ねぇ、寝すぎじゃない?
楽しんでいただけたら幸いです。最後まで読んでみてください。
......まぶしい。てか暑い。なんでこんな日当たりいいんだよ!
起きて早々こんなことを考えちまうってことは、俺ぁもうダメだ。このまま引きこもりへとシフトチェンジして、そのままスピード違反で人生終了だな(?)
というか、首も背中もいてぇ。一応俺の下を確認すると、フカフカのままのベッドがあったため、奇跡的に明兎に落とされておらず、俺自身も転げ落ちていなかったようだ。だが、それでもやはりこうも狭いと、体がほとんど動かせないから色んなところ痛くなるんだよな......
まぁ、この問題はまた後で考えるとして、明兎が起きる前にここを出ますか。
そう思って布団から出ようと起き上がる。
しかし、俺の体にかかる重力が普段の5倍くらいあり、すぐに頭を枕に縫い付けられてしまう。
そのまま瞼にまで重りがぶら下がり始め、強制的に目を閉じられてしまう。
日差しがまぶしいので、明兎が巻き取ってる布団を奪い、頭からかぶる。多少暑いが、まあ、平穏なゴールドスリープ(俺命名)を開始できるなら安いものだ。
しばらく目を瞑っていると、目の前で「ぅん......」というような小さいうめき声のようなものが聞こえたと思ったら、俺の顔にほんのりわずかに風が当たる。
突然当たり始めたことに驚き、目をうっすらと開けてみると、我が妹がポップコーン3粒くらいを縦に並べたくらいの距離へと近づいてきていた。
一歩間違えれば顔に顔が触れてしまいそうだ。というか、こいつの寝顔、こんな近くで見たの初めてだな。えっと、小学生低学年くらいの頃と、ここ最近だとホラー映画を見た後か。初めてじゃねぇわ。
それはそうと、さすが俺の血族。遠目で見ても美人の部類だが、近くで見るとそこそこだな。気持ちよさそうにスヤスヤ寝てるのも可愛いな。
これが俺の褒めつつディスっていくスタァイル。なお、口に出すことはしない模様。
ここまで近いと、眠りにくいので、明兎との距離を取ることにする。
布団を頭の位置辺りまで持ってきて、布団を小さく丸めると、そのまま明兎に押し付けてベッドの余白に頭の位置をずらし、そのずれた頭に合わせるように体を押し込んだ。
こうすることで、俺と明兎の距離も確保できて、俺の場所も確保できて一石二鳥だな。誰に何と言われようと、俺はここを譲らない!今までに明兎に蹴っ飛ばされたことを思えば、これも全然甘いものなんだよ。
さて、ここまでやっておいてなんだが、完全に目が覚めてしまった。先ほどの重りも、俺のまぶたがボディービルダー化してしまったことによって、意味をなさなくなってしまった。
仕方ない。起きるか。
俺は起き上がってベッドから降りると、ベッドの真ん中に明兎の位置を調整して、そのまま布団をかぶせて寝かせた。顔への日当たりは抜群だが、日の光に当たって悪いことはあんまり......いや、多少なりとも......いやでも......まあ、大体問題はなさそうなので、明兎を起こしてしまわぬよう、忍び足で部屋を出る。
正直なところ、忍び足になるまでもなく、普通に出ても明兎は起きないのだが、兄貴のささやかな心遣いってことで。
......むしろそうしてくれ。早朝に家族のだれにも起きたことを悟られぬよう、鍛え上げた忍び足が癖になってしまっている。断じて、そこにやましい理由などない。ないったらないのだ。あるときもあるけど。ないよ。本当だよ?
誰に言い訳するでもなく、心の中で並べ立て、特に何も考えず、リビングへと行く。
入ると、ソファーで蒼汰が寝ていた。まあ、昨日から結構大変そうだったし、疲れてたんだろうな......えっ、じゃあベッドで蒼汰が寝た方がよかったんじゃ......
......蒼汰が強引に寝かせたし、俺のせいじゃないな。
んで、今暇だから......ちょっとだけこの周辺を見て回ろうかな。
外へと出ると、心地のいい、ヒンヤリとした朝特有の空気感だった。
もうね、この空気大好物よ?深呼吸するだけで脳がクリアになるこの感じ。いいね。
......よし、今からこの周辺を回ってみるか。そこら中にスキルで移動できるポイントつくっとこ。移動したいとか言った時が楽だしね。
周辺を回ると、目印となりそうなところとして、湖だか池だか判別のつきにくい大きさの水だまりがあったのと、そのすぐ近くにカラフルな石どもが大量に湧いてる洞窟みたいなところがあっただけだな。
とりあえず、カラフルな石どもは見た目からして、ちょっと有害な物質が含まれてそうなので、無色透明な石だけ拾っとく。
一応言っとくぞ?一応蒼汰の部屋で見たのがこれと似てたから持って帰るだけだぞ?ここで石取ってんのかなって思ってね。
石を拾ったので、そのまま帰ろうと思ったが、よく考えたらここは異世界だ。こんな光あふれる空間の中に虹色の石とかあってもおかしくない。
そういうレアな感じの鉱石も探してみようかな。まあ、あってもピッケルないんで埋まってたら無理っすね。できれば鉄ピッケルが欲しい。大体掘れそう。
半分目がイかれた状態で、血眼になり少しも見逃さないように探してみる。
結果的に見つかりはしなかったが、なにやら、地下へと続く扉があった。好奇心から入ってみたいが、危険かもしれないので、やめておく。
どうせ行くんだったら蒼汰とか明兎と入った方がいい。絶対ではないだろうが、人数が多い方が心強い。
さて、周辺の探索も済んだし戻りますか。腹減ってきたし。
