新しい力の目覚め
それから半年間、俺は港の病人を治してあげた。
港の漁師たちはだいたいみんなフィルスと同じ反応をした。
始めは子供である俺を怪しむのだが、“解毒の施術”を掛けてやると、あっけに取られ、呆然とするのだ。
そして数日後に訪ねていくと、丁重に頭を下げ、熱の籠もった言葉で感謝を述べようとしてくる。
「どうやったらこんなこと出来るんだ……? 薬も使っていないのに……! 」
病気から快復する彼らを見ているのは俺も嬉しかった。
「も、もう諦めていたんだ。良かった! 本当に、良かった……! 」
彼らはそう言ってはらはらと泣きさえするのだ。
俺名義で造った水産業者の方も上手く行っていた。
まず、フィルスが漁師として優秀だったというのがある。
“大漁のフィルス”の異名はだてではなかったようだ。
毎日のように、港で一番の水揚げ量で帰ってくる。
後で知ったことだったが、この辺りでフィルスの名前を知らない漁師はいなかったらしい。
フィルスはもともと凄腕の漁師としてその名前が知れ渡っていたというのだ。
フィルスの弟子たちも良く働いてくれていた。
腕の良い漁師は弟子の育成も上手いらしい。
フィルスの抱えている船は四隻に過ぎなかったが、早くも港で独自のポジションを築き上げていた。
フィルスだけでなく、その弟子たちの船も必ず大漁旗を掲げて漁から戻ってくるのだ。
彼らの稼ぎは大きかった。
俺は早い段階で最初の投資額を回収した。
始めに払った金額をすぐに売上が上回ったのだ。
そこで、つい先日、父親に借りた始めの金額を返済した。
父親である国王とムルナウ伯爵は、
「す、水産業というのはそんなに稼げるのか? 」
と手紙のなかで驚いていた。
ふたりはビジネスをしたことがないから、「金を稼ぐ」ということが良くわからないのだ。
ふたりが目を丸くした表情が目に浮かんで、俺は思わず笑った。
やがて、俺が治してあげた漁師のなかに、俺の造った水産業者と提携を結びたい、というひとが現れた。
ある晩、フィルスの家にいると、
「た、頼む、俺もレオンさんのもとで働かせてくれ」
と玄関のドアを開けるなり土下座をしてきた男がいるのだ。
「バカ野郎! 」
とフィルスが怒鳴った。
「レオンさんに失礼だろうが! 頼み方にも礼儀ってもんがあらあ! 」
怒鳴られた男は、
「そ、そりゃあそうだ。やっちまった! レオンさん、す、すんません! 」
とまた土下座をしていた。
それを見て思わず俺とフィルスは顔を合わして笑ったのだった。
フィルスも含めて、“元締め”の直属の傘下ではない漁師はもともと一匹狼である。
普通は港では漁師は元締めと契約をしなければやっていけない。
自由に漁をする代わりに、何%かのバックを彼らに支払うのだ。
元締めとの契約を拒む彼らは独立心が強く、誰にも尻尾は振らない。
フィルスもそうだが、彼らはこれまで一度足りとも誰の下でも働いたこともない。
彼らは孤独であり、孤独であることに誇りを持っているのだ。
そんな彼らのひとりが、俺の傘下として働けるなら、俺の部下になりたい、と言うのだ。
「相棒。俺からも頼むよ。あいつはもともと血の気の多い一匹狼でな。誰の下でも働きたがらなかった。それが自分から働かせてくれと頭を下げに来てんだ。なあ、頼む。あいつを雇ってくれ」
フィルスがそう言った。
早くも漁師仲間の肩を持っている。
結局、ものすごく仲間思いのやつなのだ。
俺のもとで働きたいという気持ちは嬉しかったが、俺は躊躇した。
誰でも彼でも業務提携するわけにはいかない。
そこであとでこっそりと本人のいないところでフィルスに相談すると、フィルスは、
「あいつとは古い付き合いですからね。でも、雇ってあげて欲しいというのはそれだけが理由じゃないですぜ。あいつは漁師の腕はさほど良くないが、めっぽう目利きが良い。卸売に回せばきっと実力を発揮すると思いますがね」
と教えてくれた。
そこで俺は、釣った魚を売る店を一店舗構えることにした。
リントン地区の表通りに謂わば魚屋を作ったのだ。
フィルスの言ったように、その男はやたら目が利くらしく、店はすぐに「リントン地区で最も美味い魚が買える店」として有名になった。
店が軌道に乗ったとき、夜が明ける直前に店に様子を見に行くと、ちょうど港に仕入れに行くところだったらしく、
「レオンさん、わざわざ来てくれたのか! あ、ありがてぇ、ありがてぇ! 」
とまた店前で土下座された。
……いや、恥ずかしいから、やめてくれ……。
……その店の売上で俺はもう一隻船を新調した。
ちょうどそのころ、俺が毒を解いてやった漁師のなかにもうひとり、「レオンさんの下で働かせてくだせぇ! 」と土下座してくるひとが現れて、彼を採用することに決めたのだ。
りょ、漁師は、頼み事をするときに土下座しないと頼めないのか……?
