ちょっとよくわからないんですが......
楽しんでいただけたら幸いです。最後まで読んでみてください。
「......というわけです。それ以前のことはどうにも覚えていなくて......あ、正確には覚えているんですけど、少し曖昧で......夢の中の出来事みたいに感じるんですよ。」
少し上を向き、記憶をたどるように目を動かしながら言う。なぜだろう、どこか憂いを帯びているように見えた。
すぐにそんな表情は消え、リアンはニコリと微笑を浮かべる。
「でもまあ、この曖昧な記憶もあなた達には関係ないので、話す必要はないですけど。」
「おいおい、一方的に話を聞かせておいて、なにか隠していることを自分から言うのか?」
レサの指摘に、しまったというように、口元を手で抑えた。
「それで?その曖昧な記憶ってのは何だ?関係なくても私が興味あるんだ、ちゃんと聞かせてもらうぞ。」
肩を掴んで逃がすまいとばかりに目を光らせる。
それに対し、リアンはされるがままに、体を揺さぶられ、気の抜けた声を発する。
「ワタシハナニモシラナイヨ?」
なぜかカタコトだった。というか、その言葉じゃごまかせないと思うが。
ガクガクと揺さぶるレサと揺さぶられるリアンを見て、何を考えたのか、ルーナがレサの反対側からリアンを一緒に揺さぶった。
......どういう状況?なんでルーナは揺さぶりに行った......レサがやってるからか。特に小さいときは、楽しそうだと思ったら、考えていても自然とその楽しい方に体が動いちゃうからな。
ちなみに、揺さぶられてるリアンは少し目が回ったようで、若干顔を青くしていた。
「ちょっ、待って、めっちゃ目が......気持ち悪い......」
喉から絞り出すように弱々しい声で、辛うじて言葉を発した。
それが聞こえた二人は、やりすぎたと、動きを止めつつ、少し眉尻を下げて申し訳無さそうな表情になる。
「すまん、少しやりすぎた。」
「ごめんなさい。」
二人ともリアンにすぐ謝った。当のリアンは、少し顔を青くしながらも、
「大丈......夫...多分......気にしないで...」
いや、うん、見た目以上に気分が悪そうだった。
リアンは相当きつかったのか、寝そべり、落ち着けるように深呼吸をする。
「よし、もう大丈夫。まだちょっと世界が回っておりますが、大体誤差の範囲内ってことで。......なんの話ししてたっけ?」
ものの一分で回復した。多分、俺だったら二十分経っても回復してなさそう......リアンの回復が早すぎるのか。
「曖昧な記憶がどうとか言っていたが......いや、今回は私が悪い。その件は忘れてくれ。」
レサが、珍しく気にしているのか、気になったことなのにもかかわらず、話さなくていいという。
それを見たリアンは、少し悩んだ素振りを見せてから、
「了解しました。」
と、レサの言葉を飲み込むのだった。
「ねえねえ、何してるの?」
突然後ろから誰かに抱きつかれ、構えていなかった俺は、少し腰を痛めた。だがまあ、すぐに治る程度なので、特に気にすることはない。いややっぱちょっと気になるかも。
抱きついてきたのは、言うまでもなくロサである。ゼリージさんとの話は終わったのか、ロサはニコニコしている。
そんなロサとは対照的に、思案顔で何か深く考えている様子のゼリージさんがいた。
「ゼリージさんと何話してたの?」
「主にそこの子と、ジャスミンさんについてかな。あと、まだお城の中に何人かいる、警戒しないといけない人たちかな。ほら、ジャスミンさんの部屋にいたあの男とか。」
......そういえば、あいつの存在を忘れていた。どうしようか、今からでも捕まえに行くべきか?いや、別にそんな被害を与えてきそうな感じはなかったから捕まえる必要はないか?でも、あいつがあの組織の監視役って可能性もあるし......
