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商家のムスメ。  作者: MKS
16/33

見つけた。

 講義終了を促す鐘が鳴るのを、散策路で聞く。以前頭突きをかました、あの散策路だ。


「さて…」


 各員持ち場に着いている。

 コンラート殿下は、散策路から少し入った場所が見える茂み。馬鹿王子が馬鹿を引き連れていないか、確認するため。

 シャルル様は、私の背後の木陰。近くで聞きたいんですって。

 私は、散策路から頑張れば見える程度に奥まった、それでいて開けた場所。前回も見つけたんだから、きっと今回も、彼は私を見つけられるだろう。


 待ち伏せ体制は万全だ。


 程なく、カサリと茂みから音が聞こえ、見ればコンラート殿下が一瞬覗いて、すぐに隠れた。と、言うことは、第一王子は一人で来たと。


 ザクザクと落ち葉を踏む音がして、音と同じタイミングで派手な金髪が見え隠れする。


「リア…?ああ、見つけた!」


「ご足労ありがとう存じます。レオンハルト殿下。」


 にこりと微笑む姿だけなら、絵姿みたいに綺麗でいらっしゃる残念王子。


「君に呼ばれるのは嬉しいよ。しかもあんな熱烈な手紙までもらったのだし」


 熱烈?え、どこが?


「話があるんだろう?」


「はい。」



 私はシンプルに切り込んだ。



「殿下は、私の何をお気に召してらっしゃるのですか?」


 私の問いに寸の間ポカンとした表情をしてから、くすりと笑う。


「ずっとそんなことを気にしていたのかい?リアは可愛らしいね…そうだなぁ。強いて表すなら、全て、だな。」


 ニヤニヤと締まりの無い顔が腹立たしい。が、まだ殴ってはいけない。


「具体性に欠けますね。もう一度伺います。真剣に考えてお答え下さい。何をお気に召してらっしゃるのですか?」


「んー…素直じゃないところも可愛いと思うけれど」


 被虐主義?てか素直だわ。私。


「女の子にしては学問に熱心な所も好ましいと思うよ。」


 女の子にしては?男どもよりよっぽど熱心な自覚がありますが?


「もっとも、無理のし過ぎじゃないかと心配もしているがね。」


 くすりと笑う辺り、本当にイラつく。こいつ何にも見ちゃいない。


「私の何処が素直ではないと?」


「私のことを好きだろう?なのに嫌いだと言うじゃないか」


「好きだと思う根拠は?」


「君が素直になれないのは、好きだからだろ?」


「好かれる理由は?」


「そんなことは知らないよ。私は君ではないのだから。その答えは君の胸中にしか無いさ」


「そうですか。女の子にしては学問に熱心と仰いましたが、どなたと比較を?」


「みんなだよ。君より頭の良い女の子はいないし、講義中、君ほど的を得た質問する女の子もいないだろ?」


「では殿方には私より熱心な方がいますか?」


「…どうかな。興味がないよ。」


 あ。一瞬、間があった。


「自国の民に興味が無いと?」


「そんなことはない!」


 馬鹿王子が私に対して声を荒げるのは、これが初めてではないだろうか?余裕が無くなってきた証拠だ。


「では、殿方には私より熱心な方がいますか?お答え下さい。」


「…私…だろうか。」


 少し顔色が白い。第一王子は、落ち着かなさそうに髪を撫でつける動作を繰り返す。


「私程、教授に質問もしないし、私より頭が悪いのに、ですか?」


「私が君より劣るのは君が好きだからだよ。」


 第一王子の声音が、些か鋭くなった。ここだ。見つけた。


「なぜ、私が好きだと、私より劣るのでしょう?」


「君と張り合うと思うと、辛いんだ。私が君より優っているのは間違いないけれど、わざわざ悲しませたくない。だから、実力が出せない。よくある話さ。」


「よくある…どこででしょう?」


「世間一般にだよ。」


 さて。下準備は整った。

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