待て、何かがおかしい
楽しんでいただけたら幸いです。最後まで読んでみてください。
俺は空兎からの話を聞き、少し違和感があることに気がつく。
俺はエルスさんにこの世界に送ってもらったわけで、その時にスキルを一ついくつかの候補から選ぶことができていた。
しかし、空兎と明兎は自分で選ぶことができていない。しかも、仮にリアンも二人と似たような経緯でここに来たのだとすれば、余計に三人がこの世界に来た理由が分からない。
三人の話の共通点としてわかることは、三人とも、気が付けば何かの教会の中にいたということかな。おそらく、王城の中で出会った組織が関係しているのだろう。
仮にそうだとしても、現状、空兎たちを元の世界に帰す手段はわからない。これは、なんとかして見つけないとな。
「それはそうと、さっきから思ってたんだが、そちらにいる人たちは?」
空兎は後ろのロサたち五人を指した。
一応、各々で自己紹介してもらったが、リアンはやはり、俺の時と同様、よくわからない質問をしている。
「たけのこときのこ、どっちが好きですか?」
「俺たけのこ~。」
「じゃあ私きのこ~。」
「では、私は人参です。」
「え、何で?」
「え、煮しめに入ってるじゃないですか。」
「あ~、そういうことね。」
多分、リアンは西日本出身だな。うん。というか、なんの戸惑いもなく会話が成立で来ているのが謎だ。
......よく考えたら、あんまし成立してねぇな。
一通りリアンの質問が終わると、空兎は俺に耳打ちする。
「ねえねえ、この世界って、ケモミミとかエルフとか、合法ロリとかいるの?まだ見たことなくてさ。いないのかなって思って。」
え~と、こいつの欲望全開の、下心丸見えの質問ってことでオケ?まあ、こいつの性癖は悲しいことに、割と知ってるから今更引いたりはしないが。
.........こいつの言ったの全員いるな。人型になれる狼のケモミミと、エルフと鬼のハーフと、合法ロリは......まぁいるな。でも、思い浮かべるのはやめておこう。
『なんじゃ?喧嘩売っておるか?』
いや、別にモルとは言ってないから。いやホントに。
......足先だけ冷やすのやめて?奇妙な感覚になるから。
まあ、いずれにせよ、空兎にいることだけ伝えるのが無難だろ。仮にここにいると伝えたら、どんな反応するのか分からないし。
「多分いるよ。だけど、あんまり口にしないようにな?お前の妹がとんでもない表情でお前を見てるぞ。」
空兎に話をしながら、聞こえてたのか、明兎が空兎を軽く睨みつけていた。
「大丈夫だって。明兎はいつもそういう扱いしかしてこないから。」
「おい、変なフラグ立てようとするな。そのまま行くと、誰にも相手にされなくなるかもしれんぞ?どんな感じで話ってのは広まるのかわからないし............痛いほどわかってるだろ?」
過去の出来事を思い出したのか、少し苦い顔をしてからゆっくりと頷いた。
「まあ、そういう話は男だけの時にするのがいいだろ。今まだ帰ってきてないけど、もう一人仲間がいるから。」
まあディガがそういう話に乗るかどうかは分からないけどな。
とりあえず、この場での話は終わったが、少し困ったことがある。
部屋、どうしよう?とりあえず、空兎と明兎は俺の部屋でいいとして、リアンだよなぁ......場所がねぇな。どうしようか......
