従兄弟殿。
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締め落とされる瀬戸際だった馬鹿王子は、コンラート殿下のお陰で意識を手放さずに済んだものの、かなりみっともなくむせ込んだ。鼻水が垂れてる。
「兄上。鼻、出てますよ。返さなくて良いですから拭いてください。」
へたり込んでいる兄王子の顔面へ、投げ渡された弟王子のハンカチが、ぺすんと情けない音を立ててぶつかった。庇いはしたが、コンラート殿下も怒っていない訳ではないらしい。
「…私は…そんなに嫌われていたのだろうか?」
鼻水を拭った馬鹿王子が、縋るような目で私を見る。
「そうですね。割と大嫌いです。」
満面の笑みで伝えれば、がっくりと肩を落とした。
「兄上、なんで好かれていると思えていたんですか?頭突きされたんでしょ?さすがに無いですよ?好きな男に頭突きするとか。」
「口づけを…し損ねたのだろうって…言われて…」
俯く馬鹿王子は辛うじて聞き取れるレベルの小声でボソボソと話す。言われて…って?
「どなたかのせいだとでも言うつもりですか?」
呆れた。行動の責任は、身分性別に問わず自身に有るものだ。
もし、本当に誰かの言う通りに受け取っていたのだとしても、自分で考える事を放棄したという事になる。どっちにしても最低だ。
「せい…とは言わないが…意見として参考に…」
「どなたですっ?!妄言を吹き込んだのはっ!」
「ひっ」
鋭い声に肩を竦め、些か怯えた目を声の主へと向ける。シャルル様の思いがけない実力行使が、衝撃的だったせいかもしれない。
「ひっ、じゃありません!お答えなさいっ!」
「ま…まく…」
カタカタ震えて声にならない第一王子。シャルル様に怒鳴られて涙目だ。
「ま…ま…」
「マクシミリアン?」
名前を口にしたのは、私だ。第一王子が口にした、私の知らない誰かの名前。
「リアっ?!お知り合いでしたのっ?!!」
「いいえ?さっき殿下が口にしたから、もしかしてと思って。」
苦々しいコンラート殿下の顔と、驚いた表情のシャルル様。どうやらお二人もマクシミリアンとやらをご存じらしい。
「どなたですか?」
「僕らの…従兄弟だ。マクシミリアン•フェリアス•ロット。」
コンラート殿下の眉間の皺が尋常じゃない。コインくらいなら挟めるんじゃないだろうか。嫌いなのかな、従兄弟殿。でも、言うことを鵜呑みにするくらいだから、第一王子はその人のこと嫌って無いんだよね?
「兄上、何度も言いましたよね?マクシミリアンなんかを相手にするのは止めて下さいって。」
「しかし…従兄弟だぞ?…小さい頃は遊んでくれたり、本を読んでくれたり…お前だって世話になったろ?…アイツはもう一人の兄みたいなものじゃないか…」
ボソボソと話す第一王子を、射貫かんばかりの目つきで睨んで、コンラート殿下は一喝した。
「馬鹿者な兄など、兄上一人で十分ですっ!」
怖っ。自信過剰なかつての姿が、見る影もない程に、第一王子は凹んでいる様子だ。ざまーみろーっ。
「今回の件、まさかとは思いますが全部アイツに相談していたのですか?」
弟の問いに、コクンと頷いたその様子は、王子様なんかではなく、ただの子供のソレだった。
「…こ…っんの!馬鹿兄貴っ!!!」
コンラート殿下の怒鳴り声が響いた。
ここにきての新キャラ…無謀かなぁ?




