1話【始まりの始まり】
「なぁ。これで何時間経った?」
「もう9時間は経ったんじゃない?」
「いや、まだ1時間しか経っていませんけど!?」
俺の名前はシマダ・ハジメ。
ここは簡単に言うと中世ヨーロッパ風の異世界だ。
そんな誰もが夢見る世界で、俺達はスライムと一時間程格闘していた。
「さっきからこいつ突進しかしてこないけど、本当にスライムにMPなんてあんのか?」
「あ、ありますよ! きっと....」
とても不穏な空気が流れている。
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それから2時間後。俺達は無事に戦闘を終え、ギルドに帰ってきていた。
「今日も報酬これだけ?」
「しょうがないですよ。攻撃できる人がいないんですから」
今話しているのは俺のたった2人のパーティーメンバーだ。
不満を漏らしているのがセリス。そして敬語で喋っているのがメディ。
メディは可愛らしいショートボブで黒髪のとても真面目ないい子なのだが、セリスはというと....
「わたしが倒したんだし、ちょっとあんたらのお金分けてよ」
この有様。
折角美しい金髪を持っているというのに、性格のせいで台無しだ。
「お前が勝手につまずいて、たまたまスライム潰しちゃっただけだろ」
「たまたまですって? なら男のあんたが剣でも持って戦えばいいじゃない!」
彼女の言う通りだ。
このパーティーには攻撃役がいない。
全員が白魔道士という異様なパーティーなのである。
白魔道士はサポートに回ってからこそ回復役としての花が開く。
それなのにこのパーティーときたら....。
「せ、責めるのはやめましょうよ....ハジメさんは極度な運動オンチなんですから」
ついにはメディにもいじられた。
「そうだったわね! 剣も持てないヘタレだった」
セリスは嬉しそうに俺を罵倒する。
「ま、まぁ。こんなパーティーでもいいとこは沢山あるさ」
「例えば?」
セリスが鋭い質問を投げてきた。
「......]
予想外の質問に思わず口籠ってしまった。
「ないん....ですね」
「あぁ....」
とても暗い雰囲気のまま今日は解散となった。
そして次の日、俺は最強の戦術を生み出すのである。
次回もぜひよろしくお願いします!