手紙
私達がギルドで馬車の手配をしていると...。
「あの...、ケロナさん」
「なに?」
ギルドの職員からとある物を渡された。
それは綺麗に折りたたまれている手紙だ。
「手紙...? 誰から?」
私達に手紙を送ってくる人物などいるはずがないと思っていたのだが...。
「ツッ!!」
私は思わず手を振るわせた。
なぜなら、手紙の差出人がディール達だったからだ。
しかも職員の人がそれと同時に3種のプレゼント箱を差し出してきた。
「これは?」
「ディール様達が貴方様宛に当てたプレゼントです、貴方達が旅立つ日に手紙と一緒に渡してくれと言われていましたので...」
私は思わず手紙の内容を見ながらプレゼント箱を開けて行く。
ディールの箱からは鋼で鍛えられた片手剣が入っていた。
「あいつ...、自分の持ってた剣より高額な物を他人にプレゼントしないでよ...」
サーシャの箱からは連なったナイフの束が入っていた。
「...サーシャのお陰で投擲の精度が向上したんだよね...」
マーヤの箱にはサラ用の杖と魔導書が入っていた。
「マーヤ姉ちゃん...、毎日サラの訓練に付き合ってくれたんだよ...、途中でサラの方が魔法の威力が高くなっても精度の事について最後の日までつきっきりで教えてくれたんだ...」
そこまで呟くいたサラが急に泣き出す。
「うっ...、またマーヤ姉ちゃんやみんなとお仕事したいよぉー!!」
いつもならそんな状態の彼女を宥めるのは私の役目なのだが...、今はごめん。
私も彼等からの手紙とプレゼントを見て涙を流していたのだ...。
手紙の最後に「またいつか一緒に仕事をしよう」という文章があり、それが一生叶えられないという現実に打ちひしがれてしまう私達...。
「ばかやろう...! お前らが先に死んじまったらこの手紙の意味がないだろうが...!」
手紙がぐしゃぐしゃになってしまいそうな程に力を入れ込みながら、私達はただ死んだディール達と過ごした1ヶ月間の思い出を脳内に巡らせる事しかできないのでした。




