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18. ララとセルジオ

あれからララとセルジオを連れて学園へ行ったこともあり、新たなる特別待遇に噂になっているようだがもう諦めた。

父がやること全てがこの学園始まって以来初の待遇ばかりで、歴史を重んじるこの世界では簡単に受け入れられるものではないのだろう。

2人に促されるまま席へつくとまだ半数以上は課外授業から戻っていないようだ。

数人とはいえ、聞こえる謂れのない言葉はあまり気分の良いものではなく、小さくため息をこぼした。


「リリアナお嬢様、少しの間ララの勝手をお許し願えますか?」


「え?私に許しなんて必要ないよ?私はララの気持ちを大切にしたいし制限なんて何もないんだから。」


「リリアナお嬢様…。ララは今とても幸せでございます。」


「ふふ、ララは私の大切な存在だもの。当たり前だよ。」


「ありがとうございます。」


ララは嬉しそうに微笑んでから遠くで話している令嬢達へと視線を向けた。

その瞳はリリアナを見ていたのとは違い一瞬にしてこの場の空気が凍り付いてしまいそうな程冷たいもので、彼女から怒りが伝わってくる。

今まで一度もこれほどまでの怒りをララから感じたことはなく、勝手といった内容を聞かないまま承諾したが、もう少し考えてから発言するべきだっただろうか。

相手の令嬢が私の代わりにララを傷つけるのではないかと心配になる。

何か言おうかと口を開く前にララから相手に聞こえるような声量で棘のある言葉が出てきた。


「皆様はリリアナお嬢様のように大切にされていないようですね。お可哀想に。」


「ラ、ララ?私は気にしてないからだいじょう…。」


「リリアナお嬢様が気にされなくても私の気に触りました。どちらのご令嬢かは存じませんし全く興味もございませんが、リリアナお嬢様と同じ場所に立つことさえ出来ないような者が恥ずかしげもなくよくそのようなことを口にできますね。」


「なんですって!!侍女の身分でわたくしたちになんて口を!!」


「確かに私は侍女です。しかし、お仕えしているのはルーディリッヒ公爵家であり、リリアナお嬢様ただお一人ですから。貴女方に優しくしたところで何のメリットもございません。」


「メリットって侍女の態度はリリアナ様の責任ですのよ!」


「承知しております。私もリリアナお嬢様にとって有益な方であればそれ相応の対応を致しますが、敵意を向けるようなお方は邪魔者ですから徹底的に潰します。旦那様からもそのように仰せつかっておりますから。念のためお伝えしておきますが、ご自身のお父上にどれほど懇願されても私に何の罰も与えることはできませんよ。それどころかリリアナお嬢様の心を傷つけたことが旦那様に知れればお家断絶の危機でしょうね。」


「侯爵家のわたくしを脅すつもり…?」


「いいえ、脅しではなく事実です。旦那様がされなくても私1人で簡単に潰せますけど。」


「っ。」


「…貴女、ララといったかしら?」


「はい。」


「ラティラ・アンティル・クリスフォート。」


1人の令嬢がそう呟いたのと同時に周りが一気にざわめいた。

その中で何かを知っていたセルジオと全くピンと来ていないリリアナだけが黙っている。


「ロベリア皇国最強騎士とまで呼ばれていた貴女が何故こちらに?」


「騎士…?騎士ってセルジオと同じ?」


「はい、私も驚きました。彼女はロベリア皇国の騎士の中でも最高位の存在。それゆえに他国にまでその名を残すほどです。」


「昔の話ですよ。旦那様にリリアナお嬢様の専属侍女を賜った際に捨てました。」


「本当の話なのかしら?ロベリア皇国は内部情報を得るために女性騎士を派遣していたと聞いたことがあるわ。」


「ロベリアがどうかした?あ、おはよー。リリアナちゃんは今日も可愛いね~。」


「エレット皇子様?おはようございます。」


「あれ、ラティラとセルジオじゃん。久しぶり~。」


「お久しぶりです。」


「お久しぶりでございます。」


「二人とお知り合いなんですか?」


「ラティラは元皇族の騎士だし、セルジオは騎士の強さを競う催しで前優勝騎士と互角に戦ってたからね。気になって猛アタックしたのに断られたから印象深くて。リリアナちゃんの護衛は断らないってどういうこと?」


「…それは。」


「まあリリアナちゃんを君が守ってくれるなら安心できるからいいんだけどさ。」


「二人はそんなに有名なのですね…。今日の手合わせでとてもお強いというのは理解したのですが、わたくし何も知りませんでしたわ。」


「知らなくて当然だよ。公爵が危険な催しに参加させるなんて許すはずもないし。ねえ、リリアナちゃん。君はラティラのことどう思う?」


「え?」


「侍女でいるのは内部情報を知るためだと思うかな。」


「…もしそれが本当だとしても何が問題なのでしょう?」


「へ?」


「ララがそのために本来やらなくてもよいわたしくしの世話をしてくださっているのであれば、ご迷惑をお掛けしている事への謝意と感謝しかありませんわ。内部情報を知りたいのであればわたくしがお父様へお話ししてみますからいつでも辞めて良いのですよ?」


「エベレット皇子、お嬢様に変なことを吹き込むのであれば例え皇族であっても容赦はしませんよ。」


「ごめんごめん!面白い妄想してるからついね。そんなことでラティラを侍女にしようとしてもあの公爵にバレないわけがないし、リリアナちゃんの側に置くようなヘマしないよ。父上曰くあの人はリリアナちゃんの事になると人が変わるって言ってた。」


「ではなぜわたくしなんかの侍女に?」


「なんかではありませんよ。リリアナお嬢様のように素晴らしい方の侍女になれてララは本当に幸せ者です。初めて生涯をかけて仕えたいと思えたのがリリアナお嬢様ですから。」


「それじゃあ皇族の立場がないけど!」


「本当のことなので仕方ありません。」


「そうだろうねー。いきなり最高位の騎士を引退するって宣言してから一瞬で居なくなったしどこでリリアナちゃんと出会ってたんだか。」


「それは秘密です。これでわかりましたか?私が貴女を潰せるといった意味。」


「セルジオとラティラだけは怒らせない方がいいよ。俺も絶対怒らせられない相手だね。ラティラはまだ怒ってるのがわかりやすいけど、セルジオなんて無言でバッサリ行くもんね。」


そう言ったエレットが示した先を見ると鞘に手を掛け、すでに半分ほど刃が出た剣を握ったセルジオが見える。

彼は無表情ゆえに何を考えているかわからないところがあるが戦闘準備は万全だったようだ。

そんな姿に焦るリリアナ。


「セ、セルジオ?その剣は危ないからしまいませんか…?」


「大丈夫です。リリアナ様が次に瞬きされた時にはしまいますから。」


「それはあの、どういう?」


「そりゃあの辺の令嬢の消すからしまってもいいってことでしょ。本当にセルジオは怖いね~。ラティラも侍女のふりして服の中に武器をたくさん隠し持ってるんでしょ。」


「当然です。」


「ララ、武器を持っているの…?」


「はい。」


にっこりと笑みを浮かべるとメイド服の下から次々と剣を取り出していく。

そんなに沢山何に使うのかと思ってしまうほどだが、令嬢達には意図がわかったのだろう。

震え泣きそうな表情をしながら次々と謝罪の言葉を述べていくのだった。

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