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コメント、ありがとうございます!
フィリップの一件から数日。
最近は暑さも少し落ち着いてきたけど、それに伴って私の周りも落ち着いてきた。
私が寝込んだのは、質の悪い珍しい病のせいにされ、それを治療したのは、急遽帰国したマークの師匠ローレンということになった。
勿論実際にはローレンは仕事を放って帰国なんてしてないし、私も病気だった訳じゃない。
フィリップの存在を、国民に知らせてはならないから、私もマリュンも、エリザベスも固く口封じをされた。
ここ数日は色々バタバタしていたけど、やっと落ち着いて過ごせるようになったのだ。
授業にも復帰し、私は少しずつ日常を取り戻していった。
「大変だったのに、何も出来なくて何か申し訳ないです...」
「そんなことないよ。そもそもフィリップの魔法ってほとんどチートじゃない?アリスが危ない目に合わなくて良かったよ」
「何というイケメン...!素敵!抱いて、マーク様を!」
「何でマークなのさ」
談話室でアリスとやり取りしてると、マリュンがトイレから戻ってきた。
「何のお話ですの?(アリスちゃん、ケイチーはすけこましだから止めて俺にしない?)」
「フィリップ様のことです。まさかフィリップ様がエイデン様にゲーム以上の執着心を持っているとは...現場を押さえられなかったことが残念でなりません」
「まあフィリップも時々戻ってくるんでしょ?だったらいつかは会えるよ、きっと」
「そうですねえ、それまでは妄想で我慢します」
「アリスちゃんはいつも妄想してねえか?」
わあわあしてると、周りの目が集まってきそうなので、一旦クールダウンして、その後はゆったり駄弁った。やっぱマリュンとアリスと話すのって楽だね。
人のいない教室で、マリュンに話した。
「私さー、前世の自分と会ったんだよね」
「ほお、そうなん」
「前世の私に、前世に戻りたいかって聞かれてさ」
「ふーん、で?」
「まあ、前世への未練なんてそうそうなくせるもんじゃないしね。迷ったけど、やっぱ今更じゃん?」
「まあな」
「この世界で、生きてくって、答えたよ」
「懸命だな。ケイチーがいなくなったら、この前お見舞いに来た奴らとかが泣くだろうしな」
「有難いよねー」
「つーかお前の知り合い多過ぎぃ!びくったぞ、お前の部屋の前に列出来てんだもん」
「マジで?うわあ嬉しいわ」
「ルイスパイセンは出禁になってた」
「あー...どうせ何か叫んでたんでしょ?」
「大当たりだぜ。いやあ流石体育会系だわ」
「だねー」
会話が途切れる。
「...で?お前は結局どうすんの?」
「何が?」
「将来、俺と結婚すんの?」
「まーあんたに好きな人でも出来ない限りはそうなるんじゃない?」
「馬鹿野郎、俺はオリヴィア姉さんとベティちゃん、そして色んな女の子を愛してるぞ」
「そっか、じゃあどうしよっか」
「ま、別に深刻になんなくてもいいんじゃね?時間はいっぱいあるしな」
「...そうだね」
考える時間は、まだまだあるのだ。
これからマリュンと一緒に、考えていけばいいのだから。
別の日、エイデン、マークと一緒に真面目な話やちょっとした雑談をしたり、また別の日はエイデンとマーク、マリュンとエリザベスを集めて外でお茶会したり。
時々ノアが訪れるから、お茶会に強引に引き込んだり。
ルイスに試合を挑まれたり、マークと一緒にルイス主導の訓練をしたり。
エイデンとエリザベスの距離を縮めようと画策したり、それをマリュンに邪魔されたり。
エイデンとマークの近さを見て暴走するアリスを、ジェイダと一緒になだめたり。
マリュンとだらだらしたり。
これは前世とは違う、けれど私の大切なものだ。
失いたくないものだ。
まだ私は十六歳、先は長い。
この先何があるかは分からないけど、壁があっても乗り越えて、あるいは避けて、あるいは壊して、生きていかなければならない。
前世では結構理不尽に命を終わらせられたけど。
今は、そうならないように努めよう。
二度と、突然に失いたくないから。
私は、生きていく。
この世界で、出会った人達と、一緒に―――
「ケイチー!おセンチなところ悪いが、助けてくれ!エイデンがまたベティちゃんにやらかした!」
「ん、分かった。取りあえずエイデンはシメるわ」
終わり。
今までこのような拙い話を見てくださった皆様、ありがとうございました。
今後は、不定期で番外編など投稿させていただこうと思います。予定としては、エイデン、マリアンナの母親、第一王子もしくはオリヴィアなどなどのお話になります。




