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私はマークと共に、うなだれるエイデンを見つめた。
ここは男子寮の、マークの部屋だ。私達は、テーブルに置かれたお茶(マークがいれたものだ)を飲みながら雑談していた。していたのだけど。
「エリザベスに好かれたいっ...!」
エイデンは、とても悲痛な声を出した。
「エイデン...」
マークは悲しそうに眉を下げる。優しいね。
「で?お前はその為に何か行動してるのか?」
「...している...が...全部、全部ッ!マリアンナ嬢に遮られる!」
そこから、エイデンの愚痴が始まった。
「俺がエリザベスに花を渡そうとしたら、何故かマリアンナ嬢が同じ種類の花を先に渡していたり、エリザベスが階段で躓いた時俺が支えた筈なのに、何故か次の瞬間にはマリアンナ嬢の腕の中にエリザベスがいたり、エリザベスと一緒にサロンで過ごそうと誘えば、マリアンナ嬢が先約になっているし、教室で話そうと思ったら、マリアンナ嬢がずっとエリザベスを独占しているしッ!正直羨ましいッ!」
正直過ぎる...。
マークは真剣な顔で、うんうんと頷いている。あんた本当に優しいな。
「ああ、どうすればいいと言うんだ...」
「うーん。ケイン、マリアンナさんを引き留めることは出来るかい?」
「まあ出来るは出来るが、最近マリュンはエリザベス嬢に執着しているからな。そう長くは無理だと思うが(加えて相手がエイデンとなるとね)」
「どうして急にそうなったんだろう...?」
「アリス嬢の一件で、エリザベス嬢と一緒にいない間にエリザベス嬢が魔法にかけられたことを後悔しているんだろう」
「ああ、成程」
まあそれはエイデンも同じなんだけどね。
「エリザベス嬢も、エイデンを嫌っている訳ではないと思うがな」
「そうだね、ただ、マリアンナさんの方が好きってだけで...」
「...それが大変なんだ...」
エイデンは再びうなだれる。
「というか、エイデン。お前は何故そんなに焦っているんだ?この前はそこまで焦っていなかっただろう」
そう言うと、エイデンは私を恨みがましい目で見てきた。え、何?
「...アリス嬢の一件で、エリザベスはケイン、お前にあからさまに好意を抱いた行動をしていたんだ...。俺が、どんなに傷付いたか、どんなに羨ましいと思ったかぁっ!」
あー...それマリュンからも言われたよ。ごめん。
「あれを見た時、俺はエリザベスを誰かに渡すことは耐えられないと思った...」
成程ね、それはまあ、仕方ない。
「だから、俺は、エリザベスに好かれたいっ!その為に、協力してくれ!」
「うん、僕も、出来る限りのことはするよ。ねえ、ケイン」
「そうだな、そろそろ報われるべきだ(片想い期間長いもんね)」
そうと決まれば、早速行動だ。
「マリュン」
「あら、ケイチー?どうかしたんですの?(何だよ、俺はこれからベティちゃんとお茶するんだぞ。約束はしてないけど)」
「これから時間はあるか?」
「ごめんなさいな、私、この後ベティとお茶会をするんですの(だからお茶するんだっつってんだろ)」
「そう言わずに、少しくらい大丈夫だろう?」
「ごめんなさい、私もう行かないと(お前本当どうしたんだよ、ベティちゃんが待ってるんだ!)」
「いや、まだ時間はあるだろう?」
えーい、今のうちに頑張ってエリザベスを誘うんだよ、エイデン。
「何なの?ケイチー、どうしたのよ?(まさかお前、エイデンの回し者か!)」
うわバレた。でも多分もうエイデンはエリザベスを誘ってる筈。残念だったねマリュン。
「あ、マリアンナ。エイデン様が、マリアンナも一緒にお茶を飲もうって」
このぽんこつが。
後に、エイデンは、「エリザベスと二人で話すのは久しぶりだったから、緊張してっ...!」と語った。私の頑張りを返せ。
その後、幾度となく、「エリザベスを惚れされよう大作戦」は決行されたけど、マリュンの妨害とエイデンのヘタレ具合によって、全くもって成果はなかった。...というか、私の思い違いであってほしいけど、エリザベスが何か、マリュンに更にくっついてるような...あれ?これエイデンの入る隙間なくないかな...?
まあ、アリスが前世の記憶を取り戻したことで、攻略対象共を攻略しようとしなくなったし、そのおかげでエイデンもイライラしなくなったから、時間をかければ大丈夫だろう。
そういえばこの前マリュンに、「エイデンって本当にベティちゃんを射止められると思ってんのかよ?」って真顔で言われた。エイデン、あんたマリュンから完全になめられてるよ。ここらで頑張って本気を出して、エリザベスを振り向かせるんだよ。