「まあゼリージさんには話したから、要警戒人物みたいにはなるんじゃなかな?」
それならまあ......大丈夫か。
「あとほら、まだ知らないだけで他にも何人かいるかも知れないじゃん?」
たしかに。少なくとも二人しかいなかったより、最低でも二人いた、というほうがしっくりくる。
「そこは僕達がどうにかする問題じゃないから、ゼリージさんに任せるんだけど。」
仮に今回みたいなことが起こるとき、今回は俺達がどうにかしたけど、その場面で必ずいるってわけでもないからな。
「あ、あと、今回は僕達も巻き込まれたのと、情報を渡したってので、ちゃんと報酬はもらうことにしたよ。さすがにそれで何もないようじゃ、お互い、相手を疑っちゃうしね。」
無償の行動は、何かの無料と同じく、深い落とし穴があるからな。仮にその行動が100%善意であったとしても、その善意を悪意に利用される可能性もあるしな。それなら予め利害関係を作り、それを積み重ねるほうが、疑心暗鬼になりにくい。
.......いうても、今のはいつか読んだ本に書いてたことだけどな。多分こんな感じだったと思う。
「そういえば今、お姉ちゃんが珍しく初対面の人と話してるけど、何の話ししてたの?」
そう聞かれ、俺は先程まで見ていたことを話した。すると、ロサは堪えきれないというように吹き出した。
「なにそれ、リアンちゃんだっけ?面白いこと言うじゃん〜!よし、話しかけてこよぉっと。」
そう言って三人のいる方へと向かっていった。向かう前、一瞬レサに視線を向けていたが、俺がレサを見ても特になんともなかったので、多分仲が良い姉妹であるがゆえに、無意識に目で追ったのだろう。たまにそうしてるのを見かけるし。
ロサも会話に加わって、四人で話をしているのを横目に、頭の中の疑問を解消するために、ゼリージさんに話しかける。
「ゼリージさん、なんでジャスミンさんを放置していたんですか?結構前から、誰か帝国側のスパイがいるということに気がついてましたよね?考えすぎだったら申し訳ないですけど。」
するとゼリージさん、バツが悪そうに少し目を背けた。
「えっとな、実を言うと、こう、怪しい奴らを調べるのは申し訳なくなっての......」
「本当は?」
明らかに嘘だとわかったので、間髪入れずに突っ込む。すると、ゼリージさんはどこか歯切れの悪い様子でこういった。
「いや、実を言うとジャスミンがスパイだと気づいておったのだが......ワシによく接してくれてな、次第に疑いたくないと思えてしもうた。しかもその......ジャスミンが.........だったのでな。」
最後は言葉がしぼんでいてよく聞き取れなかったが、多分好きだったと言ったのだろう。恥ずかしそうにしてるし。いや思春期かよ。
「事情はわかりました。それともう一つ質問が。どうしてリアンをここに?どう考えても、ここに入れるという判断はおかしいでしょうに。空き部屋もいくつかありましたし。」
すると、ゼリージさんはため息をついた。
「ロサにも話したのじゃが......ワシは『スキル鑑定』というスキルを持っていてな、保護したときにリアンに使ったとき、異常性に気がついたんじゃ。なぜなら、レベル100でスキルを持っていたからじゃ。」
えと、もしかしてゼリージさんって俺のスキルも知ってたりする?そう聞きたがったが、とりあえず我慢する。
「ワシは生まれたときからレベル200ぐらいだったのじゃが、ちょうど500になった頃一つ、1000になった頃にもう一つスキルを得た。気になり、スキルを持つ者のレベルを片っ端から調べると、必ず500以上だったのだ。お主なら、この異常性に気がつくか?」
うん、500レベルにつき一個のスキルがもらえるのは知ってるけど......逆に生まれたときからのレベルが高いとか低いとかあるんだ。マジで生まれながらの運ゲーじゃねぇか。クソゲーだな。
って待てよ?リアンが500レベに達してないなら、スキルを持っているのは当然おかしい。
しかし、俺という、異世界からきた例外もいる。俺もあんまり実感はないが、この世界に来たときからスキルを持っていたと言える。先程も思ったが、リアンはもう異世界人......というか、日本人で間違いないんじゃないか?祭りの屋台の話がわかってたし。
それと、スキルのせいで偶然組織のところへと行ったが、追われる理由がゼリージさんの言う『異常性』にある可能性も......いや、それは低いか。多分情報漏洩阻止目的......でもねえか。それだったらとっくに俺とロサとあの貴族の男は消されてるわ。
じゃあなんだ?でも、スキルというか、リアン自身のなにかに、追われている理由はありそう。
その旨をゼリージさんに伝えると、同じ考えだったようで、ウム。と頷き、そのまま続ける。
「ワシには、というより、リアン自身にも追われている理由がわからないようじゃ。その理由をどうにかして知りたいのだがなぁ......それもそうだが、その異常性に気づいたワシは、すぐさまこの子をここに隠したんじゃ。」
話に聞いた限り、頭のおかしな集団らしいしの。と、呟いてからリアンの方を見る。
俺もつられて、そちらを向くと、ロサがリアンにこちょこちょしていた。なぜくすぐっているのかは分からないが、楽しそうにしているので、多分大丈夫だろう。
そして、見ていて気がついたのだが、ルーナが戻ってきたことで二人の心に余裕ができたのか、結構笑顔が増えてきている。それがあの行動に表れているのかは謎だが。
「ワシも昔はあれ以上に元気だったんだがのう......今や苦悩の毎日じゃ。」
しみじみと呟く。その呟きはバッチリ俺に聞こえてきた。昔を懐かしむってさ、大人になっていけばいくほど増えたりするのかな?