「と、とにかく顔をあげてください。話を聞きますから」
そう言うと、彼は満面の笑みを俺に向けた。
俺の作った水産業者は、早くも軌道に乗り始めていた。
あるとき、俺はミーティングのために夜にフィルスの家に行った。
フィルスにあるお願いがあったのだ。
「おう、相棒! それで? 用ってのはなんなんだい? 」
以前では考えられないほど綺麗な衣服に身を包んだフィルスが言った。
その隣では質素ではあるがドレスを着た奥さんも微笑んでいた。
俺は話を切り出した。
「頼みというのはほかでもないんだが、フィルスさん、いっそうちの会社の社長にならないか? 」
「俺が、社長、ですか……? 」
「そうだ。と言っても、今まで通り俺も業務には関わる。だが、フィルスさんにはより積極的に全体を監督してもらいたいんだ」
「相棒、それは要するに、……今までとなにが違うんですか? 」
「強いて言うなら肩書と意識。――それと、給料」
「肩書と意識、それと、給料……? 」
フィルスがぽかんとしている。
「そう。社長になってくれるなら、今までの倍払うよ」
「ばばば、倍……!? 」
フィルスが驚いて、椅子から転げ落ちかける。
「もともとフィルスさんにはそれくらい払うつもりだったんだ。フィルスさん、俺は今よりもっと会社を大きくするつもりだ。単なるちいさな漁師会社で終わらせるつもりはない。いろいろと事業も広げたいんだ。そのときに、フィルスさんには全体に指示を与える社長のポジションをやってもらいたいんだ。今だって似たようなことはやっているが、より積極的に事業に関わってもらいたいんだよ」
それからこう付け足した。
「あんたは人を見る目があるよ。一漁師にしておくにはもったいない。――もっとも、漁師としても凄腕なのは認めるけどね」
すると、フィルスさんは立ち上がり、神妙な顔で俺を見た。
お、おお……。でけえ……。
強面のこの男に真顔で睨まれると、やっぱり、結構怖い……。
「相棒、――いやレオンさん。そんな話、俺にはもったいないくらいだ! だが、あんたがやってくれって言うなら、俺は……」
――と、そこでフィルスは泣き出してしまった。
そして俺の手を握りながら、
「やるよ、いや、やらせて欲しい! あんたは、――レオンさんは俺の恩人だ! あんたのためだったら、俺は命だって惜しくねえ……! 」
俺は思わず笑った。
「よしてよフィルスさん。レオンさんなんてくすぐったいよ。一緒に会社を始めた仲間じゃないか。そうだろう、……相棒? 」
そう言うと、フィルスは一瞬驚き、それから、
「ああ、そうだな、相棒! 」
と言って、涙を流しながら最高の笑みを見せた。
……
さて、その間に、並行してセナたちを育てていた。
誤算だったのは、セナたちのほかには“障壁”をくぐれる子供は現れなかった。
ほかの子どもたちも悪くはないのだが、この三人が別格過ぎるのだ。
はっきり言って、三人は天才と言って良い。
この歳でここまで魔導と剣術を扱えるやつはほとんどいないだろう。
というか、貴族たちのなかでも、同い年だけで並べたら、この三人は頭ひとつ抜けているかも知れない。
うーむ。
ひとを育ってるのって、楽しい……!
