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転生先で魔法の勉強したら強くなりすぎた件
その日は、いつもと同じ1日だった。たまたま、担任の先生の虫の居所が悪かったり、自転車の鍵をなくしたりなんてことがあったけれども変わらない1日だ。遅ればせながら、僕は家路に向かう。早く帰って宿題しなきゃなと思っているとスッと目の前に一際黒い影があった。黒い猫だ。満月の夜によく似合う。最近めっきり野良猫も見なくなったなと感じながら、近付こうとしたその時――
ゴツンと重たい衝撃が後頭部に響いた。目の前が暗くなる。いや、日が落ちているのだから既に暗いのだけれど。
「ゴメンネ…」
ひどく冷たくて綺麗な高い声。かすかに視界に捉えたのは長い髪と僕を襲ったであろう凶器。ステッキーのようだ。1500円くらいの安物のように感じられる。1500円に殺される僕の命の価値とは…
「ついてねぇな」
一言呟いてから僕は、完全に意識を失った。