第二王子。
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「あの…ライナール?」
「なんですか?」
「レオンハルト様はあのままでよろしいのかしら…」
「さあ?まぁ、大丈夫ではないですか?馬鹿は風邪を引かないと聞きますし。」
「そう、かしら…それと、あの、下ろしていただけない?」
抱えた腕の中で、困った顔のシャルル嬢。
「ダメです。」
にこやかに告げる私。馬鹿王子をのした後、驚きすぎたのか、立てないシャルル嬢を姫抱っこで搬送することにした私は、散策路を突っ切って学舎へ向かっていた。
「この様な運び方をされるのは、わたくし恥ずかしいのですが…」
「おんぶよりよいでしょう?それにまだ歩けないのではないですか?せめて休める所まで我慢なさって下さい。」
「…はい。」
そりゃ恥ずかしいかもしれませんね。なんせ注目の的だ。
王子お気に入りの庶民と王子の婚約者という、対戦カードみたいな組み合わせの私たちが、姫抱っこで練り歩いているのだから。
でもさ、しょうがないじゃない?私より頭半分背丈が低いだけなのに、羽のように軽いシャルル嬢なので、小脇に抱えるとか担ぐとか、やれないこともないけれど、ソレはやっぱり違うでしょう?侯爵令嬢だよ?似合わない。それはもう恐ろしく似合わない。リアル姫には姫抱っこ一択でしょ。
「貴様っ、シャルを放せっ!!!」
うわぁ。出たよ。
嫌々声の主へ目を向ければ、第二王子のコンラート殿下が居た。第一王子程嫌いではないけれど、苦手な相手だ。まだ正式に義姉となっていないシャルル嬢に対して、シスコンの頭角を現していると有名で、なんだかんだといちゃもんを付けてくるのが大変煩わしい。
「シャルル様、下りますか?多分次はコンラート殿下に抱っこで搬送されますが。」
「恥ずかしいので、立ち止まらないで下さい!」
「だそうです。失礼します。」
「え、ちょ!待て!!」
無視してずんずん歩みを進める。
馬鹿王子より断然ましだと思っているけれど、シャルル嬢が絡むと第二王子はポンコツに変わるので、今は関わるべきではない。シャルル嬢も分かっているのだろう。きっと彼は、シャルル嬢を運べる喜びのあまり、まずは締め殺さんばかりに抱き締めるであろう事を。
「貴様っ、シャルに何をした!」
「何かしたとしたら、私ではなくラインハルト殿下です。」
「兄上?くっ…あの人はまた…いや、貴様が兄上を操っているのではないか!」
着いてくるつもりらしい第二王子は、キャンキャンと喧しい。
「やめて下さい!コンラートっ!」
「シャル?!」
「皆様ご覧になってるわ!」
私にシャルル嬢、そして第二王子。目立つどころではない。遠巻きにしているが、全身が耳位のつもりで聞き耳を立てているのがうかがえる。
「でも!」
「黙って!」
そういえば、この二人って幼なじみって話聞いたなぁ。ぎゃいぎゃい喚く二人は、いつもの威厳とか高貴さとかをかなぐり捨て、年相応の少年少女にしか見えない。イメージとか、もう少し気にした方が良いと思う。いや、マジで。
そんな第二王子は、第一王子より5歳年下である。しかしながら、彼は私たちの翌年の入学生だ。つまり、おつむが大変よろしいのである。第一王子も勉学は得意なようだが、第二王子の方が頭が良いとの噂だ。人格も、シャルル嬢さえ絡まなければ、問題無い様に見える。身分の隔たりなく会話し、討論し、相手を認める度量も、柔軟性もある。私以外には、ね。
我が国の王朝が実力主義だったら、次の王は彼だったかもしれない。
まぁ、第一王子に敵わない点もあるんだけどさ。
自分で思っていたものと、じりじり差が出て来ています…戻せるかなぁ…うーん。