三人の素質が分散しているのも嬉しかった。
セナは特別としても、ティファニーにもジルにも特有の得意分野があるのだ。
それをどう伸ばし、どう育成していくかを考えているのが、めちゃくちゃ楽しい。
案外俺は、教師なんかに向いているのかもしれない。
三人の訓練としては、今まで通りのことをさせていた。
魔導量増幅の修行。基礎的な魔導の反復訓練。
ただし、三人にはそれに加えて、彼らのスタイルに合った訓練も付け足していた。
「さあ、今日はその訓練の結果を見せてもらおうか! 」
真夜中に草原に連れ出した俺は、三人にそう言った。
「「「おうっ!」」」三人も、意気込んで頷いている。
ちょうどそのとき、巣からゴブリンロードが這い出てくるのが見えた。
これまで、さんざん三人にゴブリンを狩られていたのだ。
ゴブリンロードも頭に来ていたのだろう。
巨大な混紡を持って、鼻息荒く近づいてきていた。
というわけで、“戦闘開始ッ(ファイッ!)!”。
……
ゴブリンロードの特徴は、一撃の火力の高さと、部下を上手に扱うその統率力。
これが上手く捌けるかどうかだが、さて、どうだ……?
……
ジルたちの取った(とった)戦術はいつもどおり。
まずはジルが早い足で撹乱する。
それから、ティファニーに指示を与える。
――ティファニー、“標的の誘導”を掛けてくれ! ――
――うん、わかった~! ――
――“標的の誘導”! ――
これによってゴブリンロードはジルに夢中になる。
そこまではジルたちのいつもの戦法である。
だが、そう上手くいくかな……?
ブンッッ――。
チャームを掛けられ、まんまとジルに近づいていったゴブリンロードだが、ジルに攻撃すると見えたその瞬間、振り返って、……“セナに”その混紡を振り下ろした。
――セナはすれすれのところでこれを交わしたようだが、ゴブリンロードの思わぬ行動に、三人は驚き、硬直している。
……そう。
“チャーム”は有能だが、魔物によっては効く時間が短い。ゴブリンロードほどの強者となると、すぐに解けてしまうのだ。まあこの辺りの知識も全部、“この世界をひとつに”の受け売りだが……。
……そして、こういった強者は、敵が驚いて硬直しているこういう時間を、決して見逃さない。
――“憤怒の大暴れ(ジタンダ)”――
ゴブリンロードは混紡を見境なく振り回した。
ゴブリンロードが使う特殊な大技だ。
まるで子供が地団駄を踏んでいるような技だが、――これが結構ばかに出来ない。
ドスンドスンドスンドスン!!
「「「くっ!!」」」
三人はこの技に巻き込まれ、あっけなく吹き飛ばされた
特にセナはかなりのダメージを受けたようだ。
ふむ、
(さすがに8歳の子どもたちにゴブリンロードは倒せないか……? )
と、自分も8歳であることを忘れて俺はそう考えていた。
今の技で最も傷を負ったのがセナだと判断し、
ゴブリンロードはそちらへ向けて一歩踏み出す。手負いの獲物にとどめを刺そう、というわけだ。
そしてゴブリンロードの部下、ゴブリン二匹もいつのまにかセナに近づいている。どこか茂みにでも隠れさせていたのだろう。
(セナ。結構まずい状況だぞ。大丈夫か? )
セナのことになると無性にはらはらする俺。
……いかんいかん、と俺は首を振る。
教え役が贔屓してどうする……。
だが、素早くジルが行動を起こした。
――“雷の魔術”――
と、ゴブリンロードの背中に魔導を打ったのだ。
即座にゴブリンロードはジルの方に振り返り、怒りの雄叫びを上げると、ジルに向かって突進した。
怒り狂うリーダーに戸惑い、二匹のゴブリンもそっちに向かっていく。
――戦況を立て直そう! 俺が惹きつける。ティファニーはセナの快復を! ――
そう言うと、ジルはぎりぎり敵の攻撃が当たらない距離を保ちながら、後ろに下がった。
(ほう……)
――うん、ジル、お願い! ――
その合間にティファニーがセナに駆け寄り、快復の魔導を唱える。
「“一級快復魔術――”」
ふむ……。
やはりジルはメンバーに指示を与えるのがものすごく上手い。
咄嗟のアクシデントにも動じずに、すぐに戦況を立て直せる。
そしてなにより、自分の「役目」を良く理解している。
ジルが目立とうとして大技を連発すれば、この三人の連携は上手く行かない。
ジルが敢えてセナの引き立て役に徹しているから、残りのふたりが上手く機能するのだ。
ジルは大人びているというか、勉強出来る出来ないではなく、賢い。
「チェッ! この技は隠し持っておきたかったのにな……」
ジルがそう呟く。
む、なにかするつもりだな。
なんだ?
