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「ケイチー!どうしましょう、ベティが、ベティが...!(うわああああああああ)」
お家にお邪魔した私を見てマリュンが一番に口にしたのが、それだった。
「落ち着けマリュン。一体何があった?」
「エ、イデン様と...!」
エイデン?
エイデンがエリザベスに何かしたの?
「喧嘩、して...」
...は?
「......」
「......」
うわぁ...何といういたたまれない空気。
小さい頃よく遊んだその庭で、エイデンとエリザベスは離れた位置で、互いを見ないように顔を背けていた。
エリザベスはこれまでになく何の表情も浮かべてなくて、エイデンは珍しくぼんやりとしてる。
マークはエイデンに何やら話しかけているけど、エイデンは全く聞く耳を持ってない。
可哀想なのはノアで、そんな空気の中で一人縮こまっていた。
「何があったんだ...」
「...ベティ、ケイチーが来たわよ」
「あ...申し訳ありません、ケイン様。私のせいで、こんな...」
...あれ?普通だ。
「エイデンは一体何をしたんだ?」
「...それが、その...」
言いにくそうなエリザベスがぽつぽつと話したことをざっくりまとめると、
エイデンがエリザベスにセクハラした。
「よし、ちょっとシメてくる(よくもエリザベスを...)」
「まあ、そんな...(ええぞ!ええぞ!)」
「えっ、あの...」
戸惑うエリザベス。大丈夫、ちょっとだから。
「エイデン」
「あ...ケイン」
疲労困憊、といった感じのマークが振り返る。選手交替だよ。
「エイデンくん、何でエリザベスちゃんにそんなことしちゃったのかな?先生怒らないから言ってごらん?」
「何故そんな口調なんだ!?」
驚きのあまりつっこむエイデン。よし、口開いたね。
「で?どうなんだ?」
「...誤解だ、誤解なんだ...俺は何もしていないんだ...ただエリザベスが庭の段差で躓いたから、支えようとしたら...あ、あるところを触ってしまっただけなんだ...」
「それでちょっと声をあげてしまったエリザベス嬢に対して、お前は何と弁解した?」
「ぐぅっ...」
「ケイン、それは酷だよ。僕が言う。...だ、大丈夫、誤って揉むような大きさじゃない!」
「ううっ」
エリザベスがうめく。
エイデンは虚ろな目でぶつぶつと「違うんだ...」と呟き続けている。
いくら第二王子でも、デリカシー無し男でも、好きな女の子に対して、言っていいことと悪いことがある。
いつもだったらマリュンがエイデンに「最低!変態!死ね!」という意味の言葉を浴びせるんだろうけど、マリュンも色々衝撃が大きかったんだろう。何も出来ずに私に助けを求めた。
さて、どうしたものか。
するとその時、エリザベスが、とことこと、こっちに来た。
「あ、あの...エイデン様」
「エ、エリザベス...さっ、さっきのは」
「いいんです、私こそ、申し訳ありませんでした。エイデン様は、王子様ですから、その、お城の人の、大きいものに慣れているんですよね」
「なっ!?まっ待て!誤解だ!」
「これ以上気にしても、私、みじめになるだけなので...。先程までの非礼を、どうかお許しください」
「まっ、待っ...」
...エイデンの思いが届くことはなかった。
その後、当然だけどエイデンとエリザベスはしばらくぎくしゃくしていた。
マリュンもマリュンで、エイデンに「まあ、頑張ってください...(男のサガだ。しゃーねぇよ...)」と声をかけていた。
マークはエイデンを何とか元気づけようとしているけど、多分無理だと思う。私も時々一緒にするけど、エイデン全然立ち直れてないし。
一部始終を見ていたノアは、「胸囲なんて関係あるんですか?」と後で言った。あんた良い子だね...。
そもそもエイデンはああいうことを言うような人じゃない。つまり、誤ってエリザベスに触ってしまって相当焦ったんだろう。その結果がセクハラ発言という訳だ。
まあ、この後何とかならなくても、自業自得だから仕方ないと思う。




