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番外編 新たなるヒロイン 前編

ケイン視点です。

 無事に進級し、私達は二年生になった。

 フィリップの一件の後も、色々あった(エイデンがエリザベスと婚約したりとかね)けど、フィリップの一件のような、日常を揺るがすようなそんな大事件は起きていない。というか起きたら困る。

 私もマリュンも、相変わらずだらだら過ごしていた。

 まあ、この先もこんな感じで生活していくんだろな、とか考えていた。んだけど。

 どうやら私とマリュン、そしてアリスにとっての、ちょっとした波乱が起きそうである。



 それが発覚したのは、新一年生の入学式の日だった。

 談話室サロンで、ノアが入学してくるねー、ノアから母さんにバレると怖いからもう食堂で無双出来ねえや、とかマリュンと駄弁ってたら、唐突に肩を掴まれた。

 びっくりして見ると、そこには息も絶え絶えといった様子のノアがいた。

「...姉さん、ケインさん、探し...たよ」

「どうしたの、ノア。そんなに疲れて。ルイス様に追いかけられたんですの?(ルイスパイセンはマジやべえかんな)」

 マリュンの問いかけに、ノアは必死に首を振り、何か言おうとした時...そいつは現れた。

「ノア!!道案内してあげるよ!ねえ!」

「ひいっ」

 短く悲鳴を上げ、ノアは私の後ろに隠れる。私は椅子に座ってるから、ノアは身を屈めてる状態だ。

 私はそんなノアを見た後、声の方向に顔を向ける。向こうからノアに迫ってきていたのは、一人の女の子だった。ノアと同じ一年生みたいだ。

「あら、貴女はどなたかしら?」

「!?マリアンナ...何でここにっ...!」

 え、マリュンと面識あんの?

 マリュンに目を向けると、マリュンは知らんといった風に首を振った。

 女の子はマリュンを何故か忌々しげに睨んだ後、ノアの方を見ようとして、私と目が合った。

「きゃっ!」

 あら黄色い声。

「ケインさぁん...!」

 え、何なに、猫かぶり?

 女の子は隠れてるノアを無視し、私にすり寄ると、にっこりと笑った。

「会いたかったです、ケインさん」

「すまないが、私は君を知らない。まず自己紹介をしてくれないか」

 うん、いくら記憶を探っても、こんな女の子に会った思い出がないからね。

 女の子は、顔は超可愛いという訳でもなく普通で、ちょっと薄い赤の髪をポニーテールにしている...けど、今まで会った赤い髪の女の子に、こんな子はいなかった筈だ。

「あは、あははっ!まさかもう会えるとは思わなかった!あのね、ケインさん、私は...あなたの運命の人です」

 ...何か前聞いたことあるんだけどそれ。

 フィリップに操られたアリスが「ケインさんは私が好きなんですから!」って言ってたのと何か同じ感じっぽいよ。

「名前は?」

「私の名前は、アイリスです!よろしくお願いします、ケインさんっ!」

「そうか。知っているとは思うが、私はケイン・ウィリアクト。こちらは私の婚約者のマリアンナだ」

「...は?」

「よろしくお願いしますわね、アイリスさん?(アイリスちゃんか...)」

 あ、マリュンのアイリスへの印象があんま芳しくない。こいつはほんと見た目第一なんだから。

「こ...婚約者?あ、ああ、そういうことですか!ケインさんに悪い虫がつかないように、偽の婚約をしていると!」

 いや何言ってんの。

 婚約者という単語に狼狽えていたアイリスは、得心がいったように頷いた。

「もうその必要はありませんよ、ケインさん。何てったって私はヒロイン...」

「偽物の婚約とは、どういう意味でしょうか?アイリスさん。私はれっきとした、ケイチーの婚約者ですわよ?(なーんか怪しいなあアイリスちゃん)」

「...ケインさん!嘘ですよね?」

「いや、マリュンは私の婚約者だが」

 アイリスは私の言葉にふらふらと後ずさると、マリュンをきつく睨み付けた。

「...私が救ってみせます!ケインさん!」

 そうはっきり宣言し、アイリスは去っていった。

「...朝から、あの男爵家の人に付け回されてて...もう限界で...姉さんに助けてもらおうと思ったんだ。ごめん...」

 隠れていたノアが立ち上がり、申し訳なさそうに目を伏せた。

「大丈夫?ノア。いつでも私を頼っていいのよ(男らしくねえけど、まあお前美少年だから仕方ねえか)」

「...ありがとう、姉さん...ケインさんも、巻き込んでごめんなさい...」

 ノアはよろよろと談話室サロンを出ていった。その姿を見送って、一言。

「...転生者に一票」

「同じく」



「えっ!?転生者ってそんなにいるもんなんですか!?」

 アリスの部屋を訪ねて事情を話すと、アリスはとても驚いた。うん、私もそう思う。

「あー、でもそうですね...ケインさんとマリアンナさんも、トラックに轢かれて亡くなったんですもんね...もう一人くらい犠牲者がいてもおかしくないか」

 そうなのだ。

 実は、アリスもまた、前世の私とマリュンが死んだ理由と同じ、大型トラックに轢かれて、亡くなっていた。

 私が死ぬ前に女の人の悲鳴が聞こえたんだけど、その悲鳴の主が、スマホをいじっていて迫るトラックにギリギリまで気付けなかった、前世のアリスだったらしい。

 という訳で、私とマリュン、アリスと同じく、あのトラックに轢かれて転生した人が他にいてもおかしくない。それがアイリスかもしれないということだ。

 ...まあ、転生した私、アリス、アイリス(多分)が皆揃って、乙女ゲー『僕の恋を叶えて』を知ってるって、物凄い確立だと思うけどね。可能性はなくはないけど。

「でもよ、あれだよな、アイリスちゃん、自分のことヒロインっつってたよな。どういうことなのかね。だってアリスちゃんがヒロインなのによ」

「それは、多分...勘違いだと思います。そのアイリスさんは、赤い髪の毛だったんですよね?」

「うん。薄めのね」

「薄めの赤い髪...ピンクっぽい髪に、アイリスという名前。それに学園に入学したらゲームのイケメンがいた。これだけ条件が揃ったら、勘違いしてもおかしくないかもしれません」

 ゲームの主人公は、ピンク髪で、アリスという名前がデフォだ。

 でも、例え勘違いしてたとしても、学年と身分が違うんだけどね。

 ノアが言うにはアイリスは男爵家らしいし。主人公ヒロインは頭のいい平民なのに、間違えるかな。

「...多分、アイリスさん自身も、願望に近いんだと思います」

 ヒロインになって、ちやほやされたい、か。

 まあアイリスが周りに迷惑かけなかったら勘違いしててもいいとは思うけど。

 そう大人しくはしてくれないよね。

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