誰?
活気とはまた違うざわめきが、シャルル様とレオンハルト殿下の移動と共に伝播していく。
実のところ、レオンハルト殿下がうち店でお茶を立ち飲みしている時からある種ざわめきは起こっていた。そりゃそうだよね。金持ちの坊ちゃん風な服装だが、王都に暮らす者なら第一王子の絵姿を見たことが無いわけもなく、まして甲冑こそ着ていないが、ガタイの良いオニーサン方を引き連れていて目立たない筈も無い。
が、間違いなくシャルル様とペアで練り歩く方が、ざわめきは大きくなっていた。シャルル様が第一王子の婚約者として有名なのもあるが、あの美少女っぷりを目の当たりにして、ざわめかない男がいるはずも無い。
このざわめき具合、宣伝効果はバッチリ期待出来そうだ。
内心ほくそ笑みつつお二方の様子を確認する。
右へ左へ商店をふらふらと見回るシャルル様は、今のところ楽しそうだし、馬鹿王子もエスコートをキチンとしている。
「どうした?変な顔をして。」
「いやぁ…まともにエスコート出来るんだなぁって意外に思いまして。」
呆れたというか、馬鹿にした様な顔で見るのは止めて下さい。コンラート殿下。
「仮にも兄上だぞ?リアに会うまではずーっとシャル専属エスコート係みたいなものだったんだぞ?アレが兄上の通常だ。馬鹿な行動こそが異常事態だったんだ。」
「へぇ。ハナから馬鹿なわけでは無かったんですねぇ。」
「…本当に兄上の事嫌いだなぁ…リアは」
「大っ嫌いです」
満面の笑みで伝えれば、些か引き攣った笑みを返された。仕方ないじゃないか。嫌いなものは嫌いなんだから。
少し先の露店で、私の大っ嫌いな第一王子に、私の大切な友であるシャルル様が、何やら店先を指さして笑いかけている。忌々しいが仕方ない。好きなものは好きなのだから。
仕方ない事は仕方ないのだ。
「…なあ。もし、兄上が本当にリアを好きだったら、どうするつもりだったんだ?今回のデートは、シャルを好きだと言わなかったら成り立たなかったよな?」
遠目にシャルル様たちを確認しながら、問われた。同じ様に視線を合わさないまま答える。
「まず、気持ち悪いのでもう一発殴るでしょ?迷惑料は、私の店で無償従業員をひと月程してもらう、というのを考えていましたが…もっと、肉体労働な職場へ送り込んで、賃金をそのまま迷惑料として受け取るというのもアリだったかもしれませんね。土木工事とか、運搬業とか。」
答え終わってコンラート殿下をチラリと見れば、信じられないと言いたげな顔でこちらを見ていた。表情が豊かだなぁ、コンラート殿下は。
「本当に、そんな答えじゃなくて助かりましたよね。レオンハルト殿下は。無駄に高い鼻の骨の一つでもへし折る勢いで殴るつもりでしたからね。私。」
「本当にな…」
複雑そうな表情のコンラート殿下から、シャルル様へ視線を移すと二件目の目的地、雑貨店へ向かう横道へ入るところだった。野次馬数人に紛れ、お二方が曲がった道を追う。
曲がった道の先に待っていたのは、私の店でデートを楽しむお二方の姿ではなかった。
二十歳前後だろうか。金髪碧眼の美形優男。それと対峙した、苦々しい表情レオンハルト殿下とシャルル様が見えた。
身なりの良さと、護衛のどうする?感から、貴族だよねえ。きっと。でも…
「誰?」




