見つけた。
講義終了を促す鐘が鳴るのを、散策路で聞く。以前頭突きをかました、あの散策路だ。
「さて…」
各員持ち場に着いている。
コンラート殿下は、散策路から少し入った場所が見える茂み。馬鹿王子が馬鹿を引き連れていないか、確認するため。
シャルル様は、私の背後の木陰。近くで聞きたいんですって。
私は、散策路から頑張れば見える程度に奥まった、それでいて開けた場所。前回も見つけたんだから、きっと今回も、彼は私を見つけられるだろう。
待ち伏せ体制は万全だ。
程なく、カサリと茂みから音が聞こえ、見ればコンラート殿下が一瞬覗いて、すぐに隠れた。と、言うことは、第一王子は一人で来たと。
ザクザクと落ち葉を踏む音がして、音と同じタイミングで派手な金髪が見え隠れする。
「リア…?ああ、見つけた!」
「ご足労ありがとう存じます。レオンハルト殿下。」
にこりと微笑む姿だけなら、絵姿みたいに綺麗でいらっしゃる残念王子。
「君に呼ばれるのは嬉しいよ。しかもあんな熱烈な手紙までもらったのだし」
熱烈?え、どこが?
「話があるんだろう?」
「はい。」
私はシンプルに切り込んだ。
「殿下は、私の何をお気に召してらっしゃるのですか?」
私の問いに寸の間ポカンとした表情をしてから、くすりと笑う。
「ずっとそんなことを気にしていたのかい?リアは可愛らしいね…そうだなぁ。強いて表すなら、全て、だな。」
ニヤニヤと締まりの無い顔が腹立たしい。が、まだ殴ってはいけない。
「具体性に欠けますね。もう一度伺います。真剣に考えてお答え下さい。何をお気に召してらっしゃるのですか?」
「んー…素直じゃないところも可愛いと思うけれど」
被虐主義?てか素直だわ。私。
「女の子にしては学問に熱心な所も好ましいと思うよ。」
女の子にしては?男どもよりよっぽど熱心な自覚がありますが?
「もっとも、無理のし過ぎじゃないかと心配もしているがね。」
くすりと笑う辺り、本当にイラつく。こいつ何にも見ちゃいない。
「私の何処が素直ではないと?」
「私のことを好きだろう?なのに嫌いだと言うじゃないか」
「好きだと思う根拠は?」
「君が素直になれないのは、好きだからだろ?」
「好かれる理由は?」
「そんなことは知らないよ。私は君ではないのだから。その答えは君の胸中にしか無いさ」
「そうですか。女の子にしては学問に熱心と仰いましたが、どなたと比較を?」
「みんなだよ。君より頭の良い女の子はいないし、講義中、君ほど的を得た質問する女の子もいないだろ?」
「では殿方には私より熱心な方がいますか?」
「…どうかな。興味がないよ。」
あ。一瞬、間があった。
「自国の民に興味が無いと?」
「そんなことはない!」
馬鹿王子が私に対して声を荒げるのは、これが初めてではないだろうか?余裕が無くなってきた証拠だ。
「では、殿方には私より熱心な方がいますか?お答え下さい。」
「…私…だろうか。」
少し顔色が白い。第一王子は、落ち着かなさそうに髪を撫でつける動作を繰り返す。
「私程、教授に質問もしないし、私より頭が悪いのに、ですか?」
「私が君より劣るのは君が好きだからだよ。」
第一王子の声音が、些か鋭くなった。ここだ。見つけた。
「なぜ、私が好きだと、私より劣るのでしょう?」
「君と張り合うと思うと、辛いんだ。私が君より優っているのは間違いないけれど、わざわざ悲しませたくない。だから、実力が出せない。よくある話さ。」
「よくある…どこででしょう?」
「世間一般にだよ。」
さて。下準備は整った。