「“付与の魔導――雷”」
ジビビビッーー! ジルの剣に雷が纏う。
おお、いつの間にか付与の魔導をものにしている……。
それを俺にも隠していたのか。
やるな、こいつ。
「喰らえ! 」
と、ジルがゴブリンロードの首元にその剣を振り下ろすと、
ビビビビイリリリィィッッーー!
雷を受けてゴブリンロードが硬直した。
そして、
――あとは頼んだ、セナ――
と、そのとき、ゴブリンロードの真上でなにかが白く光った。
それは槍を握り締めたセナの姿だった。
すでに快復を済ませたセナが、このタイミングを見計らって先に空に跳んでいたのだ。
――任せて、ジル…――
――“龍殺しの跳躍”‥…――
そして凄まじい衝撃。
ズズズズンンン……
セナが空から降りてきた衝撃で、ゴブリンロードの頭から腹の辺りに掛けて、巨大な穴が出来上がる。
そして立ち込める砂埃のなかで、雷の光が二閃、走る。
――ジビィッ、ジビィッーー
残ったゴブリンをジルが片付けたのだ。
ゆっくりと砂埃が風に立ち消えてゆくと、そのなかから拳を突き合わせたジルとセナが現れた。
見事に三人だけでゴブリンロードを討伐してしまった。
しかも、かなりあっけなく……。
うーむ、三人の成長が嬉しい。
まるでスポンジのように教えたことを全部吸収してくれる。
「わぁ~い、やったねえ~! 」
ティファニーがふたりのもとに駆け寄ると、三人は俺の方を向いてにっこりと笑い、ピースをした。
「どうだ」と言わんばかりに。
……
「いやぁ~素晴らしい成長ぶりですね」
拍手をしながら三人に近づいた。
――やってみてから、まるで物語のラストに出てくる悪の首謀者みたいなセリフだな、と思った。
「ここまで俺を楽しませてくれるとは思いませんでしたよ」
本心からそう言ったのだが、この言葉も悪の首謀者っぽかった。
「まったく、まったく、笑いが止まりませんねぇ……」ニヤリ。
(クッ、これも、悪の首謀者っぽい……! なぜそうなるんだ……! )
心なしか、ジルもセナも武器を握り締めて俺を警戒している。
「三人にはなにか、特別な褒美をあげなくてはなりませんねえ……」ニタリ。
(クッ、首謀者っぽさを払おうともがけばもがくほど、かえってドツボにハマっていく……! な、なんだこれは……!?)
――と、そのときだった。
突然頭のなかに声が響いた。
――ステータス上昇を感知。新スキルを獲得。確認して下さい――
(ス、ステータス上昇? 新スキル?? なんだ……?)
その言葉通りステータスを開くと、ある項目が点滅していた。
点滅していた項目は、 “龍の慧眼”だった。
恐る恐る点滅している部分をタッチすると、
――龍の慧眼の成長を確認しました――
と頭のなかに再び声が響いた。
龍の慧眼の、成長……?
どういうことだ……?
この能力は自分のステータスを確認するためのスキルだと思っていたが、まだ成長する余地があるのか……?
その横に説明書きが書かれているのに気づいた俺は、そこに目を走らせた。
「配下の者に職業を任命すると、ステータス上昇ボーナス」
と書かれている。
配下の者……? ステータス上昇ボーナス……???
と、とにかく、試してみるか……?
