向くと、知らん顔をしているレサさんがいた。
「あの、俺にサングラスかけました?」
一応聞いてみると、特に気にした様子もなく淡々と答える。
「知らん。上からでも振ってきたんだろ。」
なるほどね。上からちょうど振ってきて俺に装着されたわけか。最高だな。何が最高かは知らんけど。
まあ十中八九そんなことはないので、なぜかけたのかは知らんけど、レサさんがしたな。
とりあえずため息をついて明兎とロサさんの方を見てみると、なぜか明兎が倒れていた。それを見届けてから手に何かを持ったままこちらへと来るロサさん。
「おい待て、明兎に何した?明兎の状況によっちゃ容赦はしないぞ。」
少しばかり怒りを込めて言う。この時点で俺の中の疑心が確信に変わった。おそらく犯人はこの二人であると。いや、ルーナちゃん含めたら三人か。
俺が眼光鋭くしたことに腹が立ったのか、レサさんが俺をにらみ返す。なんかムカついたので、レサさんをそのまま睨み返していると......
「待って待って、落ち着いてクートくん。信じられないかもしれないけど、僕たちはソータが起きない理由を探ってるだけだから!」
そう言われたが、嘘としか思えないんだよな......明兎がまた眠ってしまう理由にもならないし。
「そんなこと言われてもな、本当にそうなら明兎が倒れた理由を聞こうか?」
俺が問うと、ロサは仕方ないとでもいうようにため息をついて隠していたものを取り出した。
それは注射器のような形をしており、中には黒っぽく赤い液体が中に入っていた。
「誤解なく言うと、私たちは吸血鬼族なの。記憶を探るために血をもらって、記憶を戻すために血をもらう必要があったんだ。」
......えっと?つまりそれはどういうことだ?
その後、ヴァンパイアについての説明とその特性はきいた。だが、少し納得できないところが。
「じゃあなんで明兎は倒れたんだ?血をその注射器みたいなので抜くだけじゃ倒れることはないだろ。」
指摘すると、ロサさんはレサさんになにやら視線を送る。
「はぁ。仕方ない。説明するとな、こりゃあ私が作ったもんだ。ただ血を抜くだけだと前後の記憶が鮮明な場合がある。だから、一度眠らせるために特殊なものを打ってから血を抜いているんだ。そのおかげで倒れる前後の記憶は曖昧になるってわけだ。」
ん~、なるほどねぇ。でもな、俺な、記憶がはっきりしてんのよ。俺が刺されたものもこれって分かったし。
「でもま、危険はないから気にするな。10分ぐらいで目覚める。お前は一回当たり5分も持たなかったが。どうなってんだ?」
俺に訊くなよ。開発者だろ?そこは把握しとけよ。とは言えず、首をかしげるのみに抑えておいた。
「だが、その話を信じるっていうのはまた違う。その話自体が嘘の可能性もあるからな。」
そう伝えると、なぜかロサさんとレサさんから笑みがこぼれた。俺が困惑していると、ロサさんが説明してくれる。
「いやね、笑っちゃってごめんだけど、ソータはあんまりそういう疑い方をしないからさ、ちょっと安心しちゃって。」
確かに。あいつ、あんまり人の話を疑わない節があるからな。
「それに、ソータの懐に入るチャンスなのにすでに懐に入ってる人を蹴落とすわけないじゃん。僕たちの信頼がなくなっちゃうよ。」
なるほど。そういうデメリットがあるわけか。そもそもこの家は蒼汰のマイハウスのようだし、デメリットになりそうなことはしないか。
それなら一応は信頼するか。常に疑って壁を作るより、一旦信じて協力する方が今この場では得策だしな。
何か横から物音がしたのでその方向を見ると、蒼汰が起き上がっていた。
どういうことだ?起きる方法が見つかったのか?
ロサさんにそう聞こうとして顔を向けようとした瞬間、蒼汰がつかみかかってきた。
「おい、今すぐ質問に答えろ。お前はどこの誰だ?」
蒼汰とは思えない、低い声で、脅すような鋭い眼光で俺をにらみつける。これにはロサさんとレサさんも驚愕していた。
「待て待て、落ち着け。蒼汰、俺だ。わかるか?」
蒼汰はそれを聞いて、少しだけ俺の胸ぐらをつかむ力を弱めた。俺はその様子に、困惑と恐怖を覚えることしかできなかった。
いかがでしたでしょうか?今回は、ロサとレサが記憶の確認をしていましたね。蒼汰が目覚めたということは、このどちらかが目覚める要因を作ったのでしょうが、一体何が原因だったのか......そして、様子のおかしい蒼汰は何があったのか?お楽しみに。
次回の投稿も来週の金曜日の予定です※都合上、遅れてしまう可能性があります。
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それでは、また次回お会いしましょう。