第49章 板垣! (下)
緒方の視線が釘付けになっていた、緒方がずっと戦いたいと思っていた相手は、戦うことをためらって道場の端っこでうずくまっていた板垣だった。
板垣は石川剣館の中で緒方が一番戦いたかった相手であり、一番倒したかった相手でもある。
石川兵馬が「石川賢の全弟子に挑戦してほしい」という緒方の依頼を受け入れた後、板垣の顔は強い凱旋の表情で覆われていた。
板垣の目には--緒方は今日死んでいた。
石川剣道の全弟子に挑戦する一人の男?
1on1での挑戦でも緒方は疲弊してしまう!?
板垣は富山以外の石川剣道学校全体の中で、尾形を一番嫌っていた人ではないでしょうか。
その夜、彼はふふのお尻を触っただけだった--板垣はそれが悪いとは思っていなかったし、彼は侍で、相手はただのウェイトレスだったから、ふふのお尻を触っただけだった。
しかし、緒方はその些細なことで大観衆の前で負けてしまい、悪者にされてしまった。
あの夜以来、板垣は緒方を憎んでいた。
富山以外にも、尾形が馬鹿にして石川剣道の弟子にボコボコにされるのを見たいと思っていたのは、間違いなくこの人だった。
緒方が初戦の相手・平野を破った時、板垣は「大丈夫、大丈夫、平野はうちの学校ではあまり強くないから、負けるのが当たり前」と心の中で言いながら、冷静な表情を保っていた。
緒方が2回戦の相手・佐藤を破った時も、板垣は「大丈夫、大丈夫、佐藤は一瞬油断しただけだから」と心の中で言いながら、冷静で軽快な表情を保っていた。
しかし、この頃には板垣の頭が冷や汗をかき始めていた。
その後、緒方は第3戦、第4戦、第5戦に勝利 ......
今まではラウンド9の相手をストレートでリング外に送り出した板垣は、もう冷静さを保てなくなっていた。
板垣の顔は、この時点で血の気のないものだった。
板垣の頭、板垣の背中、板垣の手のひら、板垣の体のあちこちから絶え間なく冷や汗が出てきた。
石川剣士の弟子たちに囲まれ、疲れ果てた緒方の姿は、板垣の意図した通りには現れなかった。
緒方は息を引き取っていたが、まだ戦いを続ける体力が残っていることは明らかだった。
石川剣士の弟子の4分の1を連続で倒した後、残りの4分の3の弟子の根性はすべて緒方に破られていた。
緒方との勝負に出た者たちがどうなっているのか、皆この目で見ていた。
9回戦で緒方が相手を倒した後は、もう誰も緒方と対戦する勇気がなかった。
ほとんどの人が頭を下げ、目を下げ、鼻を下げ、緒方を見る勇気がなかった。
ちょうどその時、大きな咆哮が鳴り響いた。
"板垣! 俺のためにフィールドに出ろ!"
爆風を聞いて、板垣の体はまず硬直した。
そして、凝り固まった首を回して音の方を見た。
爆風の持ち主は、当然のことながら緒方義成に他ならず、今は冷めた眼差しで彼を見つめていた。
緒方は刀を持たない左手を上げ、板垣に向かって指を曲げる。
"俺のためにフィールドに出てくれ、板垣。 誰もが石川検に時計を刻んだが、君は......手放してはいけない!"
ファルシャンでも誰でもいいから、緒方は今日のうちに彼らを逃がすことを考えて、彼らとは関わらないことを考えてもいいんじゃないかな
しかし、浅木と風羽の無防備な母娘をいじめていた板垣だけは、緒方が絶対に手放さない存在だった。
石川剣道の弟子たちとの戦いが始まって以来、緒方は板垣が名乗り出るのを待っていた。
しかし、今まで尾形は9ラウンドを終えて9体の敵を斬っていたが、板垣はまだ山のように動かなかった。
これにより、緒方は板垣をリングに上げるための荒技を使わざるを得なくなった。
緒方に積極的に指名された板垣のすでに青ざめた顔は、さらに血の気が引くようになっていた。
"私・・・・今日は、あなたを解放してあげよう! もうお疲れなんですね~。 このタイミングで畑を取られてしまうと、私にはあまりにも不利になってしまいますからね! 別の日にまた戦おう ......"
"もう一日待つ必要はない" 緒方は板垣に "今から挑戦するぞ!"と焦って割り込んできた。
"Tch ......" 板垣の不安げな表情が少し激しくなった。
板垣は、この際、周りの師団の兄弟たちが助けてくれることを期待して、周囲を見渡した。
例:立ち上がって "挑戦するぞ!"と叫ぶ ならば 緒方の戦いの誘いを板垣が阻止するのは 当然のことだ
しかし、板垣は兄弟を見渡せば見るほど、失望感を募らせていった。
彼の視線はある種の疫病のようだった。
その視線に振り回された師団の兄弟たちは、板垣が自分を見ていることに気づかないふりをして、慌てて顔を背けた。
誰一人として板垣を助けようとしなかった ......
いや、正確には誰一人として緒方に再挑戦する勇気がなかった ......
緒方が指名したのではなく、板垣が指名したことを密かに喜んでいた者もいた。
石川兵馬は板垣の恥ずかしさに気づいた。
軽くため息をついた後、兵馬は板垣を助けるように声をかけた。
"緒方くん、今日は板垣くんの体調がちょっと悪いから、バトルに出られないんじゃないかな?"
"体調不良? ふむふむ、無防備な母娘を神がかり的にいじめ、大切な服を汚すことができる男は、"体調不良 "の男には見えない。"
緒方は再び板垣に指を引っ掛けた。
"板垣、まだ侍なら早く俺のために土俵に上がれ!"
"お前!" この時点で石川兵馬ですら「緒方くん!」と怒られていました。 若者のように傲慢になるな!」と。 そんな傲慢なことをしていたら、いずれ苦しむことになるぞ!"
"たぶん" 緒方は冷静な顔で "でも、今後どうするかは私に任せてください "と言った。
そう言って緒方は目をそらし、表情を曇らせて無言の板垣に視線を戻した。
"板垣、なんでまだそこで『不動』なの? 長時間座っていると足がしびれて立ち上がれなくなっていませんか? それとも足が弱くて立ち上がれないのは、私が名前を付けてビビらせたから?"
緒方 ...... いや、その時の館内の皆の目、注目は板垣に集中していたと言うべきだろう。
その視線に耐えながら、板垣は黒い顔でゆっくりと立ち上がった。
あれだけ緒方にバカにされて、あそこまで上がらなかったら、将来的には笑いの種になってしまうだろう。
緒方に追い詰められた板垣は、黒い顔で立ち上がることしかできず、スタンドから剣を取り出し、道場の中央へとゆっくりと歩いていく。
剣術を知らない素人でもわかることだが--板垣は今、緊張していた。
板垣の体中の筋肉は全て硬く緊張しているように見えた。
それどころか、緒方はリラックスした体勢で臨んでいた。
無表情で落ち着いた顔で、剣を掲げて中腰になった。