「ところでソータよ。平和とはどういうものだと思う?」
突然質問してきた。
え、急すぎない?何、賢者タイム?そう思ったが、口には出さず、ゼリージさんの質問の意図を考える。
平和とは......ねぇ...その平和をどう受け取るかによって変わってくるんじゃない?俺にとっては争いや心配事が少ない世の中である、ということだけど、誰かと、もしくはどこかと争うことで平和をより実感するという人もいそう。
「人によって違うんじゃないですか?どう捉えるかは自分次第ですし。」
その答えに満足したとでも言うように、ニコッとして、ゼリージサンは頷いた。
「そうじゃ、争いがあるから平和という概念が生まれる。もし、争いがなければ平和というものは存在し得ない。しかし、平和のない争いにまた、意味もない。難儀だのぅ......」
なんでゼリージさんはこの質問をしてきたのだろう。その意図を見定められずにいると、ゼリージさんは俺の方を向いた。
「さて、話は変わるが、今回の報酬について話す。少しこの手の話はお主には苦手に思えるだろうが、とりあえず聞いとくれ。」
うん、まあ確かにあまりこれと言ったことしてないのに、仰々しくお礼されるのは気が引けるしな。まあでもそこはロサが話をつけていたようで。
「今回の報酬は、お主らを巻き込んだ迷惑料と、ワシを助けた分の報酬で、1000万サルサを渡そう。なに、命に比べればはした金じゃ。この国の資産から見てもな。安心して受け取るが良い。あとで渡す。」
いや、あ、うん。前回の10倍って......ちょっともう、意味分からんわ。1000万とか言われても、想像つかねえわ。いや、ギリ想像はつくか。
「それと、もし何があっても、必ず味方になると約束しよう。無論、それに関わる協力は惜しまないつもりじゃ。物品でもなんでも支援するぞ。」
なんかもう、報酬がおかしくない?いや、ゼリージさんの気持ちの表れなのかもしれないけどさ、まあロサが吹っかけてる可能性のほうが大きいと、個人的には思うが。というか、最後の条件はほぼ確実にロサが吹っかけたな。まあ別にゼリージさんも納得してるんだったら良いけど。
「そうそう、色々な子たちがいてさぁ......」
「ハムスターはッ!?ハムスターはいますかッ!?具体的にはジャンガリアンハムスター!」
「ジャンガ......なんとかはわからないけど、いろんな動物たちがいるよ。」
「どんな動物ですか!?」
そんな会話が聞こえ、見ると、何やら興奮したような様子のリアンがロサに詰め寄っていた。この世界にハムスターがいるのだろうか。いるんだったら......なんか電気作れそう。あのハムスターが走る遊具的なやつで。
「じゃあ、行ってみたいです!」
「多分大丈夫だけど、一応聞く?」
「あ、はい、聞くことにします。」
何の会話か、わからないが、二人はそう話すと、リアンだけが俺とゼリージさんの方へ歩み寄ってきた。
「ソータさん、お家の見学会に行きますね。」
何いってんだ、こいつ。突拍子もなく言われ、そう思ってしまうのも無理はなかっただろう。
いかがでしたでしょうか?今回は、レサやルーナが他人と接している様子が少し描かれましたね。少しの間とはいえ、酔うほど揺さぶられる......どんな勢いで揺さぶられてたんでしょうね?
次回の投稿も来週の金曜日の予定です※都合上、遅れてしまう可能性があります。
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それでは、また次回お会いしましょう。




