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 夏休みが終わった。

 あっという間だった。時の流れってこんなに速かったっけ...。マリュンの家の庭で、セクハラ事件以来あんまり元気がないエイデンを励ましたり、マーク、エリザベス、ノアと戯れたり、私ん家で上の兄の相手をしたり、下の兄に剣の稽古をつけてもらったり、ルイスに突撃訪問されたりしていたら、びっくりするぐらい速く終わった。夏休みと言えば、海とか山に行くとかなのに、全然そんなことはなかったよ。いや別にいいけどね?そういう思い出は前世でいっぱいあるしさ。悲しくなんてないよ。



 夏休み明けの初日の学校。教室で、アイザックは告げた。

「新しいクラスメイトを紹介します」

 マジで?

 ちょっと、展開早くない?もう隠しキャラのフィリップ登場なの?

「入りなさい」

「初めまして!フィリッパと申します!これからよろしくお願い致します!」

 ...はあ?

 教室に入って来たのは、女の子だった。

 長く波打つ金髪に、キラキラした青色の目。可憐という文字を擬人化したみたいな美少女が、そこにいた。

「ぶふぉっ!?」

 エイデンが吹いた。

 え、何、双子の姉ってこと?何故かゲームとは性別が違くなってしまったってこと?いやいや違う違う、だってフィリップは、双子でアルビノだからお城に閉じ込められてて、こんなエイデンみたいな外見だったらいくら双子でも普通に国民に知らされてる筈。じゃあこの子誰よ。無関係の女の子なの?だとしたら何でエイデンは吹いたの?

 駄目だ、疑問が多すぎる。

 混乱する私をよそに、アイザックはフィリッパという女の子の説明をしていく。

 曰く、隣国から来た、身分の高い留学生らしい。

「分からないこともたくさんありますが、皆さんと仲良くなれたらいいなと思います!どうぞよろしくお願いします!」

 キラキラしてるなあ。笑顔が可愛いよ。

 案の定、フィリッパは男子の間で人気者になったとさ。女の子達も、純真なフィリッパをそんなに悪くは思ってないそうな。



「どういうこと、アリス」

「わ、私にも何がなんだか...新しいクラスメイトって聞いた時は、フィリップキタコレ!って思ったんですけど、まさか女の子になってるとは...」

 人のいない校舎裏で、私とアリスは頭を悩ませていた。

「...あのさ、ケイチー、アリスちゃん」

「何、マリュン?」

 今までずっと不思議そうな顔でいたマリュンが口を開く。

「さっきから誰の話してるん?」

「誰って、フィリッパだけど」

「いや、おかしくね?何だよ女の子って。つか、クラスの奴らの反応も意味分かんねえし。特に男共、何、あいつらホモなの?」

「はあ?」

「ホッ!?マ、マリアンナさん、その話、詳しく!kwsk!!」

「えっ、いやだからさ、フィリッ」

「マリアンナさーん!」

 うわっ。

 向こうから可愛い声をあげて勢い良く駆けて来たのは、話題のフィリッパだった。

「失礼します!マリアンナさん、ちょっと教えてください!」

 そうしてマリュンは「あの!一旦離してください!ちょっと、貴方!(だーっ止めろーっ!)」と叫びながら、意外に力が強いらしいフィリッパに引っ張られていった。

 私とアリスが止める間もなく、フィリッパとマリュンは遠くなっていく。

 ...何でマリュンがここにいるって分かったんだろ。



「...俺に言えることは何も無い」

 わざわざ男子寮の部屋まで行って、エイデンに「何か隠してるでしょ!」と尋ねたのに、エイデンはそう答えた。何なのその意味深な発言は。

「...はあ」

 小さくため息を吐く。

 何か不安そうだけど、本当に何なんだろう。フィリッパって、何者なの?

「マーク。何か分かる?」

 私が来た時既にエイデンの部屋にいたマークに小声で聞くと、マークは困ったような、泣きそうな顔をした。どうしたのあんたまで。

「悔しいよ...悲しいよっ...!」

 どういうことよ。

「僕、やっぱり出来損ないなのかな...」

「何を言ってるんだ、マーク程努力してる魔法使いなんて他にいないよ」

「うぅ...ありがとう、でもごめんケイン...」

 だからどういうことなの。

 とりあえず分かったのは、エイデンからもマークからも、フィリッパについて聞き出せないということだけだった。

 フィリッパ、本当に何者なんだろう。

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