我ながら気持ち悪い。
実のところ、庶民の私には学園内に友と呼べる人は居なかった。お貴族サマばかりで、庶民は相手にされなかったから。寂しいとまではいかないが、やっぱりつまらなくはあったので、初お友達に浮かれまくった私は、シャルル様と講義以外の時間をほとんど一緒に過ごした。付き合いだしたばかりのカップル並みに、ベッタリであった。コンラート殿下はそこにちょいちょい加わるという感じだ。
話をしてみると、シャルル様は想像以上に可愛らしく、素敵で、知的で、しかも本の好みが私と似ていた。コンラート殿下は思ったより素直で、深窓の令嬢並みに市井の話に驚いてくれるのが面白かった。
仲良く、また楽しく、平和に過ごす私達だったが、周囲は困惑し、奇妙な現象に遭遇してしまったかのような表情を禁じ得ない様子でる。
中でも困惑したのは、多分、第一王子。
「何故お前がリアに付きまとう!何を企んでいる?!」
素敵な午後の昼下がり、恋愛小説談義に花を咲かせていた私とシャルル様を見つけた第一王子は、見当外れない事を怒鳴りながら近寄ってきた。
「もう婚約者でもないくせに、リアに嫌がらせか?!」
馬鹿王子のせいでシャルル様が涙目になっている。本当このクソ王子ろくでもない!
「殿下、私の友達を侮辱なさらないでください!」
「リア、大丈夫か?何をされた?友達だなんて、脅されでもしたのか?」
「シャルル様がそんなことをするわけが無いでしょう?馬鹿馬鹿しい。」
馬鹿王子を睨むと、馬鹿王子の遙か後方にコンラート様が見えた。私は目が良いのだ。
私達三人に気付いたのか、くるりと背を向け立ち去ろうとしている。何と友達甲斐の無い!
「コぉンラぁぁト様ぁあ?」
敢えて大声で呼んでやる。できうる限り甘い声音で。かなり嫌そうな顔をしているところを見る限り、友を見捨てようとしたお仕置きとしてそれなりの効力を発揮したようだ。ふふん。
「コンラート様ぁ!助けて!レオンハルト殿下が酷いんですぅ!」
嫌な顔をして近寄ろうとしないコンラート殿下へ、更に声をかける。我ながら気持ち悪い。殿下はもっと気持ち悪いだろう。さっさと来ないなら、もっと嫌がらせしてやろうかしら。
私の想いが伝わったのか、渋々ながらこちらへ向かう殿下。よっぽど「駆け足!」って言ってやりたかったのは言うまでも無い。
「…何事だ?」
「レオンハルト殿下が、シャルル様を侮辱してきます。なんとかして下さい。」
「えぇぇ…」
私を凝視していた馬鹿王子が、じろりとコンラート殿下を睨む。
「…なんでリアと親しげなんだ?」
「リアと…友達になったんです。」
「…友達?」
「はい。それより、今のは本当ですか?本当にシャルを?」
片方の言葉だけではなく、双方から確認しようとする辺り、コンラート殿下はちょっとだけ成長したらしい。ものすごく嫌そうななのがただ漏れなので、ちょっとだけ。
「コンラート、お前までシャルルに加担しているのか?」
はぁあああ???!
噛み合わない!恐ろしく噛み合わない!!しかも見当違い甚だしい!耳、付いてるよね?!聞こえてないの???




