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番外編 どっちもどっち

コメント、ありがとうございます!


ケインとマリアンナの結婚後のお話です。

前半はマリアンナ視点、後半はケイン視点になります。

同衾についての話が多大に含まれています。ご注意ください。

「マリアンナの子供なら、きっと、ううん絶対可愛いよね。早く会いたいなあ、リアムと遊ばせたいの」

 ぎくっ

 オリヴィア姉さんが無邪気に言い放ったそれは、見事に俺のハートをえぐった。

 ちなみにリアムはオリヴィア姉さんの子供の名前だ。オリヴィア姉さんに似た顔立ちの金髪碧眼の男の子なのだ。

「お、おほほほほほっ、気が早いですわあ、お姉様」

「そう?でも、私、すっごく楽しみなんだ」

 その笑み止めてください、止めてくださいオリヴィア姉さん...俺のHPはもうゼロよ!

「ま、まあ、気長にね?お待ちくださいな」

「ええ、そうね。待ってる」

 うぐおおおおこれ以上オリヴィア姉さんの輝く笑顔を見ていたら俺はどうにかなっちまいそうだ!

「で、ではそろそろ失礼致しますわ。お誘いありがとうございました」

「ええ、またね、マリアンナ」

 オリヴィア姉さんに見送られ、俺は姉さんの部屋を退室した。



 俺は今、二十歳である。

 学園を卒業し、ケイチーとなあなあで結婚した俺は、ただいま、窮地に立たされていた。

 それは何かって?

 子供のことだよ!!

 ケイチーはエイデン、マークと共に、第一王子リチャードに立派に仕えてて、もう一人前の貴族なんだが、そのせいで俺への圧力がすごい!すごい!すごいったらすごい!

 子供はいつ生まれるの、立派な男の子を産むのよ?ケイン似のね、さあ早く早く...止めちくりー!俺の前世は童貞男なんだよ!そういうのマジで経験皆無なんだよ!しかも相手はケイチーだぞ!無理だわ!

 という具合で、俺は未だ経験がないのである。

 だって、だって仕方ないじゃん!ケイチーだぞ!?相手ケイチーだぞ!?無理だわ!

 つか何で男に抱かれなきゃいけねえんだよ!!初めては女の子ベティちゃんが良かったよ!!

 ...いや、違うんだ。別に俺は女の子がそういう感じで好きな訳じゃないんだけどさ、でもやっぱ嫌なんすよ。

 考えてもみろや!俺、可愛い女の子、好き。イケメン、嫌い。そんな俺がどうして行為が出来ようか!!出来ねえよ!しかもケイチー相手とか、絶対無理だ!

 どうやらケイチーもそんな感じらしく、結婚式の日の夜、「...初めてがあんたって...」って言われた。

 しかし、周りは待ってくれない。ことある毎に、お茶会とかする度に子供子供子供子供子供...おかげで俺の精神はぼろぼろである。

 ヘタレ?うるせえな!じゃあ代われや!童貞なめんじゃねえぞ!

 そんな訳で、俺はアンハッピーライフを送っているのです。



 ある日、ケイチーが俺の耳に衝撃的なニュースをもたらした。

 ベティちゃんが懐妊したというのだ。

 ............。

「エイデェェェン...」

「いやあんたが怒ってどうすんの」

「うふふ...止めんなケイチー、これは怒りじゃねえ、嫉妬だ...怨みだ...」

「それならエリザベスと結婚すれば良かったでしょ全く」

「何言ってんだ!ベティちゃんと一生を過ごすのはそりゃあ天国だろうが世間が許さねえだろうが!」

「...駆け落ち」

「そ の 手 が あ っ た か」

「今更何言ってんの」

「冗談だよ、冗談。何だかんだ言ってベティちゃん幸せそうだからな。ベティちゃんが幸せならそれでいいのよ俺は」

「あんたって奴は...それで、どうすんの?」

「何が?」

 問い返すと、ケイチーは渋い顔つきになった。どうしたお前。せっかくイケメンのまま成長したのに台無しだぞ、いやそうでもなかったわ。おのれイケメンめ。

 いや俺だってケイチーに釣り合う美人なんだぜ?相変わらずキツめの顔立ちだけど。

「...私達だよ、私達。このままって訳にもいかないでしょ。ノアにも催促されてんのに」

「ファッ!?」

 ノアおめえ、ケイチーに何言ってるだ!変なこと言うもんじゃねえど!