「どうしたの?何か困ってる?」
どうしようか、悩んでいると、ロサがそれに気が付いたのか、俺に話しかけてきた。
「いや、三人を止まらせる部屋どうしようかなって。空兎と明兎の二人は俺の部屋でいいんだけど、リアンをどうしようかな~って。」
「じゃあさ、僕はお姉ちゃんの部屋で一緒に寝るから、私の部屋にリアンちゃんを泊まらせてよ。」
「ロサがそれでいいならいいけど、三人は狭くない?」
ロサの提案には助かったが、三人だと狭くないかと、少し心配になった。
しかし、その心配は杞憂のようで、
「大丈夫だって。この前三人で寝たけど、ちょうどよかったから。」
こう言っているので、本当に大丈夫なのだろう。
俺はロサにお礼を言って、とりあえず、夜飯の準備をする。
あれ?もうどんどん作る量が増えてきてるな。まあ、材料が増えるだけで、スキルを使えばすぐだから、あまり関係ないけど。まあ使わなくても、精々三十分ぐらい作る時間が伸びるってだけだから、そこまで影響はない。
さて、今ある材料で作れるのは......まあ唐揚げにしよか。贔屓になるけど、空兎の好物だしな。
醤油と塩のから揚げでいいか。若干味薄めにして、いろんな調味料で味変できるって感じがいいかも。 いやでも、俺たちが味変したときも、動物たちあんまり調味料で調節するって言わないからな。ガルジェも最近人型のまま食べてるけど、やってないしな。
じゃあ、普通の味の濃さを作るのと、薄めの味のを作ろ。味を薄くしたいなら、いつもより漬ける時間を短くすればいい。まあ、今回の場合は、20分ぐらいでいいでしょ。もう片方は一時間ぐらいになるけど、こっちはスキルを使って時短しよ。
醤油味の方はいつも通り、醤油、みりん、調理酒を1:1:1にして、塩味の方は塩コショウとにんにくでいいかな。一応動物たち用に塩コショウだけのも漬けておく。
まあ、醤油味の方は、出汁とか少し入れても美味しいんだけどね。
さて、下準備はできた。一旦、空兎、明兎、リアンに今日泊まる部屋に連れて行こ。
「リアン、今日泊まる部屋に連れて行くから、ちょっと来て。」
二人でロサの部屋に向かい、リアンに入ってもらう。
「ここって......ロサさんの部屋ですか?」
「うん、そうだけど......なんか嫌だった?」
「いえ、嫌とかではないんですけど、ロサさんと同じ匂いがしたので。」
「そういうことね。じゃあ、今日はここに泊まってもらうことになるけど、大丈夫?」
「はい。というか、無理についてきてしまって申し訳ないです。」
「いや、むしろ客人が来た時の部屋が必要になるかもなって分かったから、いい気づきになったよ。」
心配させないようにそういうと、リアンはお礼だけ言って、一旦持ってきた荷物を取りに、リビングへと戻った。
俺もその後に続き、空兎と明兎を俺の部屋に連れていく。
「今日はここで寝て。多分狭いだろうけど、床とか、ソファーとかで寝るよりはいいはずだから。」
多分、この二人なら問題なく......
「じゃあ、空兎が床で寝て。私はベッドで寝る。」
「いや、むしろお前が床で寝ろよ。ベッドは俺のもんだ。」
「ええ?兄なのに、妹にベッドを譲ることもできないの?」
「こういうときだけ兄貴扱いすんな。俺が年上だから、年下は年上の言うことを聞け。」
「思想強いよ。私ヘトヘトなんだよ?空兎より体力ないし。」
「俺より運動してるのに何言ってんだ。俺の方が体力ないわ。」
「でも、私よりも......」
「はい、ストップ!そろそろそこで終わり。」
ダメだ。このまま放置すると一生言い合ってる。
「二人でベッドで寝るっていう選択肢ない?」
「「ない!!」」
マジか。俺が思っていたよりも二人は仲が良くないようだ。傍から見れば仲がいいんだけどなぁ......
何か妥協点とかないかなぁ......ソファーは一つしかないからなあ。
「何かいい感じの考えある?」
「私は空兎じゃなくて、蒼汰くんが一緒に寝てくれるならいいかな。」
「俺も明兎じゃなくて、蒼汰とだったら寝ることはできるぞ。」
「よし、空兎、明兎と寝るから、お前はソファーで寝とけ。」
「何が、『よし、』だよ!?何もよくねえよ!??」
「えーと、そこまで食いつかれると、ちょっと身の危険を感じるかも。」
よし、二人の言う案は潰せた。さて、どうしようかな......この感じじゃ、一生平行線をたどっちゃうんだよなぁ......あ、そうだ。
「二人がここで寝ないなら、とりあえず二人一緒にソファーの上に縛り付けるけどいい?」
俺は机の上からベルトを取って、縄状にし、ニッコリと笑みを浮かべながら、二人に言う。
すると、二人は、それは勘弁なのか、すぐに握手を交わした。
「よし明兎、今日はお互いに我慢しよう。」
「うん、縛り付けられるのは嫌だから。仕方なくだけど。」
よし、とりあえずは何とかなったな。
ディガの部屋に泊めようかも考えたが、いつ帰ってくるか分からないため、そうしなかった。そうなると、ディガにもそのときに泊めた人物にも迷惑がかかるしな。
さて、一旦戻って味の濃い方を揚げてこようかな......そう思い、部屋から出ようとしたとき、空兎に止められた。
「蒼汰、ちょっと待て。キッチンに行くのか?」
え?急に何で?
