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異世界ドラゴン~この世界をひとつに~  作者: あんちおいでぃぷす
第二章 孤児院潜入編
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ダンジョン攻略




 さて、ダンジョン攻略のためにジルたち三人を草原に連れ出していた。

 

 ダンジョンはそこから少し歩いた先にある。

 実は、予めダンジョン内を探索して、なにがあるか調べておいた。

 

 この世界では、ダンジョンはすべて難易度がランク付けられている。

 ダンジョンの攻略の難しさ、最深部に潜むボスの力を考慮して、それを7段階にわけてあるのだ。

 もっとも難しいダンジョンはSランク。

 これはもう英雄クラスでなければ攻略出来ないほど難しく、なかに入っている宝箱にも国宝級の名品が眠っている。

 次がAランクで、だいたい上級の冒険者たちがこれに挑む。ダンジョン内の宝箱にも極上品の武器やアクセサリーが収められていて、それを狙ってダンジョン攻略にいそしむ者も多い。

 そこからBCDEF……とランクは並び、最低がFとなっている。

 Fランクのダンジョンとなるとろくな宝は望めないが、まあ、経験にはなる。初級者の冒険者はだいたいFから始めるのが基本となっている。


 ――そして今日挑むのは、Cランクのダンジョンだ。

 Cランクと言っても(あなど)れない。

 普通は経験を積んだ大人の冒険者たちが挑むダンジョンだ。

それを子どもたちだけで攻略してもらうというのだ。

それだけでかなり異常な事態だ。

 ダンジョンの最深部には“ひとつ目オーク”が眠っていて、――こいつもなかなか強い。

 今のジルたちの戦力を考えると、ぎりぎり倒せるかどうか、というところだろう。

 だが、それだけに良い経験にはなるはずだ。

 

 

 ――と、ランクの話をしたが、この世界は単純に魔導量や剣の腕だけで実力は測り切れない。

 ほんとうに実力のある冒険者や剣豪たちは、あっと驚くような戦法を取ってくる。

 強いやつはいわゆる「戦いのIQ」というやつが高いのだ。

 ヒスイなんかはその典型で、魔導量では圧倒的に俺の方が多いし、瞬き派だけで言えば剣術の実力もすでに俺のほうが高い。

 だが、いざ実践で勝負するとなったら、俺は勝てるとはとても言えない。

 まず積んできた経験が圧倒的に違うのだ。

 もし俺と殺し合うような場面になったら――そんな場面は絶対に来ないと思うが――ヒスイはどんな手を使っても俺を殺しに来るだろう。

 その戦法は俺には想像もつかない。

 あれほど親しくした仲なのに、ヒスイは戦法に関しては俺にさえ秘密を隠していた。

 最悪の場合、俺と戦うケースもある、とどこかで心の準備をしていたのだろう。

 ……それが「殺し屋」という稼業(かぎょう)なのだ。

 心の底の底では、常に暗闇(くらやみ)を隠し持っておくこと。

 そして常に最悪のケースを「想定の内側」に入れておくこと。

 その過酷さを日常として引き受けられるものだけが、「殺し屋」としてこの世界で生きていけるのだ。



 「中は地下五階になってる。最深部にはボスがいるから気をつけろよ~」

 入り口でそう言って手を振った。

 「地下五階って、なんでお前は知ってるんだよ……? 」

 そう言って、ジルが呆れている。

 「なんでって、このあいだ入って調べたから……」 

 「か、簡単に言うな、お前……」

 まあ実際、この程度のダンジョンなら俺には簡単なのだ。

 「とにかく、良い経験になるから行ってこい」

 そう言って、俺はにっこりと笑った。

 「クソ。いい加減何者なのか教えろよな、チクショウ‥…」

 ジルはそうぶつぶつ言いながら、セナたちを引き連れてなかに入っていった。



 しかし、こうしてここで待っているのも、暇だな……。

 三人とは“反響の世界(ワールド・オブ・エコー)”で意識を繋いである。

 本当に危ない場面になったら呼ぶようにも伝えてある。

 ……だが、心配だ……。

 ちょ、ちょっとだけ見に行ってみようかな。

 ――いや、ダメだ。全部任せると言ったのだ。本人たちの実力に、すべて(ゆだ)ねよう。


 ……いや、でも、ちょっとだけなら、見ても良いかな。

 ほんとうに、ほんとうにちょっとだけ‥…。


 こうして、抑えきれなくなった俺は、こっそりと三人に続いてダンジョンのなかに入っていった。



 ……


 一階はそれほど広くなく、主にスネークシャークが棲息(せいそく)している。

 蛇状の身体をしたモンスターだが、顔だけが発達して鮫のような形をしている。

 さほど強くはないが、初級冒険者が簡単に倒せる敵ではない。

 ましてや子供が――。


 ……のはずなのだが、ジルたちはあっけなく倒している……。

 おまけに戦法などといったものすらなく、ただひたすら討伐(とうばつ)している。

 端から見ていたら、子どもたちが蛇をいじめているようにしか見えない。

 あっという間に一階を探索し終わり、地下二階への階段を見つけてしまった。

 