家に戻ると、昨日見たルーナちゃんだっけ?と、昨日は見ていない人を見かけた。いや、見かけた気はするが、正直、顔と名前を覚えるのがあまり得意でない俺としてはわからない。というか、髪の色が違うし多分俺が思ってる人とは違うんだろうな......美人系の顔立ちしてる。故に頭の中で少しバグが起きてる。
ソファーを見ると、蒼汰はまだ寝ていた。
「あ、名前って、たしかクートだったよね?」
鮮やかな赤の髪色をした人がきいてくる。面識あるのか?いや、昨日会ってない気がするけど......会った気もするけど
「えっと、そうです.....けど.....あなたは?」
いやでも、俺の名前を知ってるってことは、やっぱ昨日会ってるのか......?ってか、やべっ。陰キャモードの片鱗が出てきちゃった。
「え?僕はロサだけど。」
不思議そうに相手は答えた。俺がこう訊くこと自体が不思議だとでもいう様子だ。
自分でも分かるほど、俺の顔が懐疑的なものになってたと思う。というか、俺の表情筋がマッスルポーズしてるので間違いない。
そのまま固まっていると、ロサとやらは何かを納得したようにポンと手を打った。
「そういえば話してなかったね。僕とお姉ちゃん......レサは定期的に目と髪の毛の色が変わるんだ。顔を覚えてなかったみたいだけど、これから覚えてもらえると助かるかなっ!」
......そういうことね。どういう原理かは知らんけど、この脳内バグに関しての納得はできたわ。んで、この流れでいくと、レサというのは、昨日見た、目つきが悪い眼鏡をかけた人ってことね。言い方悪いな。
「ねぇねぇ、こうすればソータが絶対起きるみたいなこと知らない?」
一人納得して頷いていると、ロサさんがきいてくる。
蒼汰が起きる方法か......コチョコチョ苦手だけど、起きてるときに限るからな。一つ思いつくとしたら......
「多分呼吸止めたら起きるんじゃないか?生命の危機的なやつで。」
いや、冗談にしちゃ面白くねぇ。証拠にほら、ルーナちゃんとロサさんがジト目になってる。引かないだけ幸いだな。
「まあ、ちゃんと言うと、シンプルに揺さぶってたら起きるぞこいつは。どれだけ熟睡してても少し揺らしたら起きるからな。それを朝3時くらいにやってブ千切れられたしな。今だったら怒ることはないと思うけど。」
「でもねぇ、さっきからそうしてるのに起きないんだよ~。」
困ったように言ってロサさんは蒼汰を指さす。たしかに、ルーナちゃんが結構揺さぶってるわ。ソファーから落ちそうだ。あんな可愛い幼女に起こしてもらえるなんて、なんて羨まし......羨望の眼差し向けたくなるわ。許すまじ。許すけど。俺の許しもいらないんだけど。
まあ、幼女に起こされたことなんて、お互い小さいころに、明兎に何回か起こしてもらったくらいだからな......そう考えると、やっぱり可愛げなくなっちまったな。いや、あれはあれで......無理だ。ポジティブにとらえられねぇ。
というか、話が脱線しすぎてるせいで、事故って修繕が厳しい状況になってますなぁ。
そうだそうだ。蒼汰を起こす方法ね。これで起きないなら、もうお手上げっすね。
それを伝えると、ロサさんは、何かを考えるように腕を組み、首をひねり始めた。
「呼吸はしてるし、起きないにしても、普段見る感じからもこれで起きないなんてことは......普段と違うこと......あっ」
どうやら何か思いついたようだ。
ロサさんはルーナちゃんを俺に預けた。
「クートさん、ルーナを預かってここから離れておいてください。」
え?なんで?と思うより先に、ルーナちゃんがこちらに来た。とりあえず言われるがまま、リビングから出たが、冷静に考えると、色々怪しい。
小さい子に見せられず、二人きりですること......?そんなん一つしか......っていうか、普段と違うこととか言ってたよな?ってことは毎朝ソレをしてもらってるってことなのか?
う~む、異世界に来て久々に親友と再会した思ったら、リア充化してるって、なんとも言えない気持ちになっちまうな。
そっと覗いてみようかな......そう思ってドアの隙間を覗こうとすると、ルーナちゃんに手を引かれた。
「クート、ダメだよ。ロサお姉ちゃんが私にダメって言ってたから。」
そうかぁ。じゃああきらめるかぁ。ルーナちゃんに手を掴まれてるなら何もできないしなぁ。
ドアから離れようとすると、ドアがガッと開き、鼻に直撃した。
鼻からの鈍い衝撃に、鼻血が出てるんじゃないかと心配になって、鼻の下あたりを押さえるが、鼻血は出てない、大丈夫だ。
一番ダメージ受けたのは、こんな攻撃されてここの誰からも心配されないってことだな。結構あるあるなのか?
でも、出てきたロサさんの表情を見るに、そんなことも言ってられないみたいだ。
「ねぇ、ソータが何しても起きない!」
おっと、それは重症とか言うレベルじゃねぇ。蒼汰の身に何かあった説があるぞ?昨日の今日でこれかよ。起こす気で起こして起きないのは、熟睡って言葉じゃ片づけられなさそうだしな。
いかがでしたでしょうか?今回は、蒼汰に何かがあったみたいで、空兎からの視点となりました。蒼汰が起きない原因は、前回の蒼汰の無限に続く夢とも関係があるようです。そして、空兎視点で見ると、意外と面白いことになりそうですね。ひねくれた見方してそう(偏見)
次回の投稿も来週の金曜日の予定です※都合上、遅れてしまう可能性があります。
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それでは、また次回お会いしましょう。




