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紛失令嬢のどうでも良い話

作者: ゴロタ

誤字脱字は否めない。

「キャッホ~!あちらにいらっしゃるのは、ダッツビーク侯爵家のご子息ラーメン様っ!?」


「いえ、姉上…ラーマン様です……」


「ウッヒョ~!今度はラスベルダ伯爵のミソデンガク様ですわっ!!」


「いえ、姉上…ミスデンガー様です……」


「ムッヒャッヒャ~!チョココロネ王子ですわ~!素敵~!抱いてぇ~!!!」


「いえ、姉上…コロネウス王子です……」



「ちょっと!弟!!うるさいですわ!今夜の夜会に、わたくしの嫁ぎ先がかかっているですから、お黙りなさいっ!!」


「いえ、姉上…別にかかってはいないです……」


 全くイチイチ突っ掛かってくる弟ですわね!

 あら、名前は何と言ったかしら?モブオ……だったかしら?

 まあそんな些末な事はどうでも良いですわ。

 それよりも、結婚相手は絶対上級生貴族ですわね…。

 わたくしの高貴な家柄を考えれば、王家でも狙えますが手始めにミソデンガク様にご挨拶に参りましょうか。

 挨拶回りですわ!!


 他の令嬢の様なただお辞儀をしてドレスの裾をつまむ程度のインパクトの少ない挨拶では、相手の印象には残らないのですわっ!!

 ここはまず、インパクト勝負をかけて参りますわ!


 ジリジリとミソデンガク様との距離を測りますわ。

 よしっ!

 今よっ!!


 わたくしは勢い良くミソデンガク様の眼前に躍り出ると、彼の方の目の前でドレスの裾を思いっきり目繰り上げた。


 そして瞬時にその場で三回ターンをした後、ニヤリと微笑み、彼の方を指差し、こう挨拶致しましたわ。


「ふんっ!お綺麗な顔ですわねっ!でもわたくしの顔の方が貴方よりも数倍は美しいですわよ?今後はいい気にならない事ですわね?オーッホッホッホッホッホ!!」


 言いたい事を告げましたわ。インパクトはあったわね?………有り余るわね?

 インパクトを残せたと思いますので、もうここには用は御座いませんわ。

 わたくしは踵を返して次の目標に狙いを定めて走り出しましてよ?


 次はラーメン様ですわね?

 あら?ご学友と歓談中かしら?

 まあ、わたくしの挨拶が優先ですわよ?今すぐに退きなさいな。


 ラーメン様と歓談していたマッチョ男を押し退けようといたしましたが、このマッチョ……唯のマッチョではありませんでしたわ。

 そう、押し退けられないんですのっ!!


 たかがマッチョ……されどマッチョ……男の筋肉を見誤っておりました。

 今後はわたくしも筋肉をつける運動を取り入れて参りましょう。次は負けませぬから、お覚悟を!マッチョ男殿。


 ラーメン様にはわたくしのような、か弱い令嬢では、太刀打ちできない筋肉の防御壁が御座いました。

 今回ばかりは越えられぬ定めですわね。


 無念ですわ。




 後は大本命のチョココロネ王子がおりましてよ!


 あら?どこにいらっしゃるのでしょうか?先程まではチラチラとあの茶色い爆発ヘアーが視界にチラチラと見えておりましたのに。


 それにしてもあの方のヘアースタイルには、毎回度肝を抜かれますわね。

 わたくしも今後はあの爆発ヘアーを真似る為に、夜会の際には屋敷を爆破して参りませんと、王子にインパクトを残せませんわ。いけませんわね。


 チョココロネ王子を探して、庭園のまで来て仕舞いましたわ。

 流石に外灯は御座いますが、足元が見辛く、歩きづらいですわね。


「くっ…この………ああっ……!!!」


 ハイヒールのヒールがっ……ヒールが折れましたわ!ボキッと逝きましたわ!!

 抜かりました。

 たかだか庭園を歩いた程度でこの体たらく……あり得ませんわ。やはり筋肉が必要ですわね。


 そうですわっ!良いことを考えましたわ。

 片方のヒールが折れたから歩きづらいのです……両方とも折ってしまえば良ろしいのです。

 手近にヒールを叩き折るのに使えそうな噴水の縁が御座いましたので、いざ!!参りますっ!!!


「はぁぁぁぁぁぁ………。ホアッチャウッ!!」


 わたくしの華麗なる動きで、ヒールが空中へ舞う!…………舞う?

 何故かわたくしのヒールが空を舞っております。

 夜空にキラキラと輝く星の如く舞って引力の法則に従い、落下致しました。


 どうやら気合いを入れすぎた様で、手からスッポリと抜けて行ってしまった模様で御座います。


 この薄暗い庭園の中、いずこに落ちたのか分からぬハイヒールを探さねばならないかと、唯の令嬢ならば不安ですわね?


