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11. 休息と疑問

あれから数日。

体調は回復し元気そのものだが、両親から学園に通う許可が下りるはずもなく自宅療養という名目で怠慢な日々を過ごしていた。


「リリアナお嬢様、南国フルーツパイを焼いてみたのですが食べられそうですか?」


「食べる!ララの作るお菓子は美味しいから大好きだよ。」


「そういっていただけると光栄です。」


「でもフルーツはどこから?季節的にも南国のフルーツはお店に置いてないんじゃない?」


「俺が持ってきたんだよ。」


「エヴェレット皇子?」


「エレットでいいって!元気そうで安心したよ。」


「あ、ありがとうございます。でも学園は?」


「リリアナちゃんが来ないんじゃ行く意味無いからさ。一度国に帰ったんだ。シェリルはフリージア王国の王子として仕方なく行ってるだろうけど、ニコも国に戻ってるって聞いたよー。」


その話を聞いて少し安心した。

両親と兄達による王子達へ根回しがあるとはいえ、私が学園に行けない間に王子達がメアリーに洗脳されて避けようとしているイベントが強制的に起こるんじゃないかと不安があったのだ。

安堵の息を吐いているとエレット皇子の顔が目の前にあり驚いた。


「何考えてるの?」


「え。」


「リリアナちゃんは何も心配しなくて良いよ。俺が守るからね。」


「君が守る必要はないよ。」


「ほんと油断も隙もないね。」


「あぁ、お兄さん達か。お邪魔してまーす。」


「シェリル王子といい、リリアナは厄介な王子ばかりを寄せ付けるんだから。」


「それだけリリアナが魅力的ってことなのは自慢だけどさ。僕としては心配だよ。」


「厄介って酷いですねー。俺一応皇子なんですけど。」


「「皇子だろうが関係ない。」」


真面目な顔をしながらハモる二人。

いつも通りの日常なのに何だか面白く感じ、ふふっと笑い声を溢すと騒いでいた3人がいきなり静かになり私へと視線を向ける。


「?」


「やっと笑ってくれた…。」


「ずっと辛そうな顔してたよ。」


「そんなに…?」


「なんだか楽しそうだね。」


にこにこと笑みを浮かべながら入ってきたのは父で、後ろに着いていた従者達はリボンのかけられた大量の箱を持ってきていた。


「リリアナにパパからのお土産だよ。」


「どこかに行っていたの?」


「城下町に用があってね。そこでリリアナに似合いそうなドレスや小物を見つけてしまって色々買ってきたんだ。」


「これ全部私に…?」


「そうだよ。開けてみて!」


父に促されるまま箱を開いてみると、青薔薇が刺繍されたシフォンドレス。

そしてそれに合わせたパンプスが準備されている。

確かにとても精巧な作りで綺麗だが、毎回こんなに買ってこなくてもいいのにとも思ってしまう。

元の私は一般的なサラリーマンの家庭で育ったこともあり頻繁にプレゼントを買って貰った記憶はない。

そう思うと悪役とはいえ公爵令嬢万歳だ。

それにしても今回のヒロインとの出来事で王子達に嫌われるかもしれないと腹を括っていたのに、これほど周りから心配されるとは思ってなかった。

今のところリリアナ > ヒロインの構図が定着しているようで、これもゲームの世界のリリアナという少女の皮を被り、死亡フラグを回避するべくひたすら良い子だと認められるよう行動してきた結果か。

さすが、私!

そう自分を誉めながら心のなかでガッツポーズをする。

ただ、あれから父達はメアリーの話を一切しようとしない。

目を覚ましたとき何があったのだとか色々聞かれると思っていたから拍子抜けすぎて逆に驚いたものだ。

彼女は本当に私の知っているヒロインなのだろうか。

ララから無理矢理聞き出した情報では彼女の言うメラルロットという子爵はこのフリージア王国には存在しないらしい。

確かに、ゲームをプレイ中も彼女の家族が出てきたのを見たことがなかった。

そして、彼女にかけられたという黒魔術を使った呪い。

これももちろんゲームをしていたときには一度も聞いたことのないワードである。

ただ、このゲーム自体は中世ヨーロッパとフランス王朝をイメージして製作されたと書いてあり、私の記憶が間違っていなければ歴史上中世ヨーロッパ辺りで魔女狩りが行われていたことがあったはずだ。

でも、これは全年齢対象ゲーム。

そういった過激な内容は織り込まれていないと思っていた。

しかし、実際には黒魔術や呪いというワードが出てきた上にその昔には使われていたという。

その魔術というものは一体どの程度なのかが気になる。

漫画にあるような魔法的なものなのか、祈りを捧げて血文字を書くカルト集団のようなものなのか、それとも薬草や医学に精通した女性を迫害した歴史と一致するようなものなのか、正直全く想像がつかない。

とりあえず黒魔術について書室で調べてみるのがいいだろう。

そんなことを考えながらプレゼントの山を開け、次々と出てくる髪飾りや装飾品の数々の説明を始める父の話を聞き流すのだった。

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