「...まあ、ね?あんたがどうしても嫌なら養子っていう手もあるしね?そんな深く考えなくてもいいしね?」

「養子か...でも、オリヴィア姉さんは悲しむだろうなあ...」

「じゃあどうすんの」

「...どうしよう」

 ケイチーの顔をガン見すると、ケイチーはしばらく考えこんだ。

「...よし分かった。つまりあんたは相手が私だから駄目なんでしょ?」

「せやな」

「だから...あれだよ、あれ。側室の男版。あれしよう」

「お前それずりぃぞ!自分だけ逃れるつもりだろ!」

「じゃ、じゃあ何か!?あんたは私が他の女性を抱いてもいいとでも!?」

「いいよ!」

「いいのかよ!」

 喚いた後、ケイチーは、はあーとため息を吐いた。

「駄目に決まってんでしょ。そんなんあんたの家族にバレたら一大事だわ」

「じゃあてめえは俺が他の男に抱かれてもいいと!?」

「いいよ」

「いいのかよ!」

 すると、ケイチーは真面目な顔で、

「まあ誰でもいい訳じゃないよ。あんたが好きになった男じゃないと」

「...好きな男、ねえ。うーん...ノアかな」

「近親相姦ッ!アウトー!」

「...次点でマーク」

「よし頼んでこよう」

「マジで!?」

 次の日、帰って来たケイチーはこれ以上ないくらい意気消沈していました。魔法使い怖い。



*****



 私とエイデンとマークでいつもいる城の中の執務室に出勤すると、エイデンがマークに惚気ていた。

「それでな、ベティがな、嬉しいです...ずっと、この時を待ってましたって泣いてしまって、俺は...」

「仕事しろ馬鹿」

「ぐぉっ、おおケイン!」

 書類でエイデンの頭を叩くと、エイデンはようやく私に気付いたらしく、笑顔でこちらを見た。

 マークは苦笑しながら「おはよう、ケイン」と挨拶をする。

 学園を卒業しても、相変わらず私達は一緒にいた。

 王太子リチャードがエイデンを家臣として起用したところ、成り行きで私達も彼に仕えることになったのだ。有り難いね。

 そういえば昔、マークがアリスにも一緒に仕事しないか、とか誘ってたらしいけど、現在それが叶っている。アリスは今、実家である服屋と兼任しているのだ。何か特例らしい。まあアリス頭いいもんね。妄想癖はともかく。

 あと、フィリップもたまに顔を出す。フィリップはあの時の罰として辺境に送られたけど、その地で運命の女性ひとを見つけたらしく、今は幸せなのだそう。

 エイデンは無事エリザベスと結婚し、先日彼女が妊娠したと喜びの報告をしてくれた。良かったね。でも何回もその話するのは止めよう。私の肩身が狭い。

 マークはまだ好い人はいないみたいだけど、妹に彼氏が出来たそうで、よく「寂しい...」って溢してる。仕方ないことだよね。

「そういえばケイン、お前のところはどうなのだ?」

「はい?」

「だから、マリアンナ嬢と...」

「ああ、そのことなんだが。マーク」

「何だい?」

 きょとん、としているマークに頼んでみる。

「ちょっとマリュンを誘惑してくれないか」

「どういう事!?」

「考えてみたんだが、どうやらマリュンは私と致すのが恥ずかしいらしいから最初はマークに囮になってもらって、後で私と交代する。部屋を真っ暗にして声を出さなければバレないし、それなら不義も疑われない。どうだ?」

