頭突き。
読んで下さって、ありがとうございます!
ブクマ、すごくすごく嬉しかったです!!
「わたくし、思い違いをしていたようですね。」
気丈に微笑むシャルル様。笑顔が儚げで可憐で、痛々しい。
「シャルル様?」
「貴女がレオンハルト様を籠絡したのだとばかり、思っていましたが、あれ、は、レオン、ハルト様、のご意志、だ、た」
「シャルル様?!」
ぼろぼろと大粒の涙をこぼしながら、その場にへたり込む。
「ぅ、うぅ、あ、あああぁっ」
からの、本気泣き。
淑女の鑑とまで言われる侯爵令嬢の本気泣きという緊急事態!
「シャルル様っ?!え、どうしよう!だ、大丈夫ですか?!」
「大、丈夫、で、は、ないですうううう」
「です、よね、あぁどうしよう…とりあえず、あの、これ」
私が差し出すハンカチ受け取ったものの、握りしめて更に号泣するシャルル様。どうしよう。どうしたらいいの?!てかなんで泣き出した?!!
「なんだ、聞き覚えのある声だと思ったら。お前か。」
「?!」
突然の声に振り向けば、件の馬鹿王子が茂みをかき分けているところだった。
「あ。リア!こんな所にいたんだね!まさかこいつに酷いことをされたりしてないか?!」
へたり込んで泣いているシャルル嬢と、それを見下ろす私。この立ち位置を見たら、普通出てこないであろう台詞。
「さぁ、リア、もう大丈夫!私が君を守ってあげるから。こちらへおいで。」
どこまでも空気の読めない馬鹿王子は、満面の笑みで私の手を取る。こいつ本当に気持ち悪い。
摑まれた手を振り払い、ついでに突き飛ばして転ばせる。不敬罪でも王族暴行罪でも受けて立つ!
「リア?!」
「殿下、シャルル様が泣いているのが見えませんか?」
「え?あぁ。泣いているな。それより」
「殿下っ!!!!」
言葉を遮られてきょとんとする。
「シャルル様が泣いているんですよ?」
「そいつは泣き虫なんだ」
「淑女が泣いていたらお慰めなさるのが殿方の、シャルル様が泣いていたら、お慰めなさるのが婚約者の役目では?」
「そいつはいいんだ。もう婚約者でもないし。」
はぁ?!
シャルル様の泣き声が大きくなる。
「私は、そいつとは結婚しない。君を妃に望んでいる。」
尻餅をついたまま、蕩けるような笑みを浮かべる馬鹿王子。一層激しく泣くシャルル嬢。
もう、我慢の限界。
「…そう、ですか。そんなにも私を求めていらっしゃるんですね?」
「あぁ、ああ!そうだ!やっと分かってくれたのか!!」
喜色満面ですり寄る王子と抱擁-…
…-するかのように側頭部に手を添え、そのままがっちりホールドする。
せーの。
「がっ!!!!?」
短い叫び声。
ゴリッという感触。
パタパタと音を立てて枯れ葉に落ちる鮮血。
私の頭突きは、見事、馬鹿王子の鼻面に炸裂した。
「恐れながら、殿下?私は貴方を必要とはしておりません。」
白目をむいて倒れている軟弱馬鹿王子には、聞こえていないかもしれない。そのまま起きてこなければ良いのに。
振り返れば、いつの間にかシャルル嬢は泣き止み、ぽかんとした表情でこちらを見ていた。
「シャルル様、この様なところにいてはお体が冷えてしまいます。立てますか?学園に戻りましょう?」
日が傾いてきている。いかにふかふかな落ち葉の上とはいえ、へたり込んでいるシャルル嬢はお尻がさぞ冷えている事だろう。女の子に冷えは大敵である。
「え?あ…ええ。あの、その…」
シャルル嬢の視点が右へ左へ定まらない。
しまった。驚かせてしまったかしら?
サブタイ、「せーの」と迷いました。