「まあそうだけど......」
「よし、じゃあちょっと待っとけ。」
そう言うと、空兎は目の前に液晶のようなものを出現させ、それを指で操作した。
それを見ていたら、気が付くと俺はキッチンに立っていた。
どういうことだ?何が起こった?って、どう考えても、空兎のスキルだよなぁ......ある程度説明してもらったけど、実際にスキルの効果を受けると不思議なもんだな。
『だが、ソータくんが見た、あの液晶はどの魔法でも思い当たる節がないぞ?宙に浮き、いつでも出現・消滅させることができるあのガラスのようなもの。見たことも聞いたこともない。まあ、素材自体はソータくんの記憶にあるものと似ているが。』
う~ん、やっぱ召喚されたみたいな形でこっちに来ると特殊なのかな......?ちょっともうわかんねぇな......
『まあ、ソータくんが再現できるなら、再現してみてほしいが。』
たしかに、俺もああいう風にできるようになれば、今日のジャスミンさんの時みたいに、周囲への被害を抑えることができるしな。
明兎のスキルも、よくわからないんだよなぁ......書いたことが現実になるって......割と恐ろしいスキルじゃないか?
『ふむ。妾も聞いたことあらぬな。知識の奴に聞けば分かるやもしれぬが、なるべく触れすぎない方がよさそうじゃ。均衡守護者の持つスキルとは違うが、それほど強力であるなら、代償が大きいやもしれぬ。あまり使いすぎぬよう言っておいとくれ。』
たしかに。強力なスキルを使うのに対価が必要になるとするなら、書いた内容に応じて対価が必要になる、ということも考えられる。
魔法を一定回数以上使った時でさえ、色々な不調が体にかかったんだ。どの程度からそのようなことが起こるかわからないというのは、かなり怖い。まあ、杞憂であればいいんだけどね。
さて、切り替えて夜飯を作るか。
肉に米麦粉をまぶして熱した油に投入する。きつね色になった時に一度引き上げる。一通り終えると、油の温度を少し上げて二度揚げする。色に茶色みがかかってきたころに再び引き上げる。
よし、次はソースだな。
まずは、ケチャップとマヨネーズを混ぜて、オーロラソースを作る。また、醤油とケチャップ、砂糖、揚げ物の油を熱いまま少々入れて混ぜる。意外とこれが美味いんだよな。
あともう一個......なんかあるか?シンプルにあれでいいや。
鍋にみりんを大さじ2ほど入れ、アルコールを飛ばす。アルコールが飛んだら、砂糖を大さじ1、醤油を大さじ2入れて一度混ぜる。砂糖が溶けたら、お酢を小さじ2ほど加えて、お酢の匂いが少し薄くなったらオーケーだ。大さじやら小さじやら言ったが、今回は大体の目分量だ。正確ではない。
南蛮ダレ的なやつだね。うん。多分会うと思う。特に塩の方に。
あとはキャジャを刻んで、調理は終了だ。
ガルジェに準備を手伝ってもらい、準備ができると。俺はみんなを呼ぶ。
全員が集まると、みんな声を合わせて自然といただきますをしていた。
空兎と明兎を見ると、箸を取った途端、すぐさまから揚げを頬張った。
「.........うめぇ......もう、お前の作るから揚げを食えねえのかと思ったよ......」
「美味しい。ちょっと味が薄く感じるけど、ソースがあるおかげで、気になんない。そもそものから揚げの味が美味しい。」
なんか、空兎は感極まっていた。もう食えねえのかと思ったとか言っていたが、一回しかあげたことないんだよなぁ......
明兎は普通に美味しいと言いながら頬張っていた。南蛮ダレが気に入ったようで、何度もつけて食べている。塩分的に大丈夫か心配になるが、まあ後で水を多めに飲ませればいいだろう。
そんな感じで、飯を食べ終わると、片づけをした。空兎が手伝うと言っていたので、手伝ってもらうことにした。
いかがでしたでしょうか?今回は、空兎と明兎のちょっとした口喧嘩を蒼汰が止めていましたね。そして、蒼汰が二人のスキルに驚いていましたね。同時に疑問も。これから、それらは解明されていく......と思います。
次回の投稿も来週の金曜日の予定です※都合上、遅れてしまう可能性があります。
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それでは、また次回お会いしましょう。