 う~ん。

 順調なのに越したことはないのだが、もう少し苦労して欲しい……。



 ……


 さて、二階だ。

 この階からさっきのスネークシャークに加え、羽トプスが出てくる。

 小型の恐竜型のモンスターだが、背中に羽が生えている。

 地面を這い回るスネークシャークに気を取られていると、いつのまにか頭上に羽トプスが迫っていて、思わぬ攻撃を食らう。


 ……はずなのだが、ジルたちは一切ダメージを受けない。

 ジルが素早くスネークシャークを片付け、淡々とセナが槍で羽トプスを突き刺している。

 なんというか、もう、ほとんど「作業」だ。

 街の清掃員がゴミを片付けに来たに等しい。

 ティファニーなどやることがなくて後ろの方でぼおっとしている。

 

 これで良いのだろうか……。

 ど、どうも「経験」にすらなっていない気がする……。



 ……


 三階に来た。

 ここからは先程の二種類のモンスターに加え、針モルド―が出てくる。

 針モルド―自体はさほど耐久力がなく、攻撃を加えれば簡単に倒せるのだが、

 このモンスターには特有の「遠距離攻撃」がある。

 身体に生えた無数の針を遠くから飛ばしてくるのだ。

 先程の二種類のモンスターたちに気を取られているうちに、背後から針モルド―が迫り、敢え無く針を食らう、ということがあり得る。

 初級の冒険者など、この辺りから苦労するはずだ。



 ……のはずなのだが、先頭のジルがそれらの攻撃をすべて避けている。

 そのあいだにティファニーがせっせと“標的の誘導(チャーム)”を仕掛けて、羽トプス同士を戦い合わせている。

 そしてセナは、ひたすら槍でスネークシャークを突き刺して回っている。

 セナに至っては、茂みに隠れた蛇を始末するベテラン市役所員にしか見えない。

 もう無心でスネークシャークを突き刺している。



 ……こ、これで良いのかな……。

 強くなるに越したことはないのだが、苦労が無すぎる……。

 

 だが、さすがに次の階からもう少し苦労するはずだ……!



 ……


 地下四階に来た。

 ここらはさっきまでのモンスターに加え、ピグモという知的なモンスターが出現する。

 見た目としては眼球に足が生えたような生き物なのだが、この魔物は、ほかの魔物に指令を与える。

 つまり、ここからは敵が「戦術(せんじゅつ)」を使用してくる。

 ジルたちも、今までのように単調に敵に攻撃を加えるだけで倒せる、というわけには行かなくなるだろう。


 

 まず、三人が地下四階に降りたとき、スネークシャークがジルに噛み付いた。

 ――当然、俊敏(しゅんびん)の高いジルはそれをあっけなくバックステップで交わす。

 

 ……ところが、それを待っていたかのように、ジルの着地点に向けて針モグローが針を飛ばしてきた。始めからそれを狙っていたようだ。

 ジルはさすがにそれを交わし切れず、腕で針を受ける。

 だが、その針には「毒」が仕込まれている。針モグローの針は毒針なのだ。 

 

 ――ティファニー、“解毒の魔導(アンチ・ポイズン)”を掛けてくれ。セナ、俺が戦線に戻るまで場をしのいでくれ――

 そう言いながら、ジルはパーティーの最後尾まで一気に後退する。


 ――わかった――

 セナが応答する。

 そしてジルに代わり、最前線に出た。


 おお……。

 一気に戦いらしくなった。


 だが、セナはジルと違い、俊敏は高くない。

 もちろんそれを(おぎな)って(あま)りある「強力な火力」があるわけだが、こうして最前線(さいぜんせん)に出るのには向かない。

 手数をたくさん撃てないから、敵が複数いると、応戦(おうせん)に苦労するのだ。

 

 ――ジル、……まだ来れない? ――


 次々と攻撃を仕掛けてくるスネークシャークの牙と針モグローの遠距離攻撃に耐えきれず、思わずセナがそう漏らす。


 ――もう少しだ、堪えてくれ……! ――


 ジルがそう答えた。


 ……そしてまさにそう答えたその瞬間、セナの身体が大きくのけぞる。

 いつの間にか迫っていた羽トプスの一撃を側頭部に食らったのだ。

 

 「つッッッ……! 」

 

 セナの苦しい言葉にならない言葉が、ダンジョン内に響く。


 ……むう。

 かなり苦戦している……。


 いや、結構やばいか?? 助けに入ったほうが良いか‥…?


