45 ケイン・ウィリアクト
ケイン視点になります。
アリスが前世の記憶を取り戻して、私達と同類になった次の日の朝の時間、アリスはクラスの女の子達に頭を下げて回っていた。
「今まで私の行動のせいで不愉快な思いをさせてしまって、本当に申し訳ありませんでした!これからは心機一転、皆様のお邪魔にならないよう静かに過ごしますので!何か私のことで不快なことがあったら言ってください!」
そうして女の子達がさっそくアリスに言ったのは、「イケメン共に近付かないで!」ということ。
それを聞いたアリスは、
「勿論ですとも!そもそも私などがあの皆様とお話するなんて、空気読めないのもいいところです!ですが、あの皆様のお姿を見ることだけはお許しいただけないでしょうか!?」
アリスの勢いに押された女の子達は、まあ姿を見るくらいなら...と了承した。
中にはアリスの変化を疑う人もいたけど(主にアリスを苛めてたメアリーとか)、攻略対象共に近付かなくなって一切目立たなくなったアリスに、警戒を解いていった。というかアリスは本当に地味になった。なのに気付いたらこっちをものすごい貪欲な目でじいっと見てることあるし。ちょっと怖い。
あと、良いことに、アリスとジェイダは仲直りをしたらしい。放課後二人一緒にいるのをよく見かけるようになった。良かったねアリス。
アリスに魔法をかけたのは誰なんだろう。最近よくそういうことを考える。
マークはそんなことしないだろうし、マークの師匠のローレンも、学園に来てた訳じゃないし。私が知ってる魔法使いなんてそれくらいしかいない。
分からないけど、いつだかマリュンが「ストーカーは消えたぜ...」って遠くを見てたことがあった。何か関係あるのかな。聞いても、俺もよく分からんって言われたし。
あれからマリュンは更にエリザベスにベタベタするようになり、エイデンは完全にマリュンに押しのけられていた。哀れエイデン。今真夏ですごい暑いのにそれ以上にマリュンのエリザベスへの愛が暑苦しいし。
マークは、日々今まで以上に魔法の練習に励むようになった。それも、ルイスなんていう化け物を相手に。ルイスはルイスでマークに「騎士の力を見せてやる!」って意気込んでる。私も時々二人の訓練に付き合わされてる。まあそんなに大変じゃないから別にいいか、と最近は諦めてきたよ。
マリュンの弟ノアは、あまり学園には来なくなった。ちょっと話したんだけど、まだアリスを警戒してるみたい。これは仕方ないよね。
アイザックは、普通。アリスに洗脳される前と変わらない。ただ彼女のローレンとはちゃんとお手紙を交わしてるらしい。アイザックの彼女がローレンだなんて知らなかったからちょっとびっくりしたよ。
私も、マーク、ルイスとの訓練を除けば、アイザックと同じように、アリスに洗脳される前と変わらない日々を送っている。
アリスが前世の記憶を取り戻したことで、マリュンの断罪の危機も消えたからね。良かった良かった。
ある日の放課後の人のいない教室、マリュンと一緒に、アリスに聞いてみた。
「隠しキャラって、誰か知ってる?」
これは私とマリュンがずっと気になっていた問題だ。さて、アリスは知ってるのかな。
「ああ、知ってますよ。フィリップ様です」
あっさりと、アリスは答えた。
フィリップ?誰?
「エイデン様は王道、マーク様はヤンデレ、ケインさんはチャラ男、アイザック様はドS、ノア様は癒し系、ルイス様は堅物。さあ何が足りないでしょう?」
チャラ男...。何か私だけ浮いてる気がする。
「いや、全く分からんぞアリスちゃん」
「うーん、クールとか?」
「惜しい!正解はツンデレです!」
ツンデレか。何かややこしそう。いや字面のイメージじゃマークとアイザックの方がややこしいけど。
その時、アリスが爆弾を落とした。
「フィリップ様はエイデン様と双子なんですよー」
「「...はああ!?」」
双子って、そんなの聞いたことないけど、エイデン、あんた双子の兄弟がいたの?