「ジル、こっちに来てくれ」
ジルが俺のほうに走ってくる。多少まだ警戒しながら。
近づいてきたジルに、俺はこう言ってみた。
「ちょっと試してみて良いか? えーっと、配下の者に職業を任命、――と書いてあったな……。じゃあ、ジル、お前は今日から、“エンチャントナイト”だ――」
すると……、
――パァアアアァァァ……
「お、おお、おおお!!???!?? 」
ジルの身体が白く光った。
「レオン、なんだ、これ!? 」
「わわわ、わからん! 」
「す、すごい、……力が湧いてくる! 」
そう言うと、ジルは一歩下がり、草原の真ん中に立った。
「すごいよレオン! ものすごい力だ!」
「ジル、その場所で素早く走ってみてくれ! 」
俺がジルにそう叫ぶと、ジルはあっけに取られ、それからゆっくりと頷いた。
そして、ジルは素早く草陰派のステップを踏み、
一挙に後退すると、再び一気に前進した。
そのひとつひとつの動きが、凄まじく素早かった――。
「す、すげえ! レオン、俺、今、ものすっごく速く走ってるよ! 」
「ジル、すっごぉい~」
ティファニーが驚いた声をあげた。
「確かに、この成長は、すごい」
あのセナも驚いている。
正直に言って、俺も驚いていた。
……どうやら、これが成長した龍の慧眼の力らしい。
つまり、俺が誰かを育て、その人物に「職業」を与えると、その人物が強くなる。
龍の慧眼にはまだ続きがあったのだ。
説明のなかでは「配下」と書かれていたが、単純に言えば「教え子」のことなのだろう。
だが、実を言うと、思い当たるフシがないわけでもなかった。
ここ数ヶ月、妙にひとの「才能」が俺はわかるのだ。
ジルならエンチャントナイト、ティファニーにはデバフの才能、それにセナの竜騎士としての力。
いや、それどころか、フィルスのビジネスマンとしての才能まで見抜けていたのだ。
このところ、妙にそのひとの持っている資質が見抜けるのだ。
恐らくそれ自体が“龍の慧眼”の持つ力なのだろう。
つまり、人の才能を見抜き、その能力を増幅する力――。
そんな特殊な力が龍の慧眼には隠されていたのか。
ブルッ……!
俺は思わず身震いする。
この力を、もっと試して見たかった。
「ねえ、私にも、やって、やって~! 」
ティファニーが俺の前で両手をあげてぴょんぴょん跳ねている。
「私も、して欲しい」
ちゃっかりセナもその後ろに並んでいた。
「あ、ああ……。任せろ」
まだ目覚めたばかりの自分の力に戸惑いながらも、俺はそう返事をする。
「ティファニー。お前を呪術師に任命する――」
「セナ、お前を竜騎士に任命する――」
――パァァアァァァ……
ジルのときと同じように、ふたりの身体が白く光る。
「すすす、すご~~い! 」
ティファニーが、思わずそう驚嘆する。
「身体中から、魔導の力が溢れてくる~~」
「私も、すごい……」
セナがそう言った。
すると、セナが空を見上げた。
ん? どうした?
セナが言った。
「ちょっと、跳んでみる」
そう言うと、セナは突然“龍殺しの一撃”で空に跳び上がった。
おお~……。
今までとは比べ物にならないほどセナが高く跳び上がっている。
「す、すげ~……」
ジルもあっけにとられて、そう零している。
「たかぁ~い」とティファニー。
そして、ものすごい上空にまで上がったセナは、
俺たちから少し離れた草原に凄まじい衝撃で降りてきた。
ズウゥゥゥン……。
爆風がこちらにまで吹いてくる。
その力は、明らかに今までとは比べ物にならない。
飛躍的にその威力も衝撃範囲も増していた。
ステータス上昇ボーナスと言っても、ここまで劇的に変わるのか……??
砂埃が消え去ると、セナがわかりにくい表情で、
「ふむ、なかなか、良いかも……! 」
とかすかに嬉しそうに笑っていた。
……
三人の訓練が終わったあと、俺は頭のなかで新しい計画を立て始めていた。
実は訓練していたあの草原の近くにはあるダンジョンがあるのだ。
そこは冒険の初級者にはちょうど良さそうな難易度のダンジョンだった。
三人がもうすこし成長したら、三人だけで攻略してもらおうと思っていたのだが、思わぬ誤算が起こった。
(これなら、もう行けるんじゃないか……? )
成長した三人を見てそう思ったのだ。
(しかし龍の慧眼の成長には驚いたな……。こんな力が隠されているとは思わなかった)
そのとき、唐突にこんなことを思った。
(もしかしたら、俺が散々ひとにものを教えていたから、この力が発現したのか……?
だとしたら、さらにひとにものを教えていたら、もっと成長する……? )
龍の慧眼にはまだまだ先があるのかもしれない――!
そう思うと、三人の後ろ姿を眺めながら、俺は胸が高揚するのを抑えられなかった。
ちょ~~っとだけ修正しました(*´ω`*)




