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んっ?少し既視感が......

 楽しんでいただけたら幸いです。最後まで読んでみてください。


 ふう、やはり、遠いな。


 私はとある事情で、蒼汰の家から遠く離れた地にやってきた。本来ならファイガも連れてきたほうが良いところではあるが、危険に巻き込まれる可能性があることを考えると、私一人のほうがよいのか。


 何よりも、あの子にとって、無理に母親を思い出させて寂しい思いをさせるのはよくないだろうしな。


 すこし開けた場所にやってきた。その中心に大きな木が生えている。


 懐かしい。ファイガが生まれたばかりの頃、ここでよく私とファイガと私の妻とで、一緒に過ごしていたものだ。


 この木の下に埋めてある。今日はちょうど命日だ。そのためにここに来たのだ。


 それにしても、もう三年ほど経つのか......時の流れなど気にしていなかったあの頃が懐かしい。今やお前がいなくなってからどれくらい経つかを数えるばかりだよ......


 木に向かって頭を下げていると、突然後ろからガサガサッと茂みをかきわける音が聞こえた。


 バッと振り返って戦闘態勢を取る。茂みの奥から出てきたのは人間だった。二人いる。


「ちょっと〜、また適当に配置したでしょ。いい加減に森の中歩くの疲れたよ?」


「ごめんって、まだ全然慣れてないからさ、でも、こういうふうに活用するって、結構いいアイディアじゃない?」


「『アイディア』は、だけどね。」


「相変わらずの様子で安心したわ。ちょっとあとでラリアットかますから準備運動しとけよ?」


「上等。最悪引きずって歩いたげる......って、なんか羽生えてる子猫ちゃんいるんだけど〜♡」


「ええっ......切り替え早すぎこわっ。」


 ええっ、怖っ。なんなんだこいつらは。口喧嘩をしていたと思えば、急に目の色を変えてこちらに寄って来たのだが。しかも、私を認識してからの速度が速い。


「おいで猫ちゃん、何も怖いことしないから。ちょっとナデナデさせてもらうだけだよ〜?」


「いや、羽生えていることに驚けよ......」


 男が呆れたように女性の方に言うが、聞く耳を持っていないようだ。しかも、迫られてくるだけで十分怖いのだが。


 ただ救いは、男のほうがまだマトモそうなところか。


 一歩一歩近づいてくる人間から距離を取るように、私も一歩一歩あとずさりする。


 しかし、すぐに気づく。何を妻の墓前で逃げるような行動をとっているのだ私は。ファイガがいない以上、心配するものもない。むしろ立ち向かわねば。


『そこの人間、何者だ?なぜ私に近づく?』


 声を張って尋ねてみるが、予想だにしなかった反応が返ってきた。


「嘘〜。可愛い♡ねえ聞いた?今鳴いたよ?」


「聞いた聞いた。概ね、お前が怖くて威嚇したとかなんかだろ。あんま近づいてやるな。」


「なんでよ!?久々の猫ちゃんだよ!?ほら、アニマルセラピーってやつだよ。そういうの好きでしょ?」


「......わかった。一昨日撫でてたのは別においておく。あと、触りたいのはわかるが、もしも何かの病気とか持ってた場合な......」


 ......ふむ。全く威嚇が効いていないところか、むしろ喜ばれてしまったな。


 いや、先ほどこやつらは私のことを子猫と言っていた。おそらく、移動のためのエネルギーを少なくするために体を小さくしているのが原因だろう。


 ならば......!


「ええっ、なんか猫ちゃんが大きくなったんだけど!すごっ。」


「うおっ、ホントだ。でけえな。ライオンぐらいあるんじゃない?」


 おかしい。大きくなって威嚇しているはずだが、全く効果がない。


『なぜ、威嚇しているのに平然としているんだ。』


 思っていたよりも動揺していたのだろう。自分でもきく意味がわからない質問をしていた。


「やっぱ、デカくなると鳴き声も低くなるのかぁ。」


 私の唸り声を聞いてもなお、効果はないようだ。


「ねえねえ、猫ちゃん、触らせてもらっても良い?」


「結構警戒してるぞ。爪で一発ガッとされたらどうするんだ。」


「大丈夫だって。いつでも攻撃が通らないようになってるし。」


「慢心は身を滅ぼすって言葉知らないのか?いくらあの力があるとはいえ......」


「大丈夫だって。何度も試したでしょ。」


「たしかにそうだけどさぁ......」


 なるほど。威嚇などには反応しないということか。ならばとっとと、撫でさせてやったほうが早いだろう。今のところ、敵意も何も感じないしな。さすがに私も敵意のない相手に攻撃しようとは思わん。


 私は人間に近づこうとしてはたと気がつく。ここで素直に頭を差し出しても良いのか?


 後ろで妻に見られてるかもしれないのに?いや、私の尊厳にかかわるかもしれない。素直に頭を差し出すのはよくない。


「うーん、中々撫でさせてくれないね。」


「いや、撫でさせてくれなくて当然だと思うけど......」


 うむ。今のうちに退散だ。二人とも私の方を見ていない。


 私はそのまま物陰に隠れようとしたが、後ずさりだったせいか、小枝を踏んでしまい、気づかれてしまった。


「あっ、猫ちゃん逃げちゃうよ。ちょっと待って猫ちゃん。ねえ、何かない?気を惹けそうなもの。」


「気が引けそうなものねぇ......あっ、サバの水煮ならあったよ。味付けできないからって、ずっと食べてなかったやつ。」


 人間たちは何かを差し出してきた。


 これは......金属の容器に入ってる.....魚か?かいだことのない匂いだが......


