私の店。
ライナール家は貿易を生業としている。跡継ぎは兄。普通ならどこかの誰かと政略結婚というのが、娘の役割なんだろうが、恋愛結婚だった我が両親にはそんな考えがない。
故に、稼げと言われるのは当然で、実家の傘下という扱いで、慎ましやかではあるが、いくつかの商店を私も経営している。とはいえ、私が働くわけでは無い。お小遣いで店主を雇い、置いている。利益から経費を抜いて、更にその半分が私のお小遣るい、という父との約束で運営されているので、儲けが少なければ店主の賃金だけでカツカツだ。
そんな私の店は、ほとんどが若い娘を客層としている。デートコースに組み込めれば売り上げ増は間違いない。見た目だけは良く、絵姿が飛ぶように売れるレオンハルト殿下はもちろん、婚約者であるシャルル様に憧れ、あんな風に成りたいと思う女の子も多い。その二人が行ったとなれば最大の宣伝になる。
生半可な有名人ではなく、皇太子と未来の妃、というのもポイントだ。王様とお妃様が来た店という宣伝力が将来的には手に入る。
「良い考えでしょう?」
後日詳しい説明をする、として集めたお三方の前でまずそんな話をしてみた。
「先々まで見越して、と言うのが凄いわね!女商人らしくてかっこいいわ!」
少しずれた感想のシャルル様を余所に、レオンハルト殿下は少し怪訝な顔だ。
「それは、やらせではないか?民を騙すと言うことにならないだろうか?」
「兄上、広告や宣伝はそういうものです。リアのことです、価格に見合わない様な物は売っていないでしょうから、虚偽にはなりませんよ。」
「う…うむ。そうか。」
馬鹿王子め。
一軒目は、商業地区の噴水広場の端にある、立ち飲み用の小規模カフェ。時間を潰しつつ、待ち合わせ相手が来るのを確認出来ると、殿方には人気だが、如何せん女性は立ち飲みに抵抗があるらしく、お菓子の売り上げが伸び悩んでいる。ここでレオンハルト殿下にシャルル様を待って頂いて、ついでにお菓子の一つ二つつまんでもらえれば、大いに人目を引くだろう。
二件目は、大通りから一歩奥まった場所にある雑貨店。女の子が好みそうな物がメインだが、兼用やお揃いで使うのに向く物も多く扱っている。立地が微妙故か、今のところ友達同士で購入が目立つとの報告を受けているけれど、カップルでのお揃い文化が広まれば、更に売り上げが上がるんじゃないかと思われる。シャルル様たちに買い物をしろとまでは言わないが、デートコースの定番になれれば見込みは出て来る。
いくつもの商店を抜け、大通りが終わる頃には、公園が現れる。三件目はその公園内で出している甘味の屋台。公園内にはベンチもあるので、女性客や子供の利用は多いが、カップルは余り多くないとの報告だった。今回の宣伝で新規顧客が望めると踏むと同時に、元々いる女性客の口コミも狙っている。女の子はいくつになっても噂話が大好きだ。レオンハルト殿下という宣伝力に拍車がかかる事だろう。
「と言うわけで、今お話しした三件に寄って下さい。出来れば店員にも話しかけて。三件意外はどこに寄ろうがお二人の自由ですが、同種のお店は控えて下さい。競合しますので。あ。私服護衛と毒味役をぞろぞろ連れ歩いていれば、間違いなく目立ちますので、不自然な行動はしなくて大丈夫ですからね?それから、コレ。」
注意事項の最後に、レオンハルト殿下へメモを差し出す。内容は、これから1週間以内に行われる城下のイベントリストである。
しかし、最も伝えたい事はイベント日程ではない。
「シャルル様がつまんなそうな顔してたら、頭突く。」
メモを渡す瞬間に、満面の笑みのまま最低音かつ最小音で、馬鹿王子にのみ聞こえるよう、伝えると、馬鹿王子は若干青ざめた様だった。
来年もよろしくお願いします!




