愛情には限りがあるの?
ぼくのママは、いつもぼくにこう言っていたんだよ!
『ねえ、よく聞いて良太郎! “愛情には限りがあるの!” だからママは
良太郎に、最後の最後まで私の愛情をあなたに注ぎ続けるわ!』
『___ママ!』
『私が、もっと体が丈夫ならね! 無限にあなたに愛情を注げるのに...。』
『・・・ママが悪いんじゃないよ。』
『___貴方は、なんていい子なの! 私の愛する息子。』
『出来るだけ! ぼくはママの傍にいるからね!』
『___えぇ! 私の傍にいて。』
『___うん!』
*
___そうやって、ぼくのママは3年前に亡くなってしまったんだ。
ぼくには、初めから“パパ”はいないんだよ!
ママが、パパはぼくが産まれる前に事故で亡くなったと言っていたから。
【___ぼく、ひとりぼっちになっちゃった。】
▽
___ママは、こういう事もあろうかとママの妹にぼくの事をお願いして
いたんだよ。
ママの妹は、ママにそっくりの綺麗な女性なんだ!
性格も、ママみたいに優しいんだよ!
・・・ただね?
ママの妹は、独身でぼくを引き取るか?
・・・凄く悩んだらしいんだ。
結婚も、子供も産んだこともない女性が本当にぼくを育てていけるのか?
ぼくのおじいちゃんおばあちゃんにも言われていたらしいよ。
『なあ、暁美! 本当に良太郎をお前が引き取るのか? 別に俺たちが
あの子の面倒を見てもいいんだぞ! お前はまだ結婚もしてないんだ!
いい男性ができたら? 良太郎はどうなるんだ?』
『・・・お父さん! それもわたしなりによく考えたの! これは姉さん
との約束だから、絶対にわたしは考えを変えないわよ!』
『___この子ったら? 本当に誰に似たのか? 貴女の好きなように
しなさい!』
『___お母さん、ありがとう!』
___ぼくは、ママの妹の暁美おばさんと二人暮らしをはじめたんだよ。
おばさんは、ママと違って体育会系というか?
シャキンシャキンした人なんだ。
自分で決めた事は、絶対に曲げないしね!
『___ねえ、おばさん、ぼくココに居ていいの?』
『何を言ってるのよ! 良太郎はわたしとこれから一緒に住むんでしょ!
ココに居ていいに決まってるじゃないの!!!』
『・・・でもさ、おばさん!』
『___良太郎、わたしのこと“おばさん”って呼ぶのやめようか! せめて
暁美お姉ちゃんとか、ねえ?』
『___分かったよ、暁美おばさん。』
『___うーん、やっぱりおばさんになっちゃうよね? まあ、いいか!
良太郎、お腹空いた? なんか作ろうか?』
『___うん。』
『・・・何が食べたい?』
『うーん? ハンバーグかな? ママがよく作ってくれたんだよ。』
『じゃあ、“おばさん”が作ってあげるね! おばさんのハンバーグもママの
ハンバーグに負けないぐらい美味しいだから!』
『___ううん。』
*
___それから、おばさんはぼくにたくさんの愛情を注いでくれたよ。
ママの分もいっぱいね!
・・・でもおばさんは、悩んでいたみたい。
ぼくに対して、まだまだ愛情が足りてないんじゃないかって。
【___本当のママじゃないから。】
___おばさんがそんな風に想ってくれてるなんて知らなかったから。
反抗期の時は、喧嘩もしたんだ。
___おばさんをたくさん、悲しませてしまった。
それでも、ぼくに愛情を注いでくれたおばさん。
・・・ある時ね?
おばさんがこんな事をぼくに言ったんだよ。
『・・・どんなに頑張っても! わたしは良太郎の本当のママじゃない!
だから、良太郎にどんなに愛情を注いでもまだ足りないと思うの。
おばさんの愛情は、良太郎に届いている?』
『___お、おばさん、』
『わたしは、あなたのママみたいになれてるのかな? 姉さんは凄く優しい
女性でね! わたしの憧れの女性でもあったのよ。
そんな女性に、わたしはなれてるのかな?』
『・・・ママも、そんな事を言っていたよ。』
『___姉さんが!?』
『うん! “愛情には限りがあるの!” だから最後の最後までぼくに愛情を
注いであげるんだって! そう、言ってた。』
『・・・そう、』
『おばさんは、ぼくにたくさんの愛情を注いでくれているよ。ぼくは知ってる!
だからね! ぼくもおばさんの期待に応えたいんだ!』
『___良太郎!』
『もう、一人で悩まんなくてもいいんだよ、おばさん!』
【グッ!? うっっ、】
___おばさんが、泣いちゃったんだ。
ずっと、悩んでいたのかな?
___でもね?
ぼくとおばさんとの“絆が深く繋がった”感じがしたんだよ。
おばさんは、ぼくの【もう一人のママ】なんだとぼくが気づいた
瞬間だったんだ!
【いつも、ありがとうおばさん!】
最後までお読みいただきありがとうございます。