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夢か、夢じゃないか、夢なのか......

 楽しんでいただけたら幸いです。最後まで読んでみてください。


 .........眠い。目が覚めているのは分かる。だが、このまままだ眠っていたい。瞼の裏に映る光の色はまだ暗い。もう少し眠っていても大丈夫だろう。


 だが、しばらくの間目を瞑っていても睡魔は襲ってこない。いや、瞼と俺の気分に襲い掛かってきてるだけで、体は狙われてないようだ。


 ......なんか、この言い方よくねえな。まあいいか。


 どうしようかな......このまま起きるか、もう少し粘ってみて、もう一回寝れるか試すか......こんな思考をしている時点で頭は働いているのだが、まあ、俺は後者を選ぶことにした。瞼が重かったら結構肉体的にもきつく感じるしな。


 しかし、少し体が凝り固まっている。少し寝返りを......としたところで、腕が床に触れた。


 そういやソファーで寝てたんだったな。このまま寝返りしても落ちるだけだし、体を回転させるか。


 目を瞑ったままほんの少し体を浮かせると、俺の上にあるわずかな重量を感じる。


 それが気になり、手で触れると、手のひらがフワッとしたものに包まれる。


 ふぅむ、実にツヤフワだ。ずっとモフッていたい。というか、この毛の感じはファイガだな。まだ毛が細くて柔らかい。そしてあったかい。


 一応ちょうど腰の位置にファイガは陣取っているのだが、俺の足元と胸元にも誰かが乗っている感覚がある。


 多分、ビーンとリーズだろう。試しに胸元へと手を持っていけば、綿のようなものに深く沈みこんだ。暖かい。朝方だからか、この温度も中々良いものに感じる。


 残念ながら、この状態じゃ足元のビーンには手が届かないため、ビーンに触れるのはあきらめる。


 起きるにしても、この状況じゃ起き上がれないな。うん、もう一回寝ること確定だね。


 寝返りできないのは少しだけきついけど、これだったらむしろ癒されるからな。むしろプラスだ。


 腕を楽な場所に持っていくと、ちょうどファイガの体の上だったので、このモフフワを手のひらで堪能しながら眠ることにする。



 ......ずっと目を瞑っているはずなのに眠れない。体感30分は過ぎたぞ?


 仕方ない。そろそろ起きるか。もう少しこの暖かさを堪能していたいが、起きねば。やることがたくさんある。


 俺は目を開けて上に乗っている動物たちをそっとどかそうとした。


 しかし、俺の目に信じられないものが飛び込んできた。


 俺の上でモルとセクが寝ていたのだ。


 ちょっと目がおかしいのかと思って何度も瞬きするが、その姿は変わらずだ。だが、数回瞬きすると窓の外が急に昼のように明るくなった。


「ふへへへへ......」


 モルが妙な笑い声を寝ながら発してるんだが。


 とりあえず二人をどかそうと、手を動かそうとすると、手が動かない。見ると、手が氷漬けにされていた。


 そして俺がそれに気づいたことで、そのまま腕を伝って首元まで氷が到来し......



「ハッッッ!!!」


 口から洩れた音が自分の鼓膜を叩く。心臓の鼓動がやけに速い。その原因は言わずもがな、先ほどの夢である。


 外を見ると、柔らかい朝の陽ざしが窓から差し込んでいた。


 また、自分の体を見下ろすと、服に毛がたくさんついていたので、夜中に感じた、ファイガ、リーズ、ビーンが俺の上で寝てたのは確かなのだろう。


 となると、夢の中の記憶は目を開けた辺りからか。なんでまた、こんな変な夢を見るんだろうか。そもそも夢の内容として、モルとセクが俺の上で寝てたのが謎だが。


 その上で夢の中で寝ぼけたモルに凍らせられるって、意味が分かんねぇよ。


『まあ、たまにモルさんが寝ぼけて俺を凍らせようとしてくることは確かだしな。』


 そんなことを考えていると、セクが小声で俺に言ってきた。


 まあ、これには俺も何となくそうなのかな?とは思っていた。モルと会った時も俺の上で寝て凍らされそうになったし。というか、セクは何で小声なんだ?


『まあ、今モルさんが寝ていてな。もしもここで大きな音を立てて起こしたら、とてつもなく不機嫌になることが多いんだ。特に最近は寝不足気味のようだしな。』


 なるほど?え、モルが寝不足気味なのはなぜ?


