馬車の旅②
中年の男性はニカリと気持ちの悪い笑みを浮かべて私たちの事を見てくる。
服装からして貴族らしい事は分かるのだが、それ以上の素性はわからない。
ここは無視するのも手ではありますが、一応挨拶くらいはしておきましょう。
「どうも」
はい終わり。
後は目的地に着くまで関わりにならなければいいのです。
いいのですが...。
貴族のおっさんは私の事をジロジロと見つめてはなにやらブツブツ独り言を喋っていました。
「青髪の人種なんて初めて見たな...」
一応彼の独り言に聞き耳を立ててはいましたが、別に怪しい事は言っていなかったのでやはり無視に限ります。
(と言うか私の青髪って珍しいんだ...)
たしかにスラナ村でもクレイトンでも私以外に青髪の人はいませんでした。
まあ、だからなんなのだと言う話なんですけどね。
相変わらず私の事を舐めるような視線で見てくるのやめてくれませんか?。
思わず口に出してそう言いたくなってしまいますが、初対面の人にそこまではっきりと言ってしまえるほど私はえらくありません。
その視線にさえ我慢すれば基本的に無害だったので放置していると...。
馬車の窓から奥の平原に無数の影の様な物がこちらに接近してくるのが見えるのでした。