 腹が鳴った。いかん。朝食を抜いてきた弊害が......しかし、今の身体のサイズでは圧倒的に足りん。


 最初ぐらいのサイズまで体を小さくし、食べる。うまい。少し匂いに違和感があるが、程よい油のノリで、身もふっくらしていて美味だ。ソータならこれをいい感じに調理してくれそうだ。


 突然頭の上に何かが触れる。


 ふと頭を上げると、さっきの女性が私に触れていた。ニコニコとしている。


「ねえ、やっと触らせてくれたよ!」


 嬉々として後ろの男に言っていた。悪気はないのだろうが、少し耳に響く。


 しかし、意外にも心地いい。扱いに慣れているのだろうか。


 って、いかんいかん。これを食べている間だけだ。触らせるのは。


「うーん、明兎(・・)さあ、猫が好きなのは良いんだけど、このままじゃいつまでも見つからないよ?」


「分かってるって。でも、いつまでも気を張ってても仕方ないでしょ?猫を可愛がる余裕はあっても良いと思うんだけど。」


「そうか。まあ追いかけてる側である以上、どうしても追いつかないどころか、逆方向に行ってる可能性だってあるしな。一応明兎のスーパーセンサー(笑)にたよってるけど、いつでも街に戻れるし、大丈夫そうだね。」


「ねえ、バカにしてるよね?意外と役に立つんだからね。」


 やはり、また身のない話をしているようだ。互いにけなして何が楽しいのだか......


「何で空兎は信じてくれないの?」


「信じるも何も、そんなん信じてるやついねえって。」


「でも、友達もお父さんもお母さんも信じてくれたよ?」


「口だけだろ。証拠も何も無いし。」


「絶対に私が正しかったってわからせてやる。」


「はいはい。わかったわかった。どうせあとでわかる。」


 不機嫌そうに明兎と呼ばれた方の女性がふくれっ面をする。


 というか、話を聞いているうちに食べ終わりそうだ。うむ。うまかった。食べてしまったのは完全に不可抗力だ。仕方ない。朝飯もなかったしな。


 だから撫でられたのもしかたのないことだ。


 私は食べ終わり、その場を離れる。


「あ~、猫ちゃん行っちゃうの?」


「分かってると思うけど、追いかけないでね?これ以上時間取られると蒼汰を探しに行けなくなるからな。」


「分かってるよぉ。また迷子になるとかはならないから大丈夫だよ。」


「はぁ......目を話すとすぐにいなくなるからな。お前は。」


 ......待て、今蒼汰と言ったか?聞き間違いだろうか。


「いいじゃん。私のスーパーセンサー蒼汰くんバージョンがしっかりと役に立つんだしっ。」


「あ~、はいはい。」


 間違いない。今蒼汰と言ったな。確かによく見ると、男の方は蒼汰と顔の特徴が似ている気がする。


 そもそも、蒼汰は私に名前を教えたとき、他の者が呼ぶように、ソータというふうには言っていなかった。この言い方は少し違和感を感じるが、蒼汰と同じ言い方だ。どこか似通ったところがある。


 そもそも、この食べたことのない食べ物を持っていたのも気になる。蒼汰も別の世界から来たと行っていたが、そう考えると、この食べ物も持っていることに違和感はないのか?そもそも見たことのない文字だしな。金属の容器の文字が。


 どっちみち、蒼汰を探しているようだから、家に連れて行くか?


 さすがに名前が他人の空似というわけではなさそうだからな。この魚をもらったお礼も兼ねてこれぐらいはしてやろうか。


 私は大きくなり、羽をはばたかせる。


『二人とも、乗ってくれ。蒼汰のところに連れて行く。』


 私が言うと、二人は戸惑ったような表情を見せた。


「ええっと、乗れってことなのかな?」


「そうなんじゃない?もしかしたら秘密の場所に連れて行ってくれるイベントだったり......」


「バカなことを言うな。でも、やっぱ乗れってことなのかな?」


 そういえば、蒼汰だから伝わるだけで、この二人は言うことはわからないんだな。それもそうか。


 私は乗れという言葉に頷き、乗りやすいように地面に座る。


 すると、少し困惑しながらも二人は私にまたがった。


「やっば、めっちゃ羽が柔らかい。というか、寝そう。」


「そもそも、乗っても大丈夫なのかな?折れたりしない?」


 私は頷く。


「えっ、今私たちの言葉に頷いたよ?」


 気がついてくれたようだ。このまま気づかれないならどうしようかと迷った。


 私は飛び上がり、家に向かう。


「おおっ、浮いた。すげぇ。」


「私もびっくりした。飛行機にも乗ったことないのに、しがみつくだけで移動するのはちょっと怖いかも。」


 素直に驚いてくれて少し嬉しい。反応が若干薄かったからな。蒼汰は。


 なるべく振り落としてしまわないような速度で家に向かう。


 ......さすがに少し腰が痛いな。



 いかがでしたでしょうか?今回は、ライアがまさかの二人に出会いましたね。はたして、これからどのように物語にカジが切られていくのか、蒼汰はどんな反応をするのか?なぜふたりは森にいたのか、お楽しみに。


 次回の投稿も来週の金曜日の予定です※都合上、遅れてしまう可能性があります。


 面白いと感じたら、ブックマークや評価をぜひ、よろしく願いします!モチベーションや、物語の流れにもにつながるので!


 それでは、また次回お会いしましょう。


※よかった、今週は間に合った

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