 ……だが、俺がそう不安を抱いたその瞬間、ジルが仲間にこう命令した。


 ――敵の連携(れんけい)が取れすぎている。たぶん、全体に指令(しれい)を与えているモンスターがいるはずだ。まずそいつから片付けよう――


 ……す、すげえ

自力でピグモの存在に行き着いた……。


 そして、ジルはこう付け加えた。


 ――毒が消えたら、指令を出しているそいつを俺が見つける。セナ、そいつを見つけたら、最優先で攻撃してくれ――


 ――わかった――


 セナがそう答えたとき、同時にティファニーが言った。


 ――毒の取り除き、完了~~~――


 その瞬間――


ダッッッ……!


という音とともに、ジルが一気に最前線に躍り出る。

 そしてそのままセナを通り抜け、その奥の暗闇に入り込むと、


 「“付与の魔導――雷” 」


 と唱え、


 「……これを散らすように……」


 そう呟き……、


――なんとその一撃を地面に加えた。


 途端、電撃がジルのそば一体に広がり、一瞬だけダンジョン内に光が広がった。


 そして三人は、そこに見知らぬ魔物が一匹いるのを見つける。

 ピグモは敵の後方で暗闇に姿を隠していたのだ。

 そこから指令を送っていたのだ。

 

 


――見つけた……! ――


 すでに走り出していたセナがそう呟く。


 ――ジル、一瞬で良い、足止めして……――


 ジルが静かに頷く。 


 ――任せろ……、“雷の魔術(サンダー)”――


 ごくちいさく、ジルがピグモに魔術を放つ。

 

 ジビィッッ! 


 それによって、短くはあるが、ピグモが硬直(こうちょく)する。

 そして、その硬直は、セナがそこにやってくるのには充分な時間である。



 

 ザシュッッッ……!!

 

 

 追いついたセナがピグモの眼球の真ん中を綺麗に槍で貫く。


 ――これで、終わり……――

 

 セナがそう言うと、ピグモの身体から紫色の魔物の血が溢れる。


 噴き乱れるその血をバックに、セナがこっちに振り返る。


 そして、

 

 「あとは残りを片付けるだけ……」


 と呟いた。

 その隣でジルも振り返り、


 「““付与の魔導――雷” 」ジビビイィィッ

 と剣にエンチャントを付け直した。



 ……

 ピグモの指令を失うと、この階のモンスターたちは途端に統率を失った。

 ……こうなると、ジルたちにとっては取るに足らないモンスターが無数にいるだけだ。

 脅威はすこしもない。

 再び単調な作業に戻り、三人は淡々とモンスターを始末して回った。

 そして、あっけなく地下四階の最深部にたどり着いた。

 



 ふーむ……、

 途中で苦労している場面はあったものの、トータルで見ればあっけなく片付けたと言って良いだろう。

 どうやら、俺が「龍の慧眼(けいがん)」をさらに覚醒(かくせい)させたのが大きいらしい。

 ジルやセナの動きが今までとは比べ物にならないほど速くなっている。

 ティファニーの魔導の発現も、以前より遥かに速度が増している。

 ジルとセナの攻撃も、その一発一発が遥かに重くなっている。

 (こんなにも龍の慧眼の効力は大きいのか……)

 と俺は考えていた。

 ジルたちの成長が大きいのもあるが、龍の慧眼によるステータスボーナスがかなり大きい。

 ……とすると、龍の慧眼がさらに成長すれば、それに伴ってさらにジルたちも強くなるのか……?


 

 だが、それに加えて、――毎回思うことではあるが、ジルの「戦闘IQ」はものすごく高い。

 ジルはもともとスラム出身で、そこでは少年盗賊団を組織していたらしい。

 その経験が生きるのか、敵の弱点を見抜き、仲間をコントロールするのが上手い。

 機転を利かす速度もずば抜けて早い。

 ……もっとも、ジルはスラムでは「大人からスリを働いてばかりいた」というから、

 悪事で磨かれた特殊(とくしゅ)技能(ぎのう)だと思うと、安易に褒められない……。

 まあ、生きるために仕方なくやっていたんだと思うけど……。

 

  とにかく三人はついにこのダンジョンの最深部、地下五階に降りていった。


 だが、階段を降りたさきには思わぬものが待っていた。


 本来、一匹しかいないはずのひとつ目オークが、なぜか二匹いたのだ――。


 (あ、あれ、俺が確認したときは、一匹だったんだけどな……。)

 

 薄暗がりのなかで、ひとつ目オークの目が光る。

 三人は戦闘態勢を取り、ぐっと腰を落とした。







ちょい修正しました(*´ω`*)

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