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前回までのあらすじ。
教室に忘れ物をしてしまった俺は、ヒロインちゃんがメアリーちゃん達と何やかんやあるのを見て、廊下の机の下に隠れた。しかし机の下から出る瞬間を、去ったと思っていたヒロインちゃんとジェイダちゃんに見られてしまった!
いや、もう止めよう。現実逃避しても状況は変わらん。
「え...え、え...マリアンナ...様...?」
唖然としているジェイダちゃん。そんな目で見るなよ...。
「わあ、マリアンナさん、隠れんぼですか?」
無邪気に聞いてくるの止めてくれヒロインちゃん。流石に俺も校内隠れんぼはしないぜ...。
...これは仕方ねえよな...。すげえ不本意だし、ヒロインちゃんとジェイダちゃんには、怖い思いさせちまうかもしれんが...。
必殺、権力を盾に圧力かける!
「...あら、貴女達、今何か見たのかしら?」
「はっ...はい!マリアンナ様が、机の下から出ていらっしゃいました!」
「マリアンナさんを見てます!」
あかん、真面目と天然のダブルコンボや。
「あの...マリアンナ様、一体何を...?」
「...世の中には、知らない方がいいこともありますわ」
だからそれ以上の詮索は止めてくれな、盗み見してたとか俺の...コケン?に関わるから。そのせいで他の女の子達から失望されたり...だあっ!考えたくねえ!
「あ、もしかしてさっきの聞いてたんですか!?」
ヒロインちゃん...違うって、俺違うって!
「何のことですの?(し、知らねえし!何も見てねえし!)」
「じゃあ何で教室の近くに?」
「忘れ物をしてしまったので、取りに来たのですわ」
これはマジです。
「そうだったのですか、失礼致しました、マリアンナ様」
「マリアンナさんでも忘れ物ってするんですね!」
「ええ、そうですわね(何とかなったか!)」
ヒロインちゃんとジェイダちゃんは納得したように顔を見合わせる。
よしよし、これで...。
「でも何で机の下に?」
そこに戻るのか!
えーっと、うーんと、どうしよう。
「...物を机の下に落としたので、拾っていたのですわ」
「マリアンナさんでも物を落とすんですね!」
当たり前だろ!
でもそれ以上ヒロインちゃんとジェイダちゃんは詮索することはなく、俺に礼をして去って行った。
二人の背中を見つつ、俺は深ーいため息を吐いた。
いやあ、やばかった。
「...という事があったんだ」
「あんた馬鹿なの?」
何でや!俺頑張ったやろ!
俺は今、談話室?サロン?(皆がお茶会とかするのに使ってる部屋だ)の隅っこで、ケイチーと二人で小声で話していた。他にも人はいるが、俺達の会話を気にしてる奴はいない。
「机の下って...あんたよく誤魔化せたね。相手が素直で良かったわ」
「頑張ったんだぞ俺は」
「うん、まあそれはそうだね。それよりもさ」
何だよそれよりもって!俺頑張ったのに!
「メアリーのこと。あの子大丈夫かな?このままだとメアリーが断罪されそうだね。あ、でもその前にアリスが誰を攻略するか、か。ルイスとアイザック、マークはもうアリスに好意を持ってるし...」
「逆ハーなんじゃねえの?」
「そうなんだけど、アリスは、エイデンとノアの攻略に手間取ってるじゃん?」
「あとケイチー?」
「まあ私は攻略されないけどさ」
「でもよ、別にメアリーちゃんがどうなるとしても俺達には関係ねえだろ。だってヒロインちゃんを苛める選択をしたのはメアリーちゃん自身じゃねえか」
「...あんた可愛い女の子好きなくせに冷たいね」
「そんなことねえよ。俺はメアリーちゃんの意志を尊重してるだけだ」
そりゃ俺だってメアリーちゃんが断罪されるのを嬉しく思ってる訳じゃねえよ。
...あれ?いや、待てよ。
「もしかして、メアリーちゃん断罪されたら学園からいなくなる?」
「当たり前じゃん」
...それは駄目だ、俺の目の保養が少なくなる。
よし。
「俺、悪役令嬢になるわ」
「はっ?」
「メアリーちゃんの断罪断固阻止!」
「メアリーに直接アリスを苛めるの止めろって言えばいいじゃん!メアリーはあんたの言うことは聞くだろうし、あんたが断罪されたらどうすんの!」
「ケイチーなら何とかしてくれんだろ?」
「あっ...あんたねえ...」
だってケイチーはエイデンの左腕だし、マークの友達だし、ルイスのライバルだし、ノアの憧れの人だし、アイザックの生徒だ。
ケイチーなら俺が断罪されかけても何とかしてくれるっ!
本音、メアリーちゃんにそんなこと言って嫌われたくない。それだったら天然っぽいヒロインちゃんを苛める方がいい。そもそも俺今までヒロインちゃんに関わってこなかったけど、本当はあんなに可愛いヒロインちゃんと接してみたい。
「頼んだぜ」
「あんた本当にっ...あああもう...!」
ケイチーの眉間にすごい皺が寄っている。
ま、何とかなるって。




