信頼というやつは。
信頼というやつは、育てるのに時間がかかる。その割に、失う時は一瞬だ。しかも、一度失えば、取り戻す事が難しく、信頼を裏切られた時の傷や痛みが一生消えない者も居る。
けれど、シャルル様はそれらと真っ向から向き合った。
そんな、ある種勇敢とさえ言えるシャルル様をして、なお、裏切り者を再び信じる勇気は中々湧き出るものではない。自己申告の改心なんて、信じられるものでもないし、その改心が本物かどうかなんて、裏切り者が墓に入るまで分からない。裏切りを繰り返さない保障は無い。
「本当に、申し訳なかった。」
流石の馬鹿王子でも、シャルル様の気持ち位は汲めるらしく、沈痛な面持ちで謝罪を口にする。謝罪が遅すぎる。悪い事をしておいて、素直にごめんなさいが出来ないとはどういう了見か。謝らないより若干マシではあるが、微々たる差だ。
「シャルルの言い分は、最もだ。信じて欲しいなど、言えない事は…分かっている。だが、私は…もう間違えたくない。どうしても、側に、シャルルに居て欲しい。お願いだ」
「はーぁい。スト-ップ。」
語りが止まらないようなので、敢えて割り込む。
「…なんだ。」
不本意ったらないって顔だなこの野郎。またぶん殴るべきだろうか?
「だから、さっきから言ってますよね?順序は守れって。ね?お願い、じゃないでしょ?今はシャルル様の番。あんたの希望は後回しだ馬鹿王子。」
「くっ…最もだ…が、リア?君、今更だが、その口調は…その…」
「うるっさい。ガタガタ言わないでよ。ケツの穴の小さいヤツね」
「ケ…………」
聞いたことのない表現だったのか、馬鹿王子に加え、コンラート様までもあ然としている。両王子とも、もう少し庶民について知るべきだ。
「邪魔をしてしまい申し訳ありません、シャルル様。どうぞ。」
「…あ、え、ええ……では…レオンハルト様。わたくしは、レオンハルト様と共に在りたいと思います。」
「では!」
「それが、この国の為になると思いますので。」
喜びで彩られた馬鹿王子の顔が一気に強張る。
「え…」
「今は…レオンハルト様を信じられなくても、わたくしは、この国を愛して下ります。ですから、今、わたくしが選ぶのは貴族として、民を守る者として、正しいと思える答えです。レオンハルト様の為では、ございません。よろしいですか?」
シャルル様は、毅然と言い放ったけれど、その表情は、辛い、苦しいと叫んでいる様で、見ているこっちが辛くなるような顔だ。それでいて、自らに課せられた責務を必ず負うという、強い意志を持つ表情。
「…ああ。構わない。シャルル、私は、君に報いる事の出来る王になろう。信頼出来る男に。」
「…はい、楽しみにしています。レオンハルト様。」