 でも大丈夫ですわ?安心なさって!!わたくしは高貴な令嬢ですもの!この様な事もあろうかと、直ぐに見付けられるようにハイヒールにライトアップ機能を着けておりますの。


 「ライトオンッ!!!でーすわっ!!」


 ポチッと遠隔操作でハイヒールのライト機能をオンに致しました………が、一向に輝きませんわ。

 失敗かしら?再考の余地有り、ですわね?


 仕方がないので、もう片方のみで光輝いているハイヒールを手に持ち、しぶしぶ夜会の会場に戻ろうとしたわたくしの後方で、いきなり茂みの中から勢い良く何者かが飛び出して参りましたわ。

 暴漢?盗賊?と、わたくしは緊張致しましたが、現れたのは全くの別の方でしたの。





 それは………………。





「熱い熱い熱い~!!たたた…助けてくれっ!!」


 爆発ヘアーのチョココロネ王子で御座いましたわ。

 ボワンボワンな髪の毛をグルグル振り回しながらの登場で御座いますの。

 斬新で御座いますわね。


 それ以上にわたくしの目を奪ったのは、王子のボワンボワンの頭から立ち上る真っ白い煙りですわね!


 正に今、燃えてる最中です!と言わんばかりじゃあ有りませんこと?

 斬新っ!!チョココロネ王子はエンターテイナーで御座いますわ!時代を先取りなさっておりますのね?


 思わず拍手をしてしまいましてよ?


 そんなわたくしに王子が叫びながら突っ込んで参ります。

 しかし、わたくしも高貴な身の上……。

 流石に王子がわたくしの美しさに参ってしまい奇声を上げながら近付かれても抱き締めさせは致しませぬわ!!


 最小限の動きで華麗に躱してみせますわっ!!


 突っ込んで来た王子をヒラリとかわす優雅なわたくし。


 そのままわたくしの後ろにあった噴水に、王子は勢い良くドボンなされました。ダサいですわね。


 わたくしに抱き付こうなど、10年早くってよ?

 男を磨いて出直していらっしゃいな。

 オーッホッホッホッホッホッホッホッ!!!




 さあてと。そろそろ会場に戻りましょうかしら?






 sideミソデンガクことミスデンガー伯爵




 今回の夜会にて結婚相手を見付ける腹積もりであった私は、かなりの数の令嬢と挨拶を交わした。


 最初はまだ良かったのだ。顔とお名前は一致していた。

 しかし挨拶を受ける数が3桁になった所で辟易し始めていた。

 皆似たり寄ったりの判で押したかのような同じ挨拶に、現在流行りの似たり寄ったりのドレスやヘアースタイル……。

 ハッキリ言ってインパクトが足りない。

 まあ、そもそも貴族の夜会の令嬢にインパクトなど必要はないのだが、余りにも退屈すぎて苦痛であったのだ。


 最近伯爵の爵位を継いだばかりの私であったが、一応婚約者は居たのだ。

 しかしありきたりな娘で、私の後ろを3歩後に着いてくる典型的な貴族の女性であった。

 前を歩けとは言わないが、せめて一緒に歩いてくれる伴侶が欲しかったのと、元々の婚約者には永年想いが通じあった相手が居たのだ。

 お互いに話し合い、破談でオッケーになったので、自分で伴侶を捜す事にしたのである。



 そして私は出会った。運命の女性に!!


 彼女は自身のドレスを目繰り上げ、その脚線美を見せ付け後にその場でグルグル回り、私を恫喝した後、勝ち誇った表情をして走り去って行ったのであった。


 残念な事にその女性の行動が、余りにもインパクトが有りすぎて、呆然としてしまい名前を窺う事も、ましてや追い掛ける事も出来ずに見送ってしまったのである。痛恨のミスであった。



 私の心を虜にした彼女を、必ず見付け出してみせると、私は心に硬く誓ったのであった。




 sideラーメンことダッツビーク侯爵令息ラーマン



 いつもの夜会で仲の良い友人のマチョーと談笑していると、マチョーの後ろにチラチラと見える女性のドレスの影……さてはマチョーの婚約者か何かか?


 婚約者は何故かマチョーの後ろから一行に顔を出さない。

 恥ずかしがりやなのだろうか?

 奥ゆかしい女性は素敵だ。


 マチョーがとても羨ましい。僕の婚約者は野心家の女性だ。頭も良くズバズバ言いたい事を言って来るのだ。もう少し淑やかな女性が好みなのだが、貴族の結婚とは大抵政略なので致し方がない。

 諦めてはいたのだが、マチョーの婚約者の奥ゆかしい態度が可愛過ぎる。羨ましい。


 マチョーは友人の僕に彼女を紹介してくれないのだろうか?

 いや駄目だな。紹介されたら奪いたくなって仕舞うかもしれない。

 マチョーは大切な友人だ。だがしかし……紹介だけならば……いやしかし…ああっ!どうすればいいのだ!!


