広告になって貰いたいんですよ。
分かってはいたけれど、シャルル様の選択は、私にとって余り面白いものではなかった。こんなにいい娘で、可憐な彼女が、国の礎にならなきゃならないと思うことも、相手に不足がありすぎることも、面白くない。シャルル様が選んだのだから、異議申し立ては出来ないけれど。まったく、意地の悪いふ神様がいるらしい。
そんな不満をぶつけるのは、やっぱり馬鹿王子しかいないよね。
「ではレオンハルト殿下、次は私の番です。」
「は?」
「は?じゃありませんよ。何です?まさかとは思いますが、王族の威光を笠に着て、私への迷惑行為は無視するつもりですか?まさかですよね?信頼に足る男になるんですもんね?」
「当然だっ」
挑発とも言えない言葉に乗りすぎだ。同じ学園で、同じ様に学ぶとはいえ、身分は多くの人たちの間で絶対のものだ。本来ならば、暴言と暴行で私の命は詰みなのだ。学園から一歩出れば、貴族の横暴に血の涙を流す庶民なんて、ごろごろ居る。それを知ってか知らずか、不敬罪には問わないでいてくれたわけだが…知らなそうだよなぁ。私としてはラッキーだけど、国王の嫡子としてはチョロくていけない。
「では。今回の迷惑行為、私は反省を形で示して頂きたいと思いますので、慰謝料を請求します。」
「慰謝料?」
「まぁ、迷惑料ですね。想像をしてみてください。好きでも無い男に、しかも身分が高い相手に言い寄られる不快とプレッシャーを。」
プレッシャー等無かろうと言いたそうなコンラート殿下の視線は無視だ。世の中触れずとも良いことはいくつもある。
「うむ…負担であったろうな…すまない。…額面としてはどの位を希望している?」
あらやだ。なんだか変なことを言い出したよ、コイツ。
「あの、現金なんかで請求しませんよ?」
三人揃って意外そうな顔をしないで頂きたい。いや、私、別に現金主義とかじゃありませんよ?お三方。即金は素敵だと思いますけど。ソレとコレは違うじゃ無い?その顔はどうよ?
「殿下から現金とか物品を受け取ったら、出所って国庫でしょ?殿下の負担じゃなくて、国の負担じゃないですか、それ。殿下の反省なんですから、ちゃんと殿下の負担にならなきゃ意味が無いですものね?」
にこりと微笑んで見せたところ、第一王子は目が点だが、シャルル様とコンラート殿下は納得の表情だ。しかし、次の言葉に二人の目も点になった。
「殿下、私の指定するコースで、なるべく目立つようにお忍びでシャルル様とデートしてきて下さい。」
「リア?矛盾しているぞ?」
意味が分からないと言いたげなコンラート殿下。ふっふっふ、まだまだ甘いなぁ!
「現金より労働ってことですよ、コンラート様。レオンハルト殿下に広告になって貰いたいんです。私の店の。」
「広告??」
「ええ。殿下一人から国庫を搾り取っても意味が無いですけれど、馬鹿王子とはいえこの国の王子ですからね!実像を知らない人たちには宣伝力抜群だと思うんです。有名人のデートコースを真似するヒトって多いんですよ。」
馬鹿王子と言われ、また複雑そうな顔をする馬鹿王子だが、事実と認めたのか文句を言える筈もない。ふふん。
「父と兄の商いとは別に、私も商いをしておりまして。ほとんどが軌道に乗ってはいるんですが、今一歩のモノもあるんです。シャルル様にはご迷惑をお掛けしてしまいますが…」
「とんでもないわ、リア!貴女本当に凄いのね!勉学だけではなく、もうご商売までしているだなんて!わたくし行ってみたいわ!」
嬉しそうに賞賛してくれるシャルル様。マジ天使だ。
「いいですね?殿下」
複雑そうな顔のまま、レオンハルト殿下は頷いた。