『後学のためにと、ソータくんの記憶にある知識から学びを得ようとしててな、かなり長い時間向き合っているぞ。』


 へぇー。意外とモルって学びに対して意欲的なんだ。ちなみに、なんの勉強してるかわかる?


『なにかを参考にしながら熱心に絵を描いているな。前に自分もこのような絵が描きたい、と呟いていたのを聞いたが......あいにく、俺には絵のことはよくわからないからな......モルさんが上達してるかどうかぐらいしかわからないな。』


 なるほどねぇ......まあ、やりたいこととかできることが増えるのはいいことだよ。でも、増やしすぎて一つにかける時間が短くなりすぎても、本当にやりたいことがやりたいタイミングで出来ないからね。


 とはいっても、俺はゲームするかアニメ見るか、ラノベ読むくらいしかしてこなかったけど。今自分で言ってて気づいたけど、全然時間が足りてなかった気がする。


 あと、のめり込みすぎて現実でのモチベーションがなかったから、そこも注意してた方がいいな。適度な休憩は大事だからね?今言った理由もそうだけど、あんまり一度にする時間を多くしてもすぐに飽きが来るだけだし。


『まあ、モルさんにもこのことを言っておくか。気づいたらそうなりそうだからな。』


 そうそう、いろんなことに興味を持つのはいいことだけど、飽きやすかったら全部中途半端で結局何もしてないのと変わらないからね。その点は、俺もそんな節があるから気をつけないといけないところなんだけど。


 自分で言っていて反省を繰り返し、結局その反省は何にも活かされることがない、俺の悪いところだ。だが、この反省すらも忘れるからこう考えていることすらも意味ないのかもしれないけど。


 何かに残さない限り、言葉も思考も消えていくからな......記憶なんて結構そんなもんなんだよな......大事なことさえ忘れることがあるっていう欠点を抱えてるのに。


 たまに直前までやろうとしてたことも忘れるくらいだし、いちいち気にしてもられないんだろうな。


 実際ほら、今から何しようか忘れたし。結局ソファーから立ち上がっただけっていうね。


 ......とりあえず、顔洗ってから何するか考えるか。


 もう、そうしようとしてたということにして、家の近くにある川に向かう。


 顔を洗って気分的にも身体的にもさっぱりしたところで、顔を拭こうとしたら、にじんだ視界の先に何か動く影があるのが見えた。


 咄嗟に顔を拭いて見てみると、そこにはリアンがいた。


 なんでそんなことをしているか分からないが、しゃがんで水を指でつついている。


「何してるの?」


 俺が声をかけると、リアンは顔も上げず答える。


「水を操れるかもしれないので。今の水の温度は体感5度くらいです。冷たいけど、夏場の暑い時期に飲むなら結構嬉しい温度。これも天然水ってことでいいですよね?」


 ......ダメだ。何が言いたいのか、さっぱりわからん。せめて話の筋を通してくれ。水に関する話をしてるってことしかわからん。


「ちょっと待て、結局何が言いたいんだ?話の方向性が辛うじて分かるくらいだ。」


 俺がそういうと、仕方がないとばかりにため息をついてゆっくりと立ち上がる。


「水で人って死にますか?」


 突然の質問に若干混乱するも、すぐに答える。


「そりゃ簡単に死ぬね。溺れたり押しつぶされたり。え、急に何でそんなことを聞いたの?」


 戸惑い気味に質問を返すと、リアンは表情に陰を落とす。


「......おかしな話ですよね。簡単に命を奪えるものが生きるために必ず必要なものだって。」


「どういうこと?」


「人もそうです。人は恨み合って、時にはその恨みも爆発して......そんなのは嫌なのに私たちは他の人がいないと生きていくことができない。この世界に来た時のあの変な集団だって、誰かからの助けがないと生きていけない。」


 え、急に何の話?聞きたいが、ここはこらえて静かにその話を聞く。


「だけど盲目的になると、その事実すら忘れて殻に閉じこもるときもある。人を閉じ込めるときもある。陰湿ですよね......こう思うと、自分で狩りをして生きていく野生動物たちの生活の方がよっぽどよいのではないでしょうか?」


 まあ、自分が気に食わないとそいつをいじめる奴がいるが、確かに生きるのに余裕があるから起こることではあるのかな?そうでもないかもしれん。そこら辺はよくわからん。


「ま、あなたがどう考えていようが、私はそう思います。なので、少し手伝ってもらいたいことがあるのですが、いいでしょうか?」


 う~ん、話のつながりが分からないけど、聞くだけ聞こうか。


「昨日見えた、氷の力で私を凍らせてくれませんか?」


 え、なんで?


