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「ベティ!大丈夫?頭は痛くない?具合が悪いなら...」
「マリアンナ、私は大丈夫だよ。ありがとう」
あああああベティちゃんの笑顔...!何という可愛さかね!
「マリアンナ嬢、やはりエリザベス達は、アリス嬢に操られていた間の記憶がないようだ」
エイデンが強張った顔で言う。まあそうだろな、ケイチーもそうだしな。
「マリアンナ姉さん...ボク、マリアンナ姉さんに酷いこと、言ったんだよね...?ごめんなさい...ごめん、姉さん...」
「ノア、そんなに落ち込まないの。私は、ノアが私に本心からあんな酷いことを言わないって、知っているもの」
まあ、たまには暴言吐くけどさ。俺が姉なのが恥ずかしいとかは言わないもんなお前は。嬉しいことにな。
ちなみにだけど、俺が、ヒロインちゃんにメロメロ中のノアに「貴女がボクの姉であることがボクの一番の恥だ!」って言われてガチでへこんだのはノアには内緒だ。
「あ、そうだわ、マークさん」
「はい、何ですかマリアンナさん」
「貴方、この前アリスさんの頬に口付けなさっていましたわよ」
「うわあああああああああ!!僕何やってんだあああああ!!」
発狂するマーク。ざまあみろ。ヒロインちゃんに一番ベタベタした罰だ。
「う...ああ、黒歴史...」
ケイチーが嫌そうに呟く。何を今更、お前の黒歴史なんかいっぱいあるから大丈夫だろ。
「アイザック先生」
「な、何だルイス」
「ローレンに貸しを作ってしまったな、頑張れ」
「ぐっ...ああ、またあいつの部屋の大掃除をしなきゃいけないのか...」
「いつものことだろう」
「まあ...な」
アイザックてめえこの野郎、あんな美女と付き合ってるなんて知らなかったぞ、このリア充が。爆発してもげろ。
俺は精一杯の呪いを込めて、アイザックに気付かれないように睨む。
と、ルイスパイセンがこっちを見た。
「ケイン・ウィリアクト!再びオレに失望されないよう、鍛練するのだな!」
「...はい、ルイス先輩」
ケイチーは重々しく頷く。
ルイスパイセンは不意に俺を見て、再びケイチーを見ると、ふっと笑い、教室を出て行った。
おや、これは...お気遣いどうもありがとうございました。
「う、うーん...」
おっヒロインちゃん?
エイデンが厳しい顔付きでベティちゃんを庇う。ベティちゃんはいつもの顔でヒロインちゃんを見つめてる。おいエイデンてめえそこ代われ。ベティちゃんは俺が守るんだ...守れなかった、けどさ。
マークはどこか迷うような表情で、ノアは嫌悪に満ちた視線で、アイザックは真面目な顔で、ケイチーは何てことないように、ヒロインちゃんを見る。
「う...」
ヒロインちゃんが、うっすらと目を開く。
ヒロインちゃんの、寝起きで焦点が定まらない目が、ややあってケイチーを捉えた。
「...ケ、イン?」
「ああ、そうだ、アリス嬢」
「......え?あ、ああ、あ...!ぎ、ぎぇええええああああああっ!!!」
うおっ!
さっきのマークの叫びに負けず劣らずの声量だ!
「ご、ごごごごごごごごめんなさい!!」
...ほぇ?
ヒロインちゃんは、華麗なジャンピング土下座をキめた。
続いて、スライディング土下座、ローリング土下座も披露する。
「ちちち違うんです私は別に、攻略対象の皆様を攻略しようと思っている訳ではなくて、そもそも私なんかでは皆様には到底釣り合いませんし、その、出来れば、絡まれる皆様のお姿を影でじっくり見たいとか、そういうことしか思ってなくて、今までの私の空気読めない行動に皆様辟易していらっしゃるとは思いますが、お願い致します、どうか、どうかお許しください!!パシりでも何でもしますので、どうか、どうか皆様のお姿を見ることは許していただけないでしょうか!?攻略対象の皆様の笑い合うお姿が私の生きる糧でありましてですね...!」
あ、これあれだろ。
ヒロインちゃん、前世の記憶取り戻したパティーンだろ。
アリス、第三(最終)形態。




