なんでだ。
あけましておめでとうございます!
デート当日。晴れ渡った空の元、私はレオンハルト殿下一行が確認出来る、広場の片隅に居た。
手には商売敵の店の菓子パンと、他の商売敵の店のミルク入りのお茶。敵情視察をしながら、デートを監視しようとの提案だ。
提案はいい。だけどもさあ?
「このパン硬くないか?腹持ちは良さそうだがジャムも少ないし、甘みが今ひとつ足りない。店主の愛想や手際は良かったが、菓子パンを名乗るのはどうかと思うんだが、これが普通なのか?」
私の隣で、もそもそと菓子パンを囓るコンラート殿下。なんでだ。なんで居る?
「コンラート様…」
「今日はラッドだ。もしくはクルトで頼む。それから、様は要らない。」
「…クルト、なんで居るんです?」
パンを咀嚼しながら、不思議そうに首をかしげるコンラート様は、地味かつ若干古い服に身を包んでいて、庶民的上級美少年として完全に庶民に同化している。王族らしい華やかさが乏しいコンラート様ならではの完璧な擬態だ。
「なんでって、兄上が上手くやれるか見届けに?」
「いやいや、ダメでしょ。こんな所に居ちゃ。普通に食べてますけど、毒味役は?護衛は??一応コン…クルトだってお…ご両親とかが心配するでしょ?いくら何でも無防備過ぎやしませんか?」
「一応とは失礼なヤツだな。父と母には言ってないし、護衛はどっかに居るよ。目立つなと命じてある。毒味だって、ほら。居るだろ。」
顎で示した先に居るのは私である。
「は?!」
「半分やったろ?店主がな提案してくれたんだ。ねぇちゃんと半分こしやすいように切ってやるって。」
実は私の手にある菓子パンとお茶は、コンラート殿下が買ってきた物である。敵情視察の名目で押しつけられたから受け取ったけど、毒味役って!このクソガキ。
「しかし、リアと姉弟と思われるというのは心外だった…僕の姉上はシャルだけなのに。」
「私も心外ですよ。クルトみたいな生意気なのが弟とか。どうせならシャルル様みたいな妹がいい!」
「寝言は寝て言え。どれだけ似てない姉妹だそれは!」
「止めて下さいよ!クルトと私が似ているみたいに聞こえるっ」
「光栄に思っとけよ。そこは。」
「地味王子ではちょっと無理です。」
馬鹿なやりとりをしていると、視界の端に百合の紋章が見えた。目をやれば、百合の紋章を付けた馬車だった。百合の紋章はマレルリアート家の家紋だ。
従者に手を借り降りてきたシャルル様は、ドレスではなく、淡い色合いの清楚なワンピース姿。淑女ながらまだ少女の年齢故、ワンピースは膝丈。足首が隠れるような丈のワンピースが似合う様な年齢になったら、なお一層美人になるんだろうなぁ。シャルル様。思わず見蕩れてしまった。
馬鹿王子は…と見れば、やはりぽやんと見蕩れていた。アレと同じとは思いたくないが、気持ちは分かる。分かりすぎる位分かる。
コンラート殿下が参加するという珍事が起こったのは予定外だけど…さあ、デート開始だ!
本年もよろしくお願いします。