「いや意味が分からないんだけど!?」

 これでも考えたのだ。

 マリュンはそういうことを頑として受け入れないし、かと言って他の人に頼むなんて出来る訳ないし。

 いや私だって恥ずかしいけどね?でも仕方ないじゃん。養子なんてとったらエリザベスやノアに非難されてしまうし(うちのマリュンの何がいけないんだーってね。実は私は誰とするとしても恥ずかしいんだけど、マリュンは相手が私だから無理らしい。何かむかつく)。

 結婚したら子供問題が発生するって分かってた筈なのに、どうして私達は前もって決めておかなかったんだろうね...。

「...ケイン。ずっと思ってたんだけどさ、ケインはマリアンナさんのこと好きじゃないのかい?」

「そんなの決まってるだろう」

 嫌いな訳ないじゃん。まあ大好きって訳でもないけど。

「だったら、ちゃんと話し合いなよ。それで本当に駄目なら、僕も協力するから」

「マーク...」

 あんたいい人だね、本当に...。

 しんみりした、その時である。

「うーむ...ケイン、男らしくないんじゃないか?」

 ぐさっ

 かつてのヘタレに言われ、私は盛大に傷付いた。

「見ていれば分かる。マリアンナ嬢はお前を嫌っていない。そんな彼女に遠慮などする必要は、ないんじゃないか?」

 つまり、私からぐいぐいいけってことだね。

 ...まあ、そうなんだけどさ。やっぱり気持ちの問題だよね。

「そうだな。参考にするよ」

「ああ、俺も円満に解決することを願おう」

「頑張って、ケイン」

 励ましてくる二人に、ゆっくり頷いた。



「それで、結構どうなったん?マークにやられたんかお前?」

 家に帰ると、マリュンは私がマークに何か言われたと思ったらしく、質問攻めにしてきた。

 実際はエイデンから男らしくないって言われたダメージが残ってるだけなんだけどね。

「違うから。...あのさ、マリュン。どうしても駄目?」

「あ?」

 聞き返してくるマリュンに、私は繰り返す。

「私相手じゃ駄目?」

「...ああん?...あー!まあ、あー...あー、いいぜ別に、何でも」

 マリュンは、妥協したようだった。



 そして深夜。私の部屋。二人してベッドに座り、問う。

「...覚悟はいい?」

「ん?あー、まあ...いいんじゃねえの」

「...よし、いくよ」

 意を決し、マリュンの服に手をかけた時だった。

 小刻みに、震えているのに、気付いてしまった。

「...んー、やっぱ駄目だ。マリュン...ごめん、私は...」

「...ぐっ」

「は?」

「ぐはははははは!!駄目だ、やっぱ笑うわ!考えてもみろよ!?何で俺とお前がやりかけてんの!?この状況おかし過ぎるだろ!!かはーっやっぱ無理だわお前相手とか!絶対笑うもん!つか笑ってるし!おーっほっほっほっほっ!」

「...えぇ...」

 何だこいつ...ただ私相手だと笑うから無理ってことだったの?私の葛藤返せよ...。あと笑い方統一しなよ...。

「はーおかしい...いやあ、無理だわあ。お前相手だと絶対笑いっぱなしだわあ。ムードもへったくれもないわあ」

「...もーいいや」

 笑い転げるマリュンに、全てがどうでもよくなって私も寝転ぶ。

「どうしたケイチー、襲わねえのかよ?」

「んなことする訳ないでしょ、マリュン」

「しゃーねえなあこのヘタレが。だったら俺がもっと女磨きでもしてやるよ、ばーか」

「はいはい、ありがと。私だって精進してすっごいイケメンになってやるよ、ばーか」

 仕方ないから、もっと己を高めていくことにしよう。

 そうすりゃこいつにも私の魅力が分かるだろう。

 まあ、お互い様なんだけどね。

これで番外編は終了です。

次回登場人物紹介を投稿して完結となる予定です。

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