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「私は貴方の婚約者ですわよ?」
「そんな筈はない。私が本気なのはアリスだけだ」
おい、こいつ婚約のこと覚えてねえぞ。何だそれ色々と駄目だろ。
俺は、ヒロインちゃんを俺から守るように後ろに庇っているケイチーを見つめた。
放課後の今、俺は教室にいる。俺の隣には、エイデンがいて、エイデンもまた厳しい表情でケイチーに視線を向けている。
対するケイチーは、マークとアイザック、ノア、ベティちゃんを引き連れてヒロインちゃんを庇っている。おいノア、お前毎日のように学園に来てるな。そんなにヒロインちゃんが好きなのか。あとベティちゃんは、何かずっとケイチーに寄り添ってる...。ケイチーの奴め...。
ヒロインちゃんはびっくりするぐらい怖い顔で俺を見てる。やだなあ、そんな熱烈な視線を送らないでくれよぅ。いやマジでちょっと傷付くから。
「例え、私が君と婚約をしていたとしても、それは今、白紙に戻る...!」
えっ何?ケイチー、何すんの?白紙ってことは...破棄!?ちょっ、待てて...!
「今、この時をもっ」
「ケイン・ウィリアクトォッ!!」
突然の大声に、皆がびくっとした。俺もびくったわ。
「貴様...!そこまで堕ちたか!己の身勝手を、理解しろっ!愚か者め!」
ルイスパイセンじゃないすか、めっちゃ怒ってらっしゃる。
ルイスパイセンは教室にずかずかと入って来た。
「ルイス先輩...!」
ヒロインちゃんが怯えたように近くのマークの服の裾を掴んだ。
「大丈夫だよ、アリス。僕が守るから」
「ちょっ...マークさん、抜け駆けは禁止ですよ!」
「その通りだよマーク、そこは私の位置だ」
「...ケインさん」
おいこらノアとケイチー、内輪揉めすんじゃねえ。ベティちゃんもケイチーの発言に悲しそうになってるぞ、許さないからな。
「マリアンナ嬢、大丈夫か!」
ルイスパイセンがこっちに寄ってくる。
俺は見てしまった。
ルイスパイセンの行動を見たヒロインちゃんが、般若のような顔になるその瞬間を。
こっわっ!!?で、でも大丈夫、可愛さも残ってるよ!
「...マリアンナさん」
あっはい?!何すかヒロインちゃん!
「貴女は、いい人ではありませんよねー?...ごほっ!?」
えっ。
ヒロインちゃんが、両手で口を押さえた。
「ごほっ、げほっ...がはっ!」
ヒロインちゃんは咳き込み、そのまま、うずくまる。
「いっ...頭が...痛い!」
ケイチーが文字通り頭を抱える。
ノアもアイザックも、マークも、ベティちゃんも。ちょっと!ベティちゃん大丈夫かよ!?
「何だ!?」
俺も全く同じ気持ちだよエイデン。何だ、どうなってんだ!?
え、俺?俺が何かした?俺の秘めたる暗黒の力が目覚めたとかそんな感じ?ベティちゃんを傷付けるような力なんていらねぇぞっ!
どうしよう、どうするよ!?
「皆、落ち着け」
声が、響いた。
張り上げたような感じじゃない。それでも、その声は皆の耳に届き、俺とエイデンの混乱を静めた。
誰だ?
教室に入って来たのは、女の人だった。
ちょっと薄めの金色の髪に桜みたいな色をした目の、女の人。アイザックとかと年が近そうだ。動きやすそうな真っ黒な服を着てて、すげぇ美人。うわぁ、何かキリッとした感じで、あれだな、くっころの騎士みたいな。
...はっ、いやいや!世界で一番の美人はオリヴィア姉さんだから!危ねえ危ねえ。
「ローレン!何故ここに!」
「話は後だ、ルイス」
えっ知り合い?
ローレンと呼ばれた美女は、うずくまって咳き込むヒロインちゃん、うめいてる男共、ベティちゃんに近付く。
何やら考えていたが、やがてそいつらに手を向けた。
「うわっ!?」
あっやべ素の声あげちまった。でも仕方ない。だって急に美女の周りが光って一瞬何も見えなくなったんだもの。
エイデンも突然の光に驚いてる。
しかし光がおさまると、ヒロインちゃんはすやすやと寝息をたてていて、ケイチー、ノア、ベティちゃんはきょとんとした顔で立っていて、マークとアイザックは美女を視界を入れた途端に顔を引きつらせた。
「し、師匠...!」
「ロ、ローレン...!」
「...マーク」
「はっ、はいっ!!」
「お前に話したいことは色々あるが...後にしてやろう。アイザック」
「あ...いや、その...」
「春になってから連絡がほとんどなくなったから、何事かと思ったが...生徒に入れ込んでいただと?」
アイザックははっきりと青ざめ、後ずさる。
「ち、違うんだ、アリスは本当にただの生徒として...」
「ああ、そうだろうな。お前が可愛い生徒に手を出す筈がない。私が言いたいのは...」
「ローレン、お、落ち着け...!」
「...っと、もっと私に構えよ馬鹿っ...!!」
...え?
何?俺達何見せられてんの?アイザックはあの美女の彼氏なの?あんな美女と付き合ってんの?消えろヅラ野郎が。
ルイスパイセンは見ないようにしてるし、エイデンなんか既に無視してベティちゃんに話しかけ...あっずるいぞお前!
何だか分からんが、とりあえずベティちゃんだ!
あと、ケイチーにはゆっくり話を聞こうじゃないかね。
本編37で、マリアンナはアリスに「ケイチーは私の婚約者ですわよ?」と言っていましたが、ケインはその発言をよく聞いていなかったため、自分が婚約していると分かっていませんでした。
アイザックとローレンは二十代後半です。ローレンはマークの師匠となった時、十代でした。彼女は色々と規格外。
ローレンは、アイザックからの連絡が一切なくなったため、忙しいながらも時間を作って、文句を言ってやろうと学園に来ました。そして教員室で「アイザックは教室にいるだろう」と聞き、あの場面に出くわしました。