 そう思う間もなく、気づけば背後から熱を感じた。


 振り向くと、家含め森が燃えている。もう、何かを考えることができなくなり、ただ呆然とそれを見つめる。


 すると、耳元で声が聞こえた。


「許してください。私って、悪い子なんですから。」


 世界が暗転した。



「ハッッッ!!!」


 ......なんだ、夢か。ああいうのを明晰夢っていうんだっけ?意識は完全にあって現実のように感じる夢を。


 服を見ると、そこにファイガたちの毛が付着していた様子がなく、夢の中で夢を見ていたと感じさせられた。


 もう、どこまで夢かわかんねえな。どの記憶が正しいのかわからん。そもそも、この今の状況すらも夢だと感じてしまう。


 まあ、さすがに三度目の目覚めだし、もうこういうことはないだろ。


 朝飯作るか。


 川で顔を洗ってキッチンへと向かう途中、起きてきたのか空兎と鉢合わせた。


「おお、蒼汰おはよう。」


「おはよう。よく眠れた?」


 何気なくそんな質問をすると、驚きの答えが返ってきた。


「ああ、明兎がいい抱き枕でな。ベッドの上から落とされるかと思ったんだけど、意外とそんな感じでもなくてさ。快適だったよ?」


 ......おかしい。明らかにおかしい。昨日あれほど喧嘩してたのに、こんなに上機嫌であるということがありえない。


 そもそも、こいつがあんな狭いベッドで二人で寝て落ちないわけがねぇ。


 確信した。こいつもまた明晰夢であると。これは明らかに違和感でしかねぇ。いや、でもああ見えて仲はいいからな。


 ただ、普段が売り言葉に買い言葉ってだけで。


 ああ見えて空兎はブラコンなところあるからな......わりかし明兎の前じゃないからとかは......いやないな。修学旅行のとき部屋一緒だったけど、愚痴しか言ってなかったわ。


 ってことで、こいつぁ偽物だぁ!!


 ......どうすればこの明晰夢から覚めるんだろ?


 ええと、一回目はモルに凍らされかけて。二回目はここら一帯が燃えて。


 じゃあ三回目は......


 そう考えているところで、突如強い衝撃が頬に走った。


「おい、無視すんなって。それとも無理に俺と仲良くしてるフリでもしてんのか?」


 どうやら俺は空兎に殴られたらしい。言われた内容にも腹が立つ。無理してるわけねえだろ。


 空兎につかみかかるが、それ以上何かできることはない。


 代わりに再び頬に衝撃が走る。


 更にもう一度頬への衝撃が発生したところで、目の前でフラッシュを焚かれたみたいに白く染まっていった。



「ハッッッ!!!」


 夢か。なんど夢の中で目覚めるんだろうか。さすがに、もう現実......だよな?


 起き上がって周囲を確認すると、ロサがドアの前に立っていた。


「ソータおはよ。」


「あ、おはよ。」


 挨拶を交わす。


「今日は何するつもりなの?」


「今日は......まあ今からは飯を作るかな。」


「ふ~ん。あ、じゃあ僕は手伝おうかな?」


 興味なさげにそっぽを向いてそう言う。口では言いつつ、手伝う気はないらしい。


 どうやら、まだ夢の中からは抜け出せていないようだ。



 いかがでしたでしょうか?今回は、蒼汰が不思議な体験をしていましたね。はたして、これがこれからの物語にどうつながっていくのか?お楽しみに。


 ちなみに、たまにわけのわからんことを言っている夢を見ることがあるんですけど、そういう夢に限って強く記憶に残るってことあるあるですかね?


 次回の投稿も来週の金曜日の予定です※都合上、遅れてしまう可能性があります。


 面白いと感じたら、ブックマークや評価をぜひ、よろしく願いします!モチベーションや、物語の流れにもにつながるので!


 それでは、また次回お会いしましょう。


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