ここは......こいつらは?
楽しんでいただけたら幸いです。最後まで読んでみてください。
ふわぁぁ......なんか、気持ちのいい朝だ。空気が新鮮というか、いい感じに涼しい......って、窓開いてるじゃん!いつ開けたっけ?
まあいいや。いつ開けたかは覚えてないけど、気分の良い目覚めだし。
あ、そう言えば、今日もロサが部屋に来てたな。
俺は後ろを振り向くと、そこには誰もなかった。
もしかして、窓からもう出ていったのかな?そうだったら窓が開いていることにも理由がつく。何故にドアから出ていかないのやら......
支度を済ませてから朝食の準備を始める。何にしようかな......トメイトスープでも作るか。幸い、黄色と黒のどちらと聞かれても、黒の方しかトマト......トメイトがないため、そっちを使うことにする。
朝食を作ると、起きてきていたリーズとファイガに頼み、他のみんなを起こしに行ってもらった。
俺は俺で、食べる準備を整えつつ、アリサたちを起こしに行く。
アリサの部屋に入ろうと、ノックしようとしたとき、急にドアが開いた。急すぎて、そのドアに鼻とおでこをゴッとぶつけてしまった。
その鈍い痛みにのたうち回りたくなるが、我慢して、出てきたアリサに挨拶をする。
「お、おはようアリサ。」
「おはようソータ。って、ドアぶつけちゃったけど大丈夫!?」
感覚でドアをぶつけてしまったことが分かったのか、アリサが俺を心配する。問題ないことと朝食ができたことを伝え、続いてディガを起こしに行く。
ディガはいつも通り寝ているのかと思いきや、すでに部屋にいなかった。
机の上に何かが置かれている。ええと......?
『少し野暮用があって出かける。遅くても夜には帰るから心配しないでくれ。』
置き手紙か。やっぱ、鍛冶場を造りたいって言ってたし、その材料とかそのための道具とかを手配しに行ってるのかな。
めっちゃウキウキしてる様子だったし、ここにいないというのならしょうがない。
俺はディガの部屋を出て、レサ、ロサ、ルーナの三姉妹を起こしに行く。
先にレサの部屋をノックしたのだが、誰もいなかったため、ロサの部屋に行く。ノックをすると、
「入ってきていいよ〜。」
との返事があったので、朝食ができたことを言いながら入ると、レサとルーナは普通なのだが、なぜかちょうど着替え始めたとばかりに服を脱ぎ始めているロサの姿が。
「あ、おはようソータ。」
挨拶をしてそのまま着替えるロサ。特に俺が見ているとか気にしている様子はない。
レサも腹減ったとか言いながら先に部屋を出てしまった。ルーナがさっき返事したのだが、今は下着姿のロサに抱きついて遊んでいる。
俺はそっと部屋を出て、先に行っていることを伝えてからリビングへと向かった。
危なかった。あそこで出なければ、ずっと固まってたかもしれん。
何故にロサは着替えているところを見られても気にしないのか......いや、俺も部活してたころは着替えを人に見られても特に気にしなかったな。それでもそれとこれでは話が違うでしょ。
まあ、結局本人しかわからないところなので、あまり考えないようにする。仮に気になったとしてもこういう話題はちょっと訊きにくいしな。
リビングで少し待つと、すぐにロサとルーナが来た。
なんとなくロサに気まずさを感じつつも、朝食を摂る。
朝食を食べ終わり、片付けを済ませると、アリサに出かけることを伝えると、少しジッと顔を見られた。
「そういえば、ソータって、昨日からどこに行ってるの?今日もどこかに行くって言ってるし。」
確かに言ってなかったな。俺は昨日あったことと今日、これから行ってやろうとしていることを話した。
「じゃあ、私も久しぶりにメルカおじさんたちに顔を見せに行こうかな。」
まあ、仮に前みたいにさらわれることがあっても、アリサなら問題ないか。
ってことは......動物たちだけでの留守番か。
ライアに声をかけようとしたが、なぜかどこにも姿が見当たらなかったので、ちょうど子供組と遊んでいたアドルに声をかける。
