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39.5 ルイス

コメント、ありがとうございます!


ルイスのお話。本編39、40(40はこれから更新となります)のルイス視点があります。

 オレの名はルイス・スリンス。父親がこの国の騎士団団長であり、小さい頃から剣の教育を受けてきた。

 父上はオレの最も尊敬している人だ。だから、オレは父上の期待に応えるべく、鍛練を欠かすことはない。父上のような立派な騎士になるのが、オレの夢だ。



 オレにはライバルがいる。

 そいつの名はケイン・ウィリアクト。侯爵家の三男。そいつの父親、つまりウィリアクト侯爵はオレの父上と旧知の仲らしい。また、そいつの兄はとんでもない剣の才能を持つ騎士団員だ。オレもそいつの兄と会ったことはあるが、ひたすらストイックな人で、尊敬している。

 そいつと初めて会ったのは、かなり幼い頃だ。

 父上に見られながら、オレは玩具のような剣で、試合をすることになっていた。

 父上にいいところを見せるため、オレは張り切っていた。が、その相手となるのが、オレの一つ年下の、ケイン・ウィリアクトだった。

 結果から言うと、オレは負けた。

 その頃のオレは、単純な攻撃しか出来なくて、ケイン・ウィリアクトに無駄な動きを誘われ、じわじわと体力を削られ、最終的にカウンターをされて、負けた。

 ケイン・ウィリアクトに負けるまでのオレは、実は調子に乗っていた。騎士団長である父上の息子のオレが、負ける筈がないと、訓練を疎かにする程だった。

 だが、ケイン・ウィリアクトに負けたことで目が覚めた。

 オレはそいつに負けた日から、一日たりとも鍛練を休まなくなった。暇さえあれば鍛練鍛練、暇がなくても鍛練をした。



 ケイン・ウィリアクトと戦った後の話だ。

 マークという、第二王子エイデンの側近の、魔法使いと戦うことになった。騎士たるもの、魔法にも適切に対処出来るようにならなければならないという、父上の教えだ。

 だから、オレはマークと戦う前に、魔法を克服しようと思った。別に魔法に対して苦手意識がある訳ではない。そもそも魔法をくらったことがないので、どんなものか知らなくてはならないと思ったのだ。

 マークの師匠の、ローレンという者に、オレは魔法について教わった。教わる、というのはオレが魔法を使うということではなく、オレに魔法を使う、ということだ。

 ローレンは俗に言う宮廷魔法使いというやつだ。魔法の天才と言われている。あと、ローレンの異名は、若き戦いの女神だとか、そんな感じのものが出回っている。確かにローレンの容姿は良いとは思う。だが、ローレンは魔法に関してはひたすら自分に厳しく他人に厳しくするのだが、魔法以外のこととなると一気にずぼらになる。ローレンの部屋に綺麗好きな奴が入ったら卒倒すると思う。まあローレンには交際している者がいて、そいつがよくローレンの面倒をみているらしいが、それはどうでもいいことだ。

 ローレンには、最初は断られたが、何回も何回も熱心に頼み込むことで、了承を得られた。

 ローレンの魔法で何回も叩きのめされることで、オレは段々と魔法に慣れていった。

 耐性、というのか分からないが、そんじょそこらの魔法をくらっても、オレはあまりダメージを受けないようになった。おかげでマークとの戦いも、危なげなく勝利した。

 勿論、オレは無償でローレンに魔法を教わった訳ではない。オレは、ローレンの魔法の実験体になったのだ。

 別に危ない魔法じゃない、精神干渉や洗脳の魔法だ。例えばローレンの言うことは何でも聞くようになるとか、そういう感じだ。危ないことなんて一回もなかった。ローレンの部屋の掃除を手伝ったくらいだ。別に普通に頼んでくれても手伝ったんだがな。

 この魔法も何回も繰り返しオレに使われたので、オレは精神干渉や洗脳の魔法の耐性も得た。というかその系統の魔法にかけられても、きかなくなった。魔法をかけられようとしていることによる違和感すら感じなくなった。得した。

 マークからは、「師匠の魔法を耐えるなんて...はっ、もしかして師匠のこと好きなんですか!?」と言われた。意味が分からん。



 アリス。

 オレ特製の訓練をやすやすとこなした、猛者。

 オレは、今までこんな奴と会ったことはなかった。ケイン・ウィリアクトでさえ、オレの鍛練への執着には理解を示さなかったというのに。

 オレはこいつを気に入っていた。

 今は、違う。



「ケイン・ウィリアクト!貴様、随分と腑抜けたものだな!オレは失望したぞ!」

 ケイン・ウィリアクトは、オレを睨み付ける。

 そんな目は、戦っている時でさえ、見たことがない。それ程にアリスが大事なのだろう。

 だが、オレに憎悪を抱くのは奴の勝手だとしても、だ。ケイン・ウィリアクトは間違っている。

 奴には婚約者がいる。マリアンナという、公爵令嬢が。彼女を放ってアリスにずっと付きっきりなど、男のすることではないだろう。

「やはり駄目だね、騎士などという野蛮な輩は...」

 マークが非常に不愉快そうに言った。む、騎士は野蛮などではない、何故そんなことを言うのか知らんが、オレは無視するからな!

「文句があるなら勝負をするか」

「そんな野蛮なこと、誰がするか」

 そんな言葉でオレを揺さぶれると思ったか?

 オレは動揺しないぞ、何故ならオレは、真剣勝負が野蛮などではないと分かっているからだ。

「ふん、軟弱者が!」

 去って行く奴らを見て、言う。

 奴らが変わった理由が、アリスを、大切な人を守るためのものなら、オレはそんなものいらない。

 それを見つけて弱くなるのであれば、大切な人など、必要ない。

 オレはオレの夢のために、自分のために強くなる。



 ある日の放課後。オレはケイン・ウィリアクトを探していた。やはり、奴に喝を入れなければオレの気が済まないのだ。

 奴の教室近くに来た時だった。

 奴の声が、教室から、した。

「例え、私が君と婚約をしていたとしても、それは今、白紙に戻る...!」

 何だと?

 白紙に戻る?それは、まさか。

 頭に血が上った。

「今、この時をもっ」

「ケイン・ウィリアクトォッ!!」

 何故だ。

 貴様は、婚約者を放って別の女にうつつを抜かした挙げ句、己の身勝手で婚約破棄をするような男であったのか。だとしたら、オレは何だ?

 オレはこんな男に負けたのか?

 許せん。

 何に対しての怒りなのかは、よく、分からない。ただ、オレは今、酷く怒っている。

 オレは、ケイン・ウィリアクト達がいる教室に、乱暴に入っていった。

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