暖かな部屋。
冷たく薄暗い地下牢へ投獄されるものと思っていたが、通されたのは予想に反して、明るく暖かな部屋だった。花の様な良い匂いまでする。
「お呼び立てして、ごめんなさいね?」
室内では、えっらい美人さんが待ち構えていた。結い上げた髪は金糸の様に煌めき、透けるような肌はとても二児の母とは思えない艶感。ぱっちり二重で愛らしいのに、どこか色気を感じさせる大きな碧眼。実は私も絵姿を持っている。
サリー妃殿下。
うっそ。
私は慌てて膝をつき、頭を垂れた。だってお妃様ですよ?礼を尽くしたいと思えないぼんくら王子サマとは格が違う。いやまぁ、入学当初はしてたけども。遠い過去の話だわ。
「あらあら。お立ちになって?ここはわたくしのプライベートなお部屋ですから、かしこまらなくていいのよ?同窓生のお母さんにそんな礼はおかしいわ。さぁ、お嬢さん方は気楽になさって?お茶とお菓子を用意しましたからこちらにどうぞ?」
気楽には無理です。
と思いつつ、無視して礼をとり続けられないので、おずおずと顔を上げサリー妃殿下を見ると、女神のような微笑みを向けて下さっていた。というかもう、女神だ。眩しい。
「リア、妃殿下のお言葉です。参りましょう?」
シャルル様に促されようやく立ち上がるが、今まで感じたことの無い緊張状態。これが王族オーラのなせる技?!
「レオンハルト、コンラート、貴方達はそっちに立ってなさい。マクシミリアンもよ?」
窓辺を指さす姿まで神々しい。美しすぎて何だかもう怖い。
「え?!何で私まで?!」
「マーックス?た・っ・て・な・さ・い?」
女神な笑顔のままなのに、ものすごい威圧感。
「…仰せのままに。」
何とか返事を返すものの、かなりビクついた様子のロット。それ以上にビクついた様子なのは、王子兄弟だ。走ったわけでも無いのに、二人とも汗だくだ。
「貴女がリアちゃん?シャルルちゃんやうちの子達と仲良くして下さっていると聞いているわ。どうもありがとう。」
眩しい笑顔の妃殿下。いやぁ…コンラート殿下とはお友達だけど、レオンハルト殿下はどちらかというと敵ですぅ…とか言えない。
「お初にお目もじいたします。リア・ライナールです。勿体ないお言葉ありがとう存じます。」
「うふふ。そんなに緊張なさらないで?わたくはただのおばさんなのだから。さぁ、お茶をどうぞ。このお菓子、わたくしのお気に入りなの。シャルルちゃんも召し上がれ。」
ただのおばちゃんは眩しくないです…
「ありがとう存じます。頂きます。」
にこやかに返事をするシャルル様。シャルル様と妃殿下の相乗効果ったら無い。ものすごく眼福だけど、眩しくて目がつぶれそう…
「ありがとう存じます。頂きます。」
シャルル様にならいお茶に手を伸ばす。最高級品なのはな匂いでわかるけど、緊張で味が分からない!
ミルク飲み人形よろしく、ひたすらお茶を流し込み、お茶同様、味の分からないお菓子をもぐもぐやっていると、バタンと扉が開いた。
「やぁ!すまんすまん!仕事が終わらなくてなぁ。もうみんな揃ったか?あ。私にもお茶を頂けるかな?」
コンラート殿下と同じ、茶色の髪と瞳。ダンディー寄りのハンサム。知性を感じる目元だけど、ニコニコと人の良さそうな笑みを浮かべていて、人懐っこい印象がする。この方を知らないわけが無い。
国王陛下!!!
国の最重要人物の登場に、思考が真っ白になりかけたが、なんとか床に膝をつく。
「やめてやめて!若い娘さんがそんなことしない!この部屋では国王じゃなくてただの父親である約束なんだ!な、母さん!それにね正直、私は苦手なんだ。子どもに礼をとられるの。なんとなく気まずくっていけない。ここだけの話だがね?」
「そうね、お父さん。ほらほら、リアちゃん?うちのおじさん恐くないから、ね?」
やたらとフレンドリーなお言葉に促され、元のソファーへ座ったけど…どういう状況よコレ!




