悪い子。
「うちの子達が悪いのに…ありがとう」
妃殿下に、お礼を言われてしまった。陛下はずいぶん過激な事を言ってたけど、どんな親だって子供が前科持ちになって嬉しい筈はない。確かに嫌だったし迷惑だったけど、法の裁きが必要なほど私が苦しんでいたかといえば、そうでもない。彼が王子でなかったとしても、訴えるなんて考えてもいなかっただろう。感覚には個人差があるとはいえ、刑とか、本当にびっくりした。
私と陛下のやりとりに、王子兄弟がホッとした顔でこっちを見ており、コンラート殿下と目が合った。
友達のお兄ちゃんを前科持ちにするほどの害は無かったから、
安心しなさいって。
「分かった。リアちゃんの善意を王家は有難く受け取ろう。しかし、何らかの誠意は示させたいと思う。ソレについては断ってくれるなよ?あぁ!ついでに気が済むまで馬鹿息子を殴ってくれても構わない!残念な頭だが、体だけはちょっとやそっとで壊れないよう鍛えたと、親として自信を持っているからね!」
とっても良い笑顔の陛下。確かにレオンハルト殿下は丈夫だ。鼻血を吹いて倒れても、翌日何事もなかったかのように振る舞える程度には。しかしごめんなさい、陛下。お宅の息子さんは既に殴られています。
「では、次はマクシミリアンね。」
「はぁ?!」
やっぱりというか、当然なんだけど、妃殿下の言葉に不満と驚きを示したのは、ロットだ。
「なんで私の名前が出るんです?!私には関係ない!」
「お黙んなさい。マクシミリアン?長い付き合いなのだからわかるでしょう?レオンハルトはそこそこ文武に秀でているけれど、そこそこなの。賢い方ではないわ。」
さり気なく辛辣な妃殿下に、何とも言えない顔をするレオンハルト殿下と、そんなお兄ちゃんを気遣わしげなコンラート殿下。まぁ、事実だものね。しょうがない。
「だからなんです?私は関係ないでしょう!」
「この子一人で婚約破棄なんて思いつきもしませんよ。その上で、こんなこと、わたくしやお父さんに相談する子でもないの。相談するとしたら貴方しかいないのよ、マクシミリアン?また余計なことを吹き込んだのでしょ?」
「私は知りません!」
彼は思いの外正直なのかもしれない。否定はするものの、ものすごく目が泳いでいる。
「マックス?貴方は、子供の頃から嘘が付けない正直な子なの。そろそろ自覚なさい。」
やっぱりそうなんだ。ぐぬぬとか、うぬぅとか、妙な唸りを上げるロットは、それでもまだ認めたくないようだ。
「どうしてそう、意地悪をするの?レオンハルトが生まれたとき、僕がお兄ちゃんになるって言ってくれたのに。」
ロットに負けず劣らず正直な王子兄弟が、それぞれ微妙な顔をする。レオンハルト殿下は悲しそうだが、コンラート殿下はあからさまに嫌そうだ。お兄ちゃん発言が嫌だったんだろうなぁ。
「マクシミリアンはこの子達より大きいのだから、もう少し先を考えて行動できるでしょう?」
「婚約破棄はマズいとか。」
「学園内で済むはなしではないとか。」
「シャルルちゃんのお父様が怒るとか。」
「問題になったとき、誰が唆したかすぐわかってしまうとか
。」
「バレたら私たちにも、お前のお母様にも怒られるとか。」
両陛下が交互に言いつのる言葉に、顔を真っ赤にして唸っていたロットだが、最後の言葉にすっと血の気が引き、真顔になる。
「お姉様にもちゃんと言っておきましたからね?今回の悪戯は質が悪すぎたわ。お姉様、それはもうカンカンよ?」
おや?
「身から出たサビだ。帰ったらしっかり叱られなさい。」
伯爵家じゃなくて、ロット伯爵令息の単独犯?だから叱られるって?
真顔のまま顔色を白へと変えていくけゆど、ロットのお母さん、どんだけ恐いんだろう。妃殿下のお姉様って想像すると、妃殿下みたいな方かなぁとしか想像が出来ないけど。
「もちろんうちでも誠意は見せてもらいますよ?けれど、まず、今すぐすることがあるわよね?マックス?」
「……」
「わたくし悪い子は嫌いよ?」
「!…っ。」
何この幼児と母のやりとりみたいなの。悪い子であり、頭の悪い子であるのが確定なので、彼が少しでも反省するのであれば、妃殿下には是非最大限嫌ってやって頂きたい。
「…………すまない。」
聞き取れるかどうか程に小さい声で、本当に不本意そうな謝罪を口にする。子どもかっ。
「マックス!いい加減になさいっ!!」
「申し訳ありませんでしたっ!」
うん。子どもだな。