「アドル、そこの王国に出かけてくるから留守番よろしく頼む。」
「ガオー食べちゃうぞー。って、シャウダじゃんか!ちょいと待っててくれ!おい、ラク、ラド、少しちびっこたちの相手してやってくれ!」
「「了解しやした兄貴!!」」
おっと、遊びを中断させてしまったようだ。
「それで、出かけるんだったよな!?ライアさんが戻ってきたら言っとくぜ!」
相変わらず元気に話すなぁ。だけど、俺の意図を汲み取ってくれたようで素直に嬉しい。
「ありがとう。そうしててほしい。そういえばライアってどこ行ったの?姿が見当たらないけど.....」
「なんて言ってたんだったか........?ああそう言えば落とした羽を拾いに行くとか言ってたぜ!どこかはわからんけどな!」
なんじゃそれは。でも、行き先をぼかして言うのはライアにしては珍しいな。
「とりあえずわかった。教えてくれてありがとうな。」
「おう、気を付けて行ってこいよな、ソルバ!」
さっきと言ってる名前が違うぞ。
それだけ言って、怪獣ごっこでもしてるのか、ガオーと威圧感のない声で言いながら、子供組の方に戻っていった。
一度自分の部屋へと戻り、荷物を取ってからロサとレサ、ルーナ、支度を済ませたアリサと共に王国へ向かう。
外門から入ろうとすると、門番に引き止められる。
「ちょっと君たち......って、ソータさんお久しぶり。」
そこにいたのはウルガさんだった。嬉しそうに手を振っている。
「ウルガさん、久しぶりです。しっかり休めましたか?」
「はい、しっかり休暇も取れて、見張りの方も休暇明けから何事もなく、嬉しい限りです。」
確かに俺も、なにか問題あるより、問題なくそのまま過ごせるほうがいいしな。
「ソータさんも変わりなくという感じですか?」
「まあ色々ありましたけど、まぁまぁ変わりなく?」
「なんですかそれ。」
俺の言葉にウルガさんは少し笑ったけど、結構変わってる気は......いや、あの時からかなり変わってるわ。
あと、今更だけど、ゲートを使わなかったのは非常事態に備えてだからね?アリサのときみたいなことが起こらないとは限らないし。
とにかく、ウルガさんは終始嬉しそうにしていた。
しかし、ウルガさんは引き止めてしまって申し訳ないと一言謝ってから、そのまま通してくれた。
俺としては、もう少し喋ってても良かったけど、他の三人が......って、普通におしゃべりしてるね。まあいいか。本来の目的を果たしに行こう。
王城に着く手前の冒険者協会あたりでアリサと別れ、俺とロサはそれぞれスキルを使って姿を周りから見えないようにする。
ルーナが不思議そうにキョロキョロしていたので、レサがルーナに俺とロサがどこに行ったのか説明してくれてた。
そのまま四人で王城まで向かった。レサとルーナが入るタイミングで一緒に入るためだ。
何者か門番に訊かれたが、レサが何かを取り出して門番に見せると、門番の人はすぐに通してくれた。今レサが見せたものは何なのだろうか。
ともかく、俺とロサは別の場所......開く窓を見つけてそこから入る。5分ほど探した後に見つけることができた。普通に広すぎ。レサたちといっしょに入ったほうが早かったわ。そう言って、ロサとともに少し吹き出しそうになったわ。
なんか、近くに仲間がいると少し安心できるわ。
中へと入ると、ロサに引っ張られてとあるところに連れて行かれた。
ここは通称会議室らしく、大きな机と椅子が二十脚ほどあるだけのシンプルな部屋だった。
「ここね、たま〜に忍び込んだことあるんだけど、ほら、机の下見てみて。」
ロサにそう言われ、机の下を覗くと、何か人一人が通れそうなサイズの扉が床にはまっていた。
この感じ、前に地下室に行ったときを思い出すわ。
「確実にこの下に何かあるんだよね。というか、一回だけだけど、僕が怪しいと思ってる人が入っていく姿見たし。」
じゃあ、入ってみれば意外とわかるかもな。
ん?何か足音が......
「ソータ、こっち」
小声で声をかけられ、そのまま壁際に引き寄せられる。
会議室に誰かが入ってきた。ゼリージさんとは対照的に、キラキラとした宝石に装飾された服に身を包み、見るからに丸々としていた。
その人物はキョロキョロと周りを見渡すと机の下に潜っていった。
しばらくゴソゴソと音が聞こえたが、そのまま息を潜めて待っていると、何も物音がしなくなった。
「ふぅ。ちょっとバレるかもって、ドキドキしちゃった。でも、あいつが僕が怪しいと思ってた男だよ。他にも下に仲間がいるかも。」
というか、タイミング的にもちょうどレサがゼリージさんと対面してるはずだよな?このタイミングを狙ってこの下に潜っているのだろうか。
「どうする?俺達も下に行ってみる?」
俺が質問すると、姿は見えないが、キラキラしているような眼光が見えた......気がした。
「もちろんだよっ!前からずっと入ってみたいと思ってたんだよね〜。地下室ってなんかワクワクしない?」
うん、その気持ちはものすごくわかる。だけど、前に入ったことあるんだよなぁ。まあ、前のときとは別の空間かもしれないし、未知の場所へ行けると思うと、正直ワクワクする。
机の下に潜って扉を開くと、下まで続くはしごが現れた。
そのまま下っていくと、さっきの男とその他4人ほどの男たちが円形の机を中心に椅子に座っていた。全員、悪巧みしてそうなニヤケ顔だった。
ロサが降りてくるのを待ってから、ロサとともに物陰に隠れて様子をうかがう。
しかし、男たちは各々手を組んだり、だらしなく机に肘をついて寝そべったりして、ずっと黙ったまま何も始めようとしない。
しかし、その沈黙を破るように一人の男が声をあげた。
「ほんっとうに申し訳ありませんでしたぁぁああ!!」
俺達が先程会議室で見かけた男である。その見た目に反し、土下座するような勢いで言う様子は、少し憐れみを覚えるものだった。
「で?そういうのはいいから自分は何したの?」
机にだらしなく肘をついていた男は少し眠そうに、謝った男に質問した。
「ゼリージに怪しいと疑われてしまったことです。」
怖いのか、若干半泣きで答えると、腕を組んで瞑想をしていたガタイのいい、スキンヘッドの男が口を開いた。
「違う。そんなことはどうでもいい。お前の本当にやらかした失態を言え。さもなくばお前の持ち物全てを破壊する。間違えてお前の子どもの命も巻き込んでしまうかもな。」
クッと歯を食いしばったあと、うめき声を上げるように小さな声で呟いた。
「シャガイランス様のことを......ことを、『マジで名前クソだせえな。センスの欠片もねえ。』と罵ってしまったことです......」
言ってしまったとばかりに涙をついに流してしまった男はそのまま机に突っ伏してしまった。
「ま、ぶっちゃけ僕達もそう思ってたから、別に咎めるつもりはないよ。今回だけ、はね。そもそもよほどの狂信者でもない限り、この名前をかっこいいとか思わないでしょ。」
先程の眠たそうな男が軽く馬鹿にするように鼻を鳴らして肩を竦める。
「はぁ、これだからにわかは......私だからいいですが、他の信者の前で言ってみなさい。殺されかねませんよ?それに、シャガイランス様の名前のどこが悪いのでしょうか?実に優美な響きであの御方の強さと素晴らしさがわかる名前でしょう!それに、諸説ありますが、一つの説によれば、シャガイランス様は元々別の名前だったようです。まあ側近の幹部しか真偽を確かめられませんが......私もいつかこの目でシャガイランス様に謁見させていただいたときはもう......幸福でこの心臓ごと弾け飛んでしまいそうです。なぜこの思いがあの方に届かないのでしょう......いえ、あの御方は天よりも高くにいる存在。それは高望みというもの......」
ペラペラと語りだす、執事のような装いをしている男を見て、呆れたようにため息をつく眠そうな男。
「ね、ここまで来ると手遅れだからむしろそれぐらいでちょうどいいよ。ああでも、やりすぎて、この仮面の人みたいにはなんないでよ。感情なさそうだし、何考えてんのかわかんないし。」
ここからその男が指さした仮面の男は見えないが、おそらく謎に黒マントを羽織っている男のことだろう。先程から一切微動だにしていない。
少し不気味に感じるが、我慢してそのまま話に耳を傾ける。
「ちなみに言っておくと、貴族くんがミスしたのはそこじゃないよ。何資金集めもせずに私腹を肥やしてるのさ。そっちが贅沢するなら僕達にも贅沢させてよ。」
口をとがらせて文句を言うその姿は、この場の雰囲気に似つかわしくないものに思えた。
いかがでしたでしょうか?今回は、謎の五人の男たちが出てきましたね。彼らの言う『シャガイランス』とは一体何のことでしょうか?前にも同じ名前を聞いたような気が......
次回の投稿も来週の金曜日の予定です※都合上、遅れてしまう可能性があります。
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それでは、また次回お会いしましょう。




