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悪役令嬢に、俺はなる!
そう決めて俺は早速、現悪役令嬢メアリーちゃんとの接触をはかった。
「彼女に手を出さないでもらえるかしら?」
「マ、マリアンナ様、私はその...」
「安心してくださいな、彼女には私からお仕置きをしますわ(お仕置きって響きが何かエロいよな)」
「はいっ?」
「アリスさんのことは、私に任せてくださいね(ばっちこい!)」
「あの、マリアンナ様!?そ、その...マリアンナ様のお手を煩わせる訳には...!」
「私もアリスさんの態度には問題があると思ったのです。...貴女はもう関わらないでくださる?(俺がメアリーちゃんを断罪の危機から守るぜ!)」
「はぁっ、はい!!」
よし、メアリーちゃんも、俺が悪役令嬢になることに納得してくれた。メアリーちゃんの断罪阻止したぜ!
後は俺がヒロインちゃんに嫌がらせをすればいいんだな。
嫌がらせか...。ヒロインちゃんの机を窓から投げて「お前の席ねえから!」とでもすればいいのかね。
嫌がらせの内容考えとこ。
俺が悪役令嬢になることを決めた次の日の朝。
ヒロインちゃんは、口をぽかんと開けて自分の机を見つめていた。
「こっ、これは...」
ヒロインちゃんの隣にいるマークが驚きの声を上げる。
エイデンとベティちゃんが、机を見て同じようにびっくりしている。エイデンそこ代われ。
「...何でそうなった...」
ケイチーが何か頭抱えてるけど、どうしたんだこいつ。
「...可愛い!」
ヒロインちゃんが微笑んで机を凝視した。あれ、思ってた反応と違う。
ヒロインちゃんの机は、女の子らしい色のリボンや小さな花(造花だ)で装飾されている。デコるっていうんだっけ?凄いだろ。うちのエミリがデザインしてくれたんだぞ。
おかしいな、俺の予想では机を見たヒロインちゃんは「わあ!邪魔ですね!」って叫ぶんだけど。
「...何考えてんのかさっぱり分からない...」
ケイチーが小声で言ってるのが聞こえる。確かにヒロインちゃん何考えてんだろうな、こんな状態じゃ授業受けらんねえのに。
これじゃ駄目か、そうか...。
でもなー、ヒロインちゃんは可愛い女の子だしなー、あんま酷いことしたくねえんだよなー。
例えば、机の中に虫を詰め込むとか、他の奴から盗んだ物をヒロインちゃんの机に入れてヒロインちゃんを犯人に仕立て上げるとか、食堂でヒロインちゃんの食事にこっそりゴミを足すとか、放課後呼び出して怖い人にぼこらせるとか、その後写真を撮って晒すとか、そういうことはしたくねえよなー。やられた方は絶望しかないと思うしなー。ああやだやだ!
おっと、話が逸れた。
やっぱ一番いいのは精神攻撃かね。
嫌味を言いまくればいいんだから簡単だし、そうするか。
「あら?アリスさん、貴女のその机...」
「マリアンナさんがしてくれたんですか!?ありがとうございます!とっても可愛い...嬉しいです!」
おおう、お礼を言われました。
くっそ、ヒロインちゃんの笑顔可愛いなあ...。
いや、負けんな俺!
「私ではありませんけれど...貴女、こんなことをしてまで目立ちたいんですの?(まあ仕掛けたのは俺だけどな)」
「えっ?」
「今まで黙っていたけれど、貴女の男性に対する態度は、評価されるものではありませんわよ?理解しているのかしら?(ヒロインちゃん結構イケメン共に接してるしなあ)」
「えっと...?」
ヒロインちゃんの頭の上に、?が見えるようだぜ...。
でも傍観している女の子達は俺の言葉に激しく頷いている。
見ると、ヒロインちゃんの隣のマークは呆然としていて、エイデンとベティちゃんは俺を、またびっくりしたように見つめていて、ケイチーは何か...呆れてる?何でだよ!
「えっと...私が何かしたんでしょうか...?」
「素敵な男性何人かと仲を深めておりますわよね(くそっ、イケメンは皆俺の敵だ...!)」
「そうなんです!皆さん素敵な方なんです...!」
あるぇ、思った反応と違う。
ヒロインちゃん、おそるべし...。
メアリーはアリスを苛めることによって日頃のストレスなどを解消していたので、悪役令嬢を卒業することを、少し名残惜しく思っていました。