 結構な時間、僕は悩み過ぎていた様だ。マチョーの後ろに隠れていた婚約者は既に居なくなっていた。残されたのは怪訝そうな表情のマチョーのみであった。


 残念だが、いずれ紹介して貰おう。





 sideチョココロネことコロネウス王子




 はあっ……。憂鬱だ。夜会になぞ出たくは無かったが、他でもない父上からのご命令では致し方がない。

 余は人前がニガテだ。理由は多々あるが、一番の理由はこの髪型なのだ。


 生まれつきこの爆発したかの様な膨張ヘアーのせいで、女性にモテたためしがない。

 幼い頃はまだましであったのだが、歳を重ねると更に厚く、そして剛毛になってきおったのだ。


 1度丸坊主にしようかとも考えたのだが、流石に王子が丸坊主というのも体裁が悪い。

 普段の生活で髪型はそこまで気にせんのたが、着飾った者が多い夜会では目立ってしょうがない。


 王族としての夜会の挨拶だけしたら、誰も来ない庭園に隠れていて、終わり頃にまた顔を出すだけで良いだろ。


 そう考えた余は一人で庭園の茂みに隠れて居ったのだが、その最中余の後頭部に勢い良く何かが落ちてきた。痛っ!痛いぞ!?

 突き刺さったのでは、あるまいな?しかも……髪に絡まって取れぬぞ?痛てて。


 しばらく頭から落下物を取り除こうと格闘していると、段々落下物が熱くなってくる。


 なっ!?何だ?危険物だったのか?

 慌てると余計に絡まり、依然として取れない。

 更に熱くなる余の頭部。


 うぐぐっ……熱い…熱い……あ・つ・い~~~!


 我慢できぬっ!夜会の会場の誰かに取ってもらおう。

 隠れていた茂みから飛び出すと、丁度目の前にどこかの令嬢が居たので、助けを求めて走り寄ると華麗に避けられた。


 そして避けられたせいで、余は近くにあった噴水に頭から勢い良く落水してしまったのであった。


 冷たいっ!ああ、だが頭の熱さも和らいで来る。

 最悪の事態だけは免れたのだろうか?

 少しだけ余はホッと息を付いたのであった。




sideマッチョ男ことラーメンの友人、マチョー




うん?背中がくすぐったい。まるで誰かに軽く押されているような?

チラリと振り返ると、どこかのご令嬢が俺の背中を小さな手でクイクイと押したり引っ張ったりしている。

俺はこの通り身体が大きいので、いきなり上から声を掛けたらご令嬢を驚かしてしまうだろう。

痛いとかは全くないので、このまま好きにやらせてあげよう。

だが、このご令嬢……一体何がしたいのだろか?

意味は不明である。




 sideモブオ(?)弟




 我が姉上は頭のネジが何本か抜けている。

 今に始まった事ではないのですが、姉上が何かやらかす度に僕や父上が、誤魔化したりお茶を濁したりするのにどれだけ労力を注いだ事か。

 しかしフォローをしないと我がフォレストルイス子爵家なぞ、即お取り潰しになってしまうでしょう。


 子爵家なのに、何故か姉上は高貴な身分だと思っている様で、上位の貴族相手にも一歩も引きません。

(寧ろ相手に引かれてる)


 姉上かあんな性格になった理由は分かりません。分かりたくもないですが。

 姉上には一応同じ子爵家の婚約者がいらっしゃるのですが、相手方は乗り気ではありません。

 しかし相手方を責める事はできません。僕だって姉上が婚約者であったら、まず間違いなく乗り気にはなりませんし、血縁関係が無ければ姉上とはかかわり合いにもなりたくありません。

 今の所婚約の破棄はなされてませんが、時間の問題かも知れません。


 なので一概に姉上の夜会での無茶な振る舞いを、お止めする訳にも行かず……難儀しております。


 はぁ……。どこかにあんな姉上でも構わない、寧ろストライクッ!という豪気なお方はいらっしゃらないものでしょうか?

 このままですと、僕の婚約者にいつまでも結婚できず、愛想を尽かされて仕舞いそうですよ。


はぁ…。







オマケ(?)その後のキャラ達


主人公の筈の令嬢→依然として名前は出ない。

知らない男にストーキングされていると思ってる。


ミソデンガク→主人公に惚れるが、ストーカーと勘違いされ逃げられる日々を送っている。しかし彼の脳内では、浜辺で恋人達がしている追いかけっこ程度の認識。ヤバい薬は使用していない。自前。


ラーメン→友人の婚約者に好意を持ってしまったと思い罪悪感で一杯。

たが、唯の勘違い。

実際は婚約者でもなければ、淑やかでもない。主人公に慎みは皆無。


チョココロネ→あの後爆発ヘアーはフランシスコ・ザビエルヘアーに進化を果たした。

以前より更に女性が寄り付かない状態に。

自分の髪を焼いたハイヒールの持ち主を血眼で捜している。

責任を取ってもらうつもり。嫌な予感しかしない。


マッチョ男→友人のラーメンが、何か言いたそうに自分に熱い視線を向けて来るが、ハッキリ言ってくれないので、良くわからない。

もしかして自分に惚れられたのかと、若干青ざめている。勘違いが止まらないが、仕方もない。



弟→まだまだ姉から目が放せない苦労人。彼の婚期は遅れそうである。残念。

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