ヤバいんではない?
「なんでって…」
私達が居るのは、伯爵家令息と偶然出くわすような場所ではない。王宮内でもなければ、貴族専用サロンでもない。商業地区のメイン通りですら無い道端である。そんなところをふらふらしている知り合いは、普通お貴族サマではない。
「…待ち伏せてたんですかね?」
コンラート殿下は難しい顔で黙り込んでしまった。待ち伏せだとしたら理由は何かしら?単純にデートの妨害…だけなら他にも方法はあるよね。
ここじゃないといけない理由がある?
見回してみるが、至って普通の道だ。幅は2頭立ての馬車一台と少し。実際には色んな物が置かれていて、1頭立ての馬車が通れるかどうかという位。両脇は、二階建ての建物。右は帽子屋。左は仕立屋。共に勝手口がこの道に面している。シャルル様が居る位置から五歩も直進すれば次の道。右に曲がって3軒目が私の店。他にあるのも紳士用の小間物屋とか、床屋とか、おもちゃ屋とか、そんなのばかりだ。
「さて。世間話はこのぐらいにしておこうか、レオン。」
柔和とすら呼べる笑みを浮かべて、ロットがぱちんと指を鳴らす。
物陰から。勝手口から。前方から。後方から。
ぞろぞろぞろぞろ。
青がベースの制服。胸には銀糸で縫い込まれた王家の紋章。ロットの合図で現れた国王近衛兵隊に、私達含め道は完全に囲まれた。
「さぁ、みんな。野次馬の皆さんには丁重にお帰り頂いてくれ。ああ。そこの子供二人はそのまま。そのまま。」
私達を取り残し、野次馬達が道の外へと追い立てられる。
…とりあえず、コンラート殿下バレてるよね?これ。私もかしら…面倒くさい雰囲気がすごくするんですけど。
「な、なんだ?!何故お前が近衛兵を率いている?!」
「なんだ…だって?」
柔和な雰囲気が一変。射殺さんばかりの視線をレオンハルト殿下へ向け
「お前が逃げ回るせいだろうが!」
優男な見た目に反して鋭い一喝。
逃げ回るって、どういうこと?
「レオン、最近に父上と顔を合わせたのはいつだ?母上にお会いしたのは?呼び出しがかかっているにも関わらず、顔を見せない上、城中を逃げ回っているそうだな?あげく、講義も出ていないと聞いたよ?」
そういえば、最近同じ講義でレオンハルト殿下を見ていない。
「…何故知っている」
「サリー様が困ってらっしゃったからさ。私は第一王子、第二王子を連れてくるようにサリー様からお願いされてね。」
サリー様って、お妃様だ。コンラート殿下を見やれば、母の名が出たせいか、目をかっぴらいて青い顔色をしている。
話から、逃げ場が無いところへ追い詰める為の待ち伏せだったかと、納得がいった。
「コンラート!君はレオンの逃走を手伝ったり匿ったりしていたそうだね?君にもお説教があるから楽しみにしておきなさい。」
わー。やっぱりバレてるー。私達が隠れていた護衛を真っ直ぐに見ての発言だ。
「コンラート?!何でお前居るんだ!?」
「お隣はライナール嬢だよね?悪いけれど、君も同行してもらえるかな?」
「リア?!いらしたの?!」
わー。そっちもやっぱりバレてるー。
かくて、デート広告作戦は失敗に終わった。加えて、同行の名目で、私はついに捕縛された。
…………ヤバいんではない?




