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 梅雨ってじめじめしてやーよねー。

 俺は窓から見える大雨に、ため息を吐く。

 今はヅラ教師による数学の授業中だ。正直あいつが何言ってんのか分かんねえから、後で必要があればケイチーに教えてもらおう。

 あーだるいよー、最近雨ばっかだから中庭散歩も出来ねえしよー。ルイスパイセンだってちょっと沈んでるぐらいなんだぞー。

 元気なのはヒロインちゃんくらいだよ。

 俺は、授業に嬉々として取り組んでいるヒロインちゃんに視線を向けた。

 この学園にも慣れてきたのか、ヒロインちゃんの姿をそこらじゅうで見かけるようになった。

 あれがイベントってやつなんだろうな、ヒロインちゃんが色んな場所でヅラ教師やらマークやらルイスパイセンやらと会話してんのをよく見る。

 ヅラ教師とルイスパイセンは元々ヒロインちゃんを気に入ってたらしいが、マークも最近は「よく話してみたんだけど、アリスさんって、意外といい人だね」ってケイチーに言ってるらしい。意外とって何だよ。ヒロインちゃんはちょっとあれなだけでいい子だろうがよ。

 ケイチーはヒロインちゃんに対してよく冷たいことを言ってる。エイデンはヒロインちゃんにはあんま興味ねえらしい。

 ノアは時々学園に来るけど、その度にヒロインちゃんに遭遇したためか最近はあんま来なくなった。まあ梅雨の影響もあるんだろうけどな。

 俺はというと、平穏な学園生活を送っている。

 ベティちゃんとキャッキャウフフしたり、ケイチーと駄弁ったり、ノアから家の話を聞いたり。

 悪役令嬢とかいうのとは多分全然違うと思う。モブだモブ。

 悪役令嬢の役割は、メアリーちゃんが果たしてるしな。

 メアリーちゃん。侯爵家の令嬢で、このクラスの女の子達の中では俺の次に身分が高い子だ。

 何かメアリーちゃんがヒロインちゃんを苛めてるっぽいんだよなー。俺が知ってる限りだとメアリーちゃんはヒロインちゃんの物を隠したり破壊したりしてたような。

 あれ、これ大丈夫か。もしかしてこのままいくとメアリーちゃんが断罪されるんじゃね?えーマジかよー。メアリーちゃん頑張れー。

 ...やる気が出ないわー。梅雨の魔力怖えー。

 もうこれ寝ちゃおうかなー。授業とかほんと無理...。

 うとうとした俺を現実に引き戻したのは、ヒロインちゃんがヅラ教師に答える元気な声だった。

「√3です!」

「正解。このように、数字を二乗して...」

 ...止めてくれ...数学とか俺マジで無理なんだって...。前世からなんだよ仕方ないんだ...。



 やっと授業が終わった。

 この後は放課後だ。いえっふーー!

 背伸びをして俺は教室を出た。

 しばらく歩いたところで、忘れ物に気付いた。

 くっそー、また戻んのかー。めんどくせー。

 内心でぐちぐち言いながら、教室の前に戻って来ると、中にヒロインちゃんと、何かノートを持ってるメアリーちゃんとその取り巻きっぽい女の子達がいるのが見えた。

 うわあめんどい、めんどいよー。

「あの、それ、私のノートですよ」

「返してほしいのなら、質問に答えることね」

「質問...ですか?」

「貴女、一体何をしたいの?エイデン様のみならず、マーク様、ケイン様にも付きまとって...ルイス様、マリアンナ様の弟であられるノア様にもしつこくしていたらしいじゃない」

「それはしょうがないんです」

「はい?」

 あ、何か嫌な予感。もしかするとヒロインちゃんまた、私は太陽って言うんじゃねえの。

「だって、皆さ」

「アリスさん!」

 どわあ!!

 俺が見ているとことは逆方向から、ジェイダちゃんがやって来た!

「アリスさん、貴女自分から誘っておいて来ないなんてどういうことですか!」

「あ...ジェイダ、さん...」

「全く!時間は守るべきものでしょう!」

 ジェイダちゃんは、小さくなってる俺に気付かず、躊躇うことなく教室に入って行った。

「...貴女、隣のクラスの伯爵家のご令嬢ね」

「メアリー様、失礼致します。この人、私と約束をしていたのです」

「...ふん」

 メアリーちゃんはヒロインちゃんのノートを近くの机に放るように置くと、取り巻きの女の子達を引き連れてこっちに向かって来ちゃった!どうしましょう!

「あの...」

「貴女に答えることなどないわ。平民ごときが、調子に乗らないでほしいわね」

 ヒロインちゃんナイス!ヒロインちゃんがメアリーちゃんに声をかけてくれたおかげで、俺は隠れる時間が出来た!

 廊下に設置されている長机(皆、物を置くのに使ってる)の下に俺は隠れる。貴族の女の子にこんな発想があるとは思うまい!

 メアリーちゃんは、俺に気付かずに去って行った。

 ...あるぇ?取り巻きの最後尾にいる女の子がちらちらこっちを引きつった顔で見てーる?

 俺は壁、俺は壁だよー。

「貴女は、また一体何をしたの...」

「何もしてないんだけどなー?でもありがとうジェイダさん。助かったよ」

「べ、別に私は...貴女が来なかったから...」

 そんな会話をしながら、ヒロインちゃんとジェイダちゃんは俺がいるとことは逆方向から出て行った。

 いやあ、危なかっ

「...え...マリアンナ、様?」

 あ、オワタ。

 俺が机の下から出てくるその様を、普通にヒロインちゃんとジェイダちゃんに見られた。

 ...これはあかん、マジでやばいぜ。

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