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ちょっと疑わしくない?

 楽しんでいただけたら幸いです。最後まで読んでみてください。


 さて、さっきまではのんきにおどけていたが、何しても蒼汰が起きないとなると、事情が変わってくる。昨日の再開を経ての今日だ。早速蒼汰と意思疎通ができないようだ。詰んだ。


 ......そんなことを言っている場合じゃない。とりあえず、明兎にもこのことを知らせねば。


 早速明兎を起こしに蒼汰の寝室に向かう。


「お~い、明兎起きろ~......」


 ドアを開けながらそう言って、ふと立ち止まる。そういやこいつ、起こしても起きないんだったわ。しゃあない。


 布団にくるまってる明兎を抱きかかえ、外まで行って日当たりのいいところに放置してみる。なるべく日焼けしないように布団を完全にかぶせたが、それで日焼けしてたら知らん。起きない方が悪い。


 しばらく明兎が焼けるのを眺めていると、布団がガバッと起き上がり、立ち上がってこちらへと向かってきた。


 少し油断していた俺だが、すぐに身構え、この後起こるであろうことに警戒する。


「おいこら空兎。何人が寝てる間、勝手に日光当ててんだ?え?」


 おっと、わりとマジ切れモードっすね。まあ、俺も明兎も日光に当たると灰になる吸血鬼タイプなんで、そうなるのも無理はないが。俺は自分のやらぬ試練を人に押し付けるんでな、代わりに克服してもらおうと思ったんだが、無理だったか。


 そんなことを考えているうちに、顔面を蹴っ飛ばされた。




 ......今日はやけに鼻へのダメージ数が多いな。そのうちティッシュ大量消費ブーム来そう。ってか、今までティッシュ見てないから、それはそれで詰みなんだが。


 とりあえずは一旦落ち着いた明兎は、蒼汰が起きない理由についてう~ん、と唸っていた。


 だが、いくら頭をひねっても出てくることはなく、


「一回息の根止めてアイテム使って復活させてみる?」


などとアホなことを抜かしやがった。


 ロサさんの明兎を見る目が若干俺のと似ていた。確かに、一回死なすっていう案は俺が出したからな。天丼してきたら胡乱げな眼差しになってしまうのも無理ない。


「それは冗談として置いといて、マジでどうすりゃいいんだよ......何しても起きないんじゃ、どうしようもねぇじゃん?」


 先ほどから何度も呟いてしまっている言葉だが、ホントにどうしようもないのだ。そうとしか言えない。


「......空兎~。死なすぞてめぇ。」


 うんうん、俺は殺しても死なないから......って、蒼汰がしゃべりやがった!?


 っと思ったら、どうやら寝言のようだ。なんだ、安心した......


 って、いい訳ねぇよ!?この寝言のせいで、明兎とロサさんに変な視線向けられたし。いや、明兎、お前は俺の味方しろよ。まあ俺が敵に回したんだけども。


「とりあえずお姉ちゃんとリアンちゃんを起こしてみるかな~。ルーナ、お姉ちゃん起こしてきて~。僕はリアンちゃんを起こしてくるよ。」


「わかった~。」


 そう言い残して二人はリビングから消えていった。そして、この後二人の姿を見たものはいないという......なんて、意味深そうで対して......いやむしろ脳死で脳内にぶちまけたセリフで、後々のたうち回るということになりかねない、ある意味危険な言葉が頭に浮かんでしまった。ふっ、どうやらそれよりも危険なのはこんな思考回路をしている俺の方だろうな。


 ......王子の目覚めのキスって、男同士でも意味があるのだろうか......


 またしても脊髄を通さず考えごとをしていると、明兎がこんな提案をする。


「ねえ、私のスキルを使えば起きるってことはないかな?ほら、割とご都合的なスキルじゃん?」


 たしかに。ワンチャンあるな。幸い、ここにスマホが......


 あれ?充電がねぇ。どういうことだ?


「み、明兎...?スマホの電源が入らないんだが......」


「あ.....この前推し成分を補給しようと、スクショ眺めてたら......寝落...ちしちゃってたね。」


「バカがぁぁぁぁ!!どうすんだよ!これからスキル使えないってなったら。」


「まぁまぁ、どうせいつかは充電なくなるんだし、それが早く来たってだけで、仕方ないよ。」


 むぅ?まぁたしかし。だがしかし、そんな言葉で


「責任から逃れようとしてんじゃねぇぞ!!俺をそんな容易い言葉で丸め込めるわけねぇだろ!?もう少し巧い言葉を使ってだな......」


「検索履歴。」


 あっれ、おかしいな。幻聴だったかもしれん。


「なんて?」


「検索履歴。空兎の性癖開示。」


「え、なんか増えて......」


「検索履歴。空兎の性癖開示。とあるサイトの購入履歴。その統計。あるけど?」


「すみませんでした。」


 くっそ、もう少し管理を徹底的に行うべきだった.....こんなところでそんなカード出されるとは。ババ抜きで最後の二択を外した気分だ。


 だがしかし、俺にも秘策がある!!


「そんなこというなら、俺もお前の検索履歴知ってるぞ!」


「えっ、きっしょ。」


 ふぐぅっ......シンプルなローテンション悪口。とてつもないカウンターじゃねぇか。まるでババ抜きの最後の二択がどっちもジョーカーだったみたいな。......よくわかんねぇなこの例え。


「まぁまぁ、この話題は置いといて、明兎のスキルをどう発動するかなんだよな.....」


「え、普通にレサさんかロサさんに空兎が土下座して紙もらえばいいじゃん。」


「落ち着けよマイシスター。俺ごときの土下座、紙一枚よりも価値は低いぞ?見たか?ロサさんの俺に対して何も感じてないような目。一級フラグ建築士と言われた俺でも建てることのできない大きな壁がそこに詰まってるんだ。」


「いや、それ単純に空兎が卑屈というか、ネガティブなだけじゃ.....」


「ノンノン、この俺がネガティブなわけないだろ?俺はいつだってスーパー......いや、ハイパーポジティブだぜっ。」


 さて、こんな会話しているが、このまま蒼汰が起きなかったらどうしよう......俺たちが昨日来たって言う理由で、ここから追い出され、行く当てもなく、元の世界に帰る手がかりすら見つからず、そのまま行き倒れて、雪の降る極寒の地で倒れ伏すんだろうな......疑われるだけだし、俺に生きてる価値あるのか怪しく思えてきた。唯一見えた希望も羽虫のごとく、もろいものだったしな......


「変な妄想してるところ言わせてもらうけど、勝手にその妄想に私を含めないでね?」


 後ろからのドスにドスッと突き刺されてしまった。いっそこのまま首も掻っ切ってくれ。


 はい、終わり。ホントにネガティブになったと思っただろ?残念だったなぁ!!ネガティブムーブをかましてそういうキャラだと勘違いさせてからのどんでん返しだぁ。どうだ驚いたか?


 ......俺は一人で何してるんだろうか。っぱ、ツッコミって大事だね。それがないとただの頭おかしい常人に見えてしまう。


 まぁ、ネジなんてとっくに擦り切れてるんで、正常なパーツはガッタガタ揺れて外れそうなんだけども、どうでもいいんで無視しましょ。あとのことは整備を怠った理性に丸投げってことで。


 理性ありきでこの思考力なんだけど。天才じゃん。


 そろそろ一人芝居も閉幕じゃ。帰りは足元に気をつけて怪我せぬように帰るんじゃぞ。


 俺の脳内に住み着くどこかの博士が言わなそうなセリフが流れる。このあとに流れるものと言えば、俺自身。漂着するぜ。


「明兎、無人島に何か一つ持ってくとしたら何持っていく?」


「急に何?普通に日本でも持っていくけど。」


 かぁーっ。このイかれた回答。さすがは俺の妹ですわ。ちなみに俺は、燃料の心配がない豪華客船な。食料なんて乗ってないし、運転なんてできないが、快適に暮らしたいしな。


 んなこたぁどうでもいい。ほんっとにどうでもいい。どれぐらいどうでもいいかというと、どこの誰かも知らん芸能人が不倫したとか何とかで騒いでる奴らを眺めるぐらいどうでもいい。そんなん好きにさせとけよ。関係ねぇだろ。


 話が脱線しまくって、もはや暴走列車と化しているが、元々はどんな話だったんだっけ?忘れちまったな。あれだ、田舎の駅は日に数本しか来ないから、乗る電車間違えると終わるのと一緒よ。本題見失うと終わりって話。


 蒼汰の起きない原因ね......どうせ誰かのスキルとかだろ?継続的に効果をかけれて、都合よく俺たちが来たタイミングで、ずっと眠らせることができそうなスキルでしょ?


 ......うん、圧倒的に明兎が怪しくなっちまう。しかも、俺がベッドから蹴落とされてないことを考えると、夜中起きた可能性が高いんだよなぁ。


 あやつは8時間睡眠のうち、6時間経過すると、近くの物を蹴っ飛ばす習性があるのだ。知らんけど。


 そこはどうでもいい。どれくらいどうでもいいかというと、たった今湿気を帯びた、ヘニャッヘニャのエリンギの天丼くらいどうでもいい。個人の感想です。エリンギは嫌いじゃありません。嘘です。エリンギめっちゃ好きです。美味い×MAXです。


 それこそどうでもいい話なのだが、このままじゃ不味いんだよな。疑われると圧倒的に数的不利の得点を稼いでしまう。そのうえ、明兎はおそらくまだお怒りモードだ。こりゃオウンゴールを決めにかかるな。


 となると、その前に犯人特定をしなければいけないわけだが、如何せん、そのような手掛かりは一切ない。


 どんなに手を汚してても証拠は捏造するくらいには重要なものなんだが、この場で捏造なんざできないので、嘘八百まき散らしても、鎖で首をギリギリと万力で限界まで締め上げるのと同義だ。


 それはやめておいた方がいいなんて、誰でもわかる。


 そもそも後ろめたいことなんてないのに、勝手にプレッシャー感じて変にしでかしたら、それこそ犯人の思うツボだ。まあ、蒼汰がめちゃくちゃ疲れてて、めちゃくちゃ熟睡してるって言う可能性は捨てきれないが。


 にしても、証拠ねぇ.....それこそ物的証拠でなくても、映像的証拠でもあれば......


 ......あるじゃんね。確かにあるわ。あるじゃねぇかバカがよ!


 とりあえず、スキルを開き、昨日の深夜からのこの部屋の記録を遡ってから見る。万が一迷子になった時にここをとってたんだぜ?さすがだろ?まあ、昨日蒼汰をキッチンに送ったんだけど。


 早送りで見てみるが、特にこれといった変な部分は見つからない。


 しかし、映像を見ていると、少し違和感があった。一瞬だけノイズが走ったのだ。


 なるほど、映像を再生してるのに時間が逆戻りしなかった原因もそれか。なるほど。そっちの方が楽だったんだが、よく考えたら、それにも条件がありそうだよな。1分以内ならそれが可能みたいな。


 しっかし、このノイズが明らか怪しい。これをみんなに見せれば何か分かったり......?


 あ、いっけね!俺以外この画面見えないんだった!道理でさっきから明兎がバケモンを見るみたいな目で俺を見てるわけだ。傍から見てると俺ぁ完全に不審者でしかないからな。


「空兎、さっきから百面相大会してるけど、私にもやってほしいの?」


 おっと、この不審者にも興味を持ってくれるとは。さすがは我が妹。不審者にも優しくできる優等生だ。そのうち野生のロリコンを捕まえなきゃいいが.....


「言っておくけど、やれとか言ったら潰すからね?色々と。」


 あっ、えっ、うん。えと、目がマジなのはやめてもらえます?俺が敬語になるのは本気でビビってるときなので、はい。こいつはやると言ったらやる。めんどくさがりを気取ってる俺以上の逸材だ。


 ん~、でもなぁ外傷もないし、誰かに襲われたとかってわけじゃなさそうなんだよ...な......待て、襲われた?違和感がある。先ほどの映像をも一回現在から巻き戻そう。


 今日の、俺とルーナちゃんに出ててほしいと言われたときのロサさんの行動だ。そのときに何らかの力で起き上がることのできない体にされてしまったのではないだろうか。


 映像を見てみると、ロサさんは少しの間蒼汰に声をかけながら揺さぶっていたが、何を思ったのか、首筋に噛みついていた。いや、これは首を吸ってる.....?まさか、キスマークでもつけようってのか?マイシスターの道を塞ぐために?


 んなわけねぇか。でも、それ以上にまともな解釈できねぇよ.....吸血鬼じゃあるまいし。さっきもほら、日光に当たってたけど、灰になってなかったし。


「何かいい案思いついた?」


 突然背後から声を掛けられ、体を跳ねあがらせてしまった。むしろ飛び跳ねてたと思う。明兎が爆笑してるし。間違いない。


「いい、いや、ととと、特にはなに...も?」


 よし、動揺は隠せた。というか、俺の背後に気付かれずに立つとは。やるな。気配を消せるのか。


 あれ?ホントに吸血鬼とかじゃないよね?条件割とそろってる気がするんだけど。



 いかがでしたでしょうか?今回は、空兎が暴れ倒していましたね。こんな騒がしい頭の中をしている彼ですが、こう見えてかなり蒼汰を心配してます。多分。蒼汰が起きるまでは基本的に空兎の視点になるので、ご了承ください。


 次回の投稿も来週の金曜日の予定です※都合上、遅れてしまう可能性があります。


 面白いと感じたら、ブックマークや評価をぜひ、よろしく願いします!モチベーションや、物語の流れにもにつながるので!


 それでは、また次回お会いしましょう。